モーニング娘。、アンジュルム、Juice=Juice……各グループの楽曲から伝わる恋愛観の違い

 ハロー!プロジェクト(以下、ハロプロ)の女性人気は、メディアでもよく取り上げられている。その人気の理由の一つには、ハロプロ全体の特徴である共感を呼ぶ楽曲の歌詞やメンバーのスキルの高さがあるが、こと恋愛ソングにおいては各グループのスタンスの相違点が楽しめる。ハロプロには現在5組のグループが所属しているが、特に、モーニング娘。’20、アンジュルム、Juice=Juiceは、グループとしての歴史や変遷が盛り沢山で、互いに比較されることも多い。三者三様の恋愛への捉え方は、ハロプロの豊かさに貢献しているものの一つとなっている。そこで今回は各グループの楽曲の恋愛観に着目してみたい。

 モーニング娘。’20は、ハロプロの女性人気を率先している印象が強い。9月2日放送の『今夜くらべてみました』(日本テレビ系)では、モーニング娘。特集が組まれ、グループのコアな魅力が紹介されていた。モーニング娘。’20は、グループとして20年以上の歴史を持つことで度々注目されているが、ハロプロの中では、最も少女らしさが溢れている。というのも、モーニング娘。の楽曲の歌詞に登場する詩的な表現や斬新な発想に、少女のような無邪気さが重なって感じられるからだ。

モーニング娘。’20「LOVEペディア」

 今年発売された楽曲「LOVEペディア」は、シングル曲に初参加となる15期メンバーがフィーチャーされており、SNSを通した片想いを彷彿とさせるテーマが、アイドル感満載に歌われている。片想いは不安に感じることが多いが、良い方向に向かうとたちまち気分が上がる様子を、2番のサビでは〈なんか人生いいね〉という歌詞で表現している。恋愛の要素が人生全体までに活きるノリの軽さと、一方である意味本質を突いている心情の再現性の高さが感じられ、実に“モー娘。っぽい”と言える。

モーニング娘。'20『LOVEペディア』(Morning Musume。’20 [Lovepedia])(Promotion Edit)

 また、モーニング娘。’19時代の楽曲「I surrender 愛されど愛」は、メンバーが昨年の『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』でのステージで、セットリストに組み込むことにこだわっていた一曲としても知られている。同楽曲では、これまでの数ある楽曲の中で最大瞬間風速を記録するほどの感情の目まぐるしさで、愛の定義について畳み掛けるように歌われている。その中で歌われる内容はどれもが真理であり、矛盾も孕んでいる。若いメンバーが、難しい定義である“愛“について理解し、全力で歌い上げる、グループとしての俯瞰力も、また強烈な個性となっている。

モーニング娘。'19『I surrender 愛されど愛』(Morning Musume。'19[I surrender. It’s only love but it is love.]) (MV)

 アンジュルムは、結成当初から活発なイメージが強く、そのパワフルさで魅了してきた。「周りに流されない」というメッセージ性のある楽曲が多いことでも人気だ。一方で、恋愛をテーマにした楽曲では、ギャップを感じられることが多い。最新曲「ミラー・ミラー」は、ディスコ調でノリがいい楽曲であるが、“外ではクールで強気な自分”とそれに対して溢れ出る本音が混在しているため、興味深い歌詞だ。〈誰か見抜いて〉〈全部全部私だよ〉という歌詞が、まさに強がり故の孤独感を象徴するところだ。

アンジュルム『ミラー・ミラー』(ANGERME [Mirror, Mirror])(Promotion Edit)

 また、恋愛を歌った楽曲と言えば、リリース当時には衝撃を与えた失恋ソング「全然起き上がれないSUNDAY」にも触れざるを得ない。グループとしての表現の幅を広げることとなった同楽曲は、失恋したときに感じる相手への憎しみや自分への苛立ちがこもっている。普段は元気で明るいイメージであるからか、同楽曲にダークな部分が一気に集約されているように感じる。むしろ、同楽曲で強い後悔を見せている、明日にはもう失恋した素振りを一切見せないだろうという楽曲から広がる世界観を考察して聴きたい一曲にもなっている。

アンジュルム『全然起き上がれないSUNDAY』(ANGERME [The Sunday morning that I can’t get up at all.])(Promotion Edit)

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