米津玄師、ヒゲダン、Mom……注目作には欠かせない小森雅仁の存在 多くの信頼寄せられるエンジニアとしての妙

 Momのニューアルバム『21st Century Cultboi Ride A Sk8board』の収録曲は、ほとんどがセルフミックスによるが、いくらかの曲を小森が手掛けている。たとえば「カルトボーイ」がそれだ。エフェクティブなサウンドが折り重なったのち、中盤ではビートがスイッチしてギターをバックにしたシンプルなサウンドに転換する。めまぐるしい展開に芯を与える低域の迫力をはじめ、聴きどころの多い一曲だ。ここにも、前述したような小森の強さが感じ取れる。

Mom「カルトボーイ」

 小森が携わった米津玄師の近作も、その観点から聴くと興味深い。SE的なサンプルが散りばめられた最新曲「感電」もさることながら、EnsembleFOVEによる管弦楽アレンジと、プリズマイザー的なボーカルのハーモニーをはじめとしたエレクトロニックなサウンドとの調和が見事な「海の幽霊」がやはり印象深い。身体にうったえかける低域の力とボーカルの表現、多彩な奏法で繊細なニュアンスを醸し出す管弦の調和は見事だ。

米津玄師 MV「海の幽霊」Spirits of the Sea

 Spotifyには、同サービス上で聴くことのできる小森の仕事が(自身によってポートフォリオ的に)まとめられている。本稿で着目したのはあくまで一面にすぎない(たとえば、トラックメイカー的な仕事との相性の良さなどは、Tokyo Recordings関連での小森の仕事に着目すると興味深いだろう)ので、ぜひいろんなアーティストを聴き比べて「エンジニアの役割」について思いを巡らせてみてほしい。

Komori Mixing Works

■imdkm
ブロガー。1989年生まれ。山形の片隅で音楽について調べたり考えたりするのを趣味とする。
ブログ「ただの風邪。」

関連記事