2019.12.18 18:00

エドガー・サリヴァンの躍進を決定づける「Beginnin’」　新型ユニットの可能性

　エドガー・サリヴァンの配信シングル「Beginnin’」が12月18日にリリースされた。こちらは、カップル向けペアジュエリーブランド「THE KISS」の2019年CM『ふたりをつなぐアンテナ』のCMソングとして、すでにオンエア中。離れた場所でもペアリングがアンテナとなり、ふたりの心をつないでくれる……というロマンティックなストーリーのバックに、〈廻る　季節の中／キミにやっと逢えたの／いま　だきしめたい〉と甘い歌声が響く。その映像×楽曲の相乗効果は、たった1分間のCMで、おとぎの国に飛ばされてしまうような感覚が得られるほど！　しかし、よくよく耳を澄ましてみると、〈なぜか　キモチよくって／キミをずっと探していたみたいな気がするの〉というフレーズが聴こえてきて、はっとする。〈キモチよくって〉という、おとぎの国では味わえない実感。そして、ところどころに出てくるカタカナが見せる、一筋縄ではいかないポップなニュアンス。さらにトラックも、切なくもキャッチーなメロディやきらめくピアノの後ろで、エフェクティブなコーラス、エレクトロな浮遊感、唐突なノイズ、正統派ロックを感じさせる伸びやかなギターなどが、次々と飛び出してくる。つまり、端的に言うと、スタンダードなラブソングでも、シンプルなポップソングでもないのだ。あえて言葉にするならば、ポップとコア、ファンタジーとリアルが同居する、新感覚なハイブリッドチューンと言えるだろうか。だからこそ、「THE KISS」のCMもじっくり見入ってしまうのだと思う。

THE KISS 2019年CM 《ふたりをつなぐアンテナ》（30秒）

　エドガー・サリヴァンは、幾度かのメンバーの変遷を経て、2019年4月に佐々木萌（Vo）と坂本遥（Gt）の2人組ユニットとなり、メジャーデビューしたばかり。まだまだフレッシュな立ち位置だが、すでにタイアップは数多く手掛けている。「あなたに恋をした」と「リヴィング・ヘヴン」は、映画『教科書にないッ！』シリーズの主題歌。「WONDERFUL WONDER」は、TBS系アニメ『みだらな青ちゃんは勉強ができない』のオープニングテーマ。「ゲレンデベイベー」は、TBS系『CDTV』エンディングテーマ。「叫べボイエンガル」は、テレビ朝日系『musicる』エンディングテーマ。様々な楽曲を、様々な作品／番組に提供しているが、ひとつ貫かれているように感じられるところがある。それは、「Beginnin’」と同じく、相乗効果と意外性を併せ持つ、幅広い視聴者を惹きつける楽曲を提供しているところだ。それが、特にはっきりと表れているのが「ミラクルショッピング～ドン・キホーテのテーマ～」。そう、あの“驚安の殿堂”ドン