『2020の窓辺から』インタビュー

Ghost like girlfriendが語る、自分と向き合い辿り着いた“本当に作りたい音楽”「届けたい気持ちが真っ直ぐ届くことがベスト」

音楽を続けられている尊さが急に湧いて出てきた

ーー今おっしゃった「2020の窓辺から」がキーになったというのは本当にその通りだと思うんですが、この曲の歌詞はスムースに出てきたんですか?

岡林:そうですね。1コーラス目とかは今までで一番早かったんじゃないですかね。スッとできました。ラスサビまでは結構サラサラとできたんですけど、最後の〈愛されるきっかけなら〉以降の4行がすごく難しくて。

ーー〈愛されるきっかけなら傷口一つからでも/生まれるって事を僕は覚えている/今は痛むばかりでそれどころじゃないけれど/だから諦めないようにね〉ですね。

岡林:どうしても、エールを送るというよりはもらってきた側の人間なので。「ありきたりに思われない言葉でどうやって何かを渡せるかな」って考えながら作っていましたね。ああでもないこうでもないって考えて、3週間ぐらいかかりました。〈愛されるきっかけなら傷口一つからでも〉というのは……もともと自分が音楽を始めるきっかけが、好きな子が突然不登校になっていなくなったところからだったりするんですけど、そういう傷を別の形にしたりとか、もしくは防ぐために始めたものが音楽だったんですよね。でも、そうやって傷をかばうために始めたもので、結果的に愛情をたくさんいただいている。そういうこともあるんだよって、なるべく先輩風を吹かすような言葉ではない形で書きたくて。そうやって言葉を選んでできたのが、その4行という感じですね。自分の人生そのものを書くみたいなことだったんで、それが4行でできたのはとても嬉しかった。

ーー確かにこの曲のなかでも、最後の4行というのはそれまでと違いますよね。より岡林さん自身が色濃く出ているというか。

岡林:勇気の度合いが違うんですよね。せっかくイントロからずっと「一緒に生きていきましょうね」ってことを歌っていったのに、「最後の4行で自分語りだって思われたらどうしよう」みたいなこともあったし。ちゃんと最後まで並走しきる歌詞を作るためにも、使った力や勇気の度合いがやっぱり違うなとは、今読み返しても思いますね。

ーーそういう意味では「なまえを呼んで」もパーソナルな思いが強く出ている曲ですね。

岡林:煮詰めて「これ以上ない」というものを作った1stアルバム(『Version』)が、自分が思ったよりも届かなかったということだったり。Ghost like girlfriendを始めて4年ぐらい経つんですけど、いまだに代表曲になっているのが「fallin'」という楽曲だったりして、自分の感覚でははるか前に超えてるのに「いまだにそこで止まってしまうんだな、俺は」みたいな悔しさがずっとあったんです。でももう、聴いてくれているだけでいいし、一生使って音楽をやっていきたいと思っている以上、続けているうちにちゃんと超えられるんじゃないかと思って。あと、2020年という年がたまたま、いろんな“終わり方”が見えやすかったから、逆に続けられている尊さが急に湧いて出てきたというか。だから時間がかかっても、自分が今悔しいと思っていることはちゃんと回収するし、幸せになりますっていうようなことを言いたくて作った曲なんです。いろんなテーマがたくさん入りすぎて難しいんですけど、これも勇気ですね。「自分がここを突破できてないんだと思ってる」ことを暗に伝えるような曲なので。

ーー2020年という時代もあって、そこに折り合いがついたということなんですね。

岡林:そうですね。先は全然長いんですけど、ここまでこれたってだけで、この2020年、ありっちゃありっていうところまで来たんじゃないかなと思ってますね。まだ許せないことはたくさんありますけど。

この10年音楽やってきて達成感が一番ある曲

ーーそして「Birthday」のメロディは素晴らしいですね。昔からある曲ということですが、今回入れようと思ったのはどうして?

