振付から紐解くJ-POPの現在地 第9回:カミヤサキ
元GANG PARADE カミヤサキ、「アイドル」から「振付師」へ 新しい道を歩み始める“覚悟”を語る
カミヤサキが振付師に進むきっかけとなった「レンタルトレード」
ーーアイドルの活動を続ける中で、振付師の道に進みたいと思ったのはいつ頃からですか。
カミヤ:自分が振付した曲に対していろんな方から「この振りめっちゃいいね」と言っていただけるうちに、自分のグループ以外の振付もしてみたいという気持ちが徐々に芽生えていきました。GANG PARADEからBiSにもう一度戻って活動させてもらった“レンタルトレード”という時期があったのですが、その時に振付した「SOCiALiSM」(2017年)は今までの自分の振付に対する概念を壊してくれた曲だと思っています。もちろんそれは自分だけの力じゃなく、みんなで試行錯誤したことがいろんな方からの評価にもつながったと思いますが、自分の自信になったし、もっと(振付を)勉強したいと思うようになっていきました。
また、自分の中でさらに大きなきっかけになったのは、レンタルトレード中に初めて、ステージで踊るGANG PARADEをお客さんの視点で見た瞬間でした。自分の振付でこんな風にお客さんが盛り上がっていて、メンバーたちも自分が伝えた構成と振りと意味をこんな風に表現してくれるんだ、と感動したんですよね。今考えるとあの瞬間がすごく大きなきっかけだったと思います。お客さんがステージを見て楽しんで、演者がお客さんを前にして作り上げるステージの全部を客観的に見れるということが衝撃的でした。それまでは自分も演者だったから自分の振付をライブで見ることができなかったので、トレード中にGANG PARADEの作品を初めて外から見た時に、踊ってくれているメンバーにも感謝したし、すごく嬉しかったです。
ーーあのレンタルトレードが今につながっているんですね。ほかに好きな振付の曲はありますか?
カミヤ:レンタルトレードから戻ってきた時にメンバーのマイカ(キャン・GP・マイカ)と一緒に作ったGANG PARADEの「GANG 2」(2018年)も好きです。「GANG 2」はGANG PARADEに戻った時の曲だし、「SOCiALiSM」はBiSに戻った時の曲、あとPOPの「Happy Lucky Kirakira Lucky」(2015年)も無期限活動休止から戻った時の曲なのですが、そういう“戻った”時の曲は振付も好きな作品が多いですね。
ーーカミヤさんの中で様々なターニングポイントとなる瞬間に「ダンス」があったんですね。どうしてそこまでご自身が振付にのめり込んでいったのだと思いますか。
カミヤ:小さい頃から、自分でものを作ることがすごく好きで、絵を描くことも好きでしたが、絵は書き終わって自分の手から離れた瞬間に、違うものになってしまうという感覚があって。だけど、振付は自分の体でできるじゃないですか。「自分を表現する」ということに対して初めて自信が持てたものが振付でした。
それと、今までアーティストの方のパフォーマンスを見てきた中で、もちろん音楽や歌詞にも共感や感動はたくさんあるんですが、その中でもやっぱりダンスの映像は何度も見てしまうんですよね。なので自分も、何度も見たくなると思ってもらえるダンスや、感動してもらえる作品を作っていきたいと思っています。
ーー歌詞とリンクした振付などに惹かれることが多いですか?
