櫻坂46が「Nobody’s fault」で見せた新たな攻めの姿勢 大胆かつ繊細、躍動するメンバーの姿からデビュー曲を考察

 先日の配信ライブ『欅坂46 LAST LIVE』でサプライズ披露された櫻坂46の1stシングル表題曲「Nobody’s fault」(12月9日発売)を見て、攻めてきたなというのが率直な第一印象だ。そして、欅坂46時代から常に攻めてきたグループだっただけに、やっぱり君たちはやってくれるよね、とむしろ安心感すら覚える。

 こういう言い方はおかしいかもしれないが、まずBPMが良い。心機一転で再スタートを切るというときに、ダンサブルで軽快なサウンドで明るく……というのがよく選びがちな“安全策”だが、この曲はおよそBPM110あたりのどっしりとしたリズムで進行する。ブラスアレンジの効いたハードロック系のサウンドで、一歩一歩踏みしめるような堂々とした雰囲気があり、攻撃的なギターとハンドクラップが聴き手をけしかけるイントロや、リズミカルなフィルイン、劇的なラスサビの転調など、全体的に音はパワフル。そしてなにより歌詞が強い。

〈この世界を変えようなんて 自惚れてんじゃねえよ〉
〈勝手に絶望してるのは 信念がないからだってもう気づけ!〉

 遥かな高みから鉄槌を下すこのようなフレーズを、首を傾け不敵な笑みを浮かべながら挑発するようにして歌う。正直、ゾクゾクさせられる。

 また、「アンビバレント」や「黒い羊」といった作品で取り組んできた演劇的要素の強い(≒移動の多い)振り付けではなく、現代のダンスボーカル作品としては平均かそれ以下程度の移動量に抑えて客席側に対峙する時間を増やしたことで威圧感を演出。グループ全体で見せるそうした大きな振り付けに対し、人差し指を口元で左右に振ったり、「バイバイ」といった風にひらひらさせたりなど、顔の近くで展開される細かな仕草がうまく対比となり、印象としては大胆かつ繊細。“勇ましさ”と“美しさ”が同居している。

 キャプテンの菅井友香は以前インタビューでこんなことを話していた。

「人間の負の感情や葛藤といったテーマに対しては、『黒い羊』で一区切りつけられたのかなとも感じていたりするので、そういったものを越えたところにある気持ちだったり、その先に広がっている新しい景色をこれからはもっと表現していけたらうれしいなというのが、正直な思いとしてあります」(『B.L.T.2020年10月号』より)

 こうしたメンバーの思いがどれだけ作品に反映されているかは分からないが、これまでの傾向を踏襲する部分もありつつ、方向性としては確かに新しい。もともとメッセージ性の強い歌詞が特徴だったが、今まではなんとなく“この世界のどこか”にいる分かり合える人びとへ向けて発信しているようだった。一方でこの「Nobody’s fault」は、すぐそこにいる相手へ向けて豪速球を投げつけているかのようだ。「お前のことだ!」と言わんばかりに。

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