岡林:自己問答というワードを結構使わせてもらっているんですけど、俯瞰で自分の曲を聴いたときに、エゴをすごく感じたんですよね。「こいつ、30歳で幕張メッセやるための曲を作ってるな」みたいな(笑)。音楽が中心というよりは、自分が辿り着きたい将来が真ん中にあって、そのガワにある要素を詰め込んで音楽を作る、みたいな作り方をしていたのかなって。だからこそ常に新鮮なものを作らなきゃいけないと思って、作るごとにずっと書き下ろしをやっていたんですけど、それって聴き手にとってはあんまり重要じゃないよなとも思ったんですよね。今届けたい気持ちがあって、それが真っ直ぐ届くことが、自分にとっても聴いてくれる人にとってもベストだなと思ったんです。それで自分が過去に作ってきた楽曲を聴き直すと、ずっと新鮮でいいなと思えるメロディがあったので、そういうものから選ぼうと思ったのが「Birthday」でした。

Birthday

ーーこの歌詞はどういう思いを込めて書いたんですか?

岡林:20歳に書いたときは全然違ったんですけど、改めてこの曲の雰囲気やメロディの凹凸に、どんな言葉が当てはまるかを考えたときに、思い出したことがあって。去年の7月、いろいろ見直して1個1個諦めなきゃいけないんだなっていうふうに思いながら、人生の中でもトップレベルでへこんでたときに、友達がワンマンライブやるっていうんで見に行ったんですよ。自分の誕生日の前日だったんですけど、ライブ開演までの間も終わった後も、ずっとリリースしたての『Version』の曲を流してくれていて、これはそいつなりのエールだなと思って。日付またいで誕生日になって「おめでとう」と言ってもらったときに、「俺、喜びたかったんだな」と気づけたというか。へこんではいるけど、「今日ぐらい許してくれ」みたいな気持ちになってたんだなって気づいたんです。

 そいつは5月生まれなんですけど、今年の5月って喜びたいことも喜んじゃいけないみたいな空気があったし、でも押し殺してる様とかは見たくないし......月並みな言葉ですけど、世界中を敵に回してでも、1日ぐらい喜べる日があっていいんじゃないかなっていうふうに思ったんです。それで何を渡そうかを考えてたときを思い出して、そのことを書こうと思ってでき上がったのが「Birthday」のタイトルと歌詞で。これならちゃんと届いてくれるかもと思いました。

ーー届けるべき誰かの顔がはっきりあるということ、そこに向けてできるだけ優しくて温かい言葉を届けようっていうのは、確かにこれまでのGhost like girlfriendの楽曲とは違う色合いかもしれないですね。

岡林:このご時世だったんで、ミックス作業をリモートでずっとやっていたんですけど、エンジニアさんに「こうしてください」と言って返事が戻ってくるのを繰り返すなかで、返ってくるたびにずっと泣きそうになっていて。「作りたかったのはこれだ」って聴くたびにずっと思わせてもらってたんで、この10年音楽やってきて達成感が一番あるのがこの曲かもしれないです。

ーーわかりました。まだ続きがありそうというか、これを作ったことでこれからのGhost like girlfriendの音楽も変わっていきそうですね。

岡林:そうですね。これまでのEPって毎回デビュー作のつもりで、1作目だと思って作っていたんですけど、今回に関しては、続きがちゃんとあって、それを具現化していくのがこれからの俺の音楽人生なのかな、みたいなことを思うんです。珍しく続きが見えるなって思うんですよね。

Ghost like girlfriend『2020の窓辺から』

■リリース情報
4th EP『2020の窓辺から』
2020年11月18日(水)発売 ¥2,000+税
<収録曲>
1.regret
2.Piercing
3.Birthday
4.なまえを呼んで
5.2020の窓辺から (feat.okkaaa)

■ライブ情報
Ghost like girlfriend『2020の窓辺から』リリースツアー『DOORSCOPE』
11月23日(月・祝)大阪・心斎橋ANIMA
12月3日(木)渋谷WWW
開場:18:30/開演:19:30
チケット価格:¥4,000(1D別)

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■関連リンク
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