カミヤ:J-POPだと歌詞とリンクしているダンスが好きですね。ほかにもよく聴いているK-POPなどは、歌詞がわからなくても視覚的な情報がたくさんあって、ダンスを見てどういう曲なのかがわかるから、MVやライブパフォーマンスを見てこちらも感情的になれるし、曲の持つ世界観がよく伝わってきます。
ーーこの先、どんな方の振付をしたいと考えていますか。
カミヤ:私はやっぱりアイドル文化がすごく好きなので、自分が長く過ごしてきたアイドル業界のお仕事をいただけたら嬉しいです。もちろんたくさん勉強していかなければいけないことだらけですが、将来はアイドル以外の方々とも一緒にお仕事していきたいなと思っています。ただ今は、自分の振付がいいと思ってくださっているのか、今までの経験で声をかけてくださっているのか……と正直考えてしまう部分もありますし、自分の振付に自信と誇りを持てるかは、本当にここからの自分の頑張り次第だと思っています。
もちろん今までの経験に助けられる部分も絶対にあるし、心から感謝していますが、今後は自分の振付をたくさんの人から認めてもらえるようになりたいです。最初は多分、「元GANG PARADEのカミヤサキが振付したダンス」に興味を持ってくれる方もいるかもしれませんが、これからお仕事でご一緒する方やそれを見てくださるファンの方に、「これって誰が振りをつけたの? カミヤサキって人なんだ」と思ってもらえるようになっていきたいです。
「作品そのものに対する声などがこれまでよりダイレクトに自分に響く」
ーーこれまでアイドルとして表舞台に立っていたカミヤさんが、裏方とも言える振付師の道を進むということに強い覚悟を感じました。
カミヤ:確かに表舞台に出ることはなくなりますが、後ろ髪を引かれる気持ちはあまりないんですよね。でもこれからは、作品そのものに対する声などがこれまでよりダイレクトに自分に響くのだろうとは覚悟しています。GANG PARADEの頃は、メンバーとして振付をしていて、それを見てくださるファンの人は温かい心を持って見てくれるし、いいねと言ってくれることもたくさんありました。だけど、これからはそんな甘えが効かなくなるからこそ、悪い評価も良い評価もそのまま返ってくると思います。そうして自分の作るものに対して自信を持てたり、反省するきっかけをもらえる環境に飛び込めたことが“嬉しい”という感覚が今は強いです。
ーーアイドルの肩書きをなくすことで、色んなフィルターを通さずに自分の振付や作品を観てもらえる。
カミヤ:そう思います。もちろん、GANG PARADEの時も振付を担当させてもらえることはすごくありがたかったし、うれしかったです。だけど心のどこかで「自分がメンバーだから」という甘えや、観ている人がWACKを好きでいてくれているからこそ、許してもらえていたのではと思うこともあり、自分の振付に絶対の自信を持ち切れない部分もありました。なので、“腹を括る”ではないですけど、振りを作ることに関して真正面に、ゼロから向かっていけるいいスタートになったと思っています。これから自分の作品が世に出たときに、たとえばライブでその曲を楽しんでくれているお客さんと、一生懸命踊ってくれる演者の方がいたら、その景色が自分にとっては最高の評価になると思います。
ーーJ-POPシーンでは、だんだんと振付師の方のクレジットが出る機会やダンスが注目される機会が増えてきました。カミヤさんも約7年間アイドルとして活躍されていましたが、J-POPにおける振付の重要性をどういうところで感じていますか。
カミヤ:最近の話で言えば、今回のコロナ禍の中で、「ダンスってすごい」と思う場面がいくつもありました。SNSのコンテンツでも、ダンスを届ける動画がたくさんあったし、それに救われた人もいると思います。『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)でも“振付特集”を放送していたのを観て、娯楽としてダンスは絶対必要だし、音楽とは切っても切れない大事な存在なんだと改めて感じましたね。こういう事態になって、ダンスが色んな場面でフィーチャーされていることを考えると、振付に対する興味が昔よりも増えているのは間違いないし、DA PUMPさんの「U.S.A.」や三代目 J SOUL BROTHERS(from EXILE TRIBE)さんの「R.Y.U.S.E.I.」などもそうですが、SNSの普及やTikTokの流行とともに、振付やダンスの重要性はこれからも大きくなっていくのではないかと思います。
サイン入りチェキプレゼント
カミヤサキのサイン入りチェキを各1名様にプレゼント。応募要項は以下の通り。
応募方法
リアルサウンド公式Twitterと公式Instagramをフォロー&本記事ツイートをRTしていただいた方の中から抽選でプレゼントいたします。当選者の方には、リアルサウンドTwitterアカウント、もしくはInstagramアカウントよりDMをお送りさせていただきます。
※チェキはランダムでの発送となりますので、メンバーの指定は受け付けておりません。
※当選後、住所の送付が可能な方のみご応募ください。個人情報につきましては、プレゼントの発送以外には使用いたしません。
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<締切:7月12日(日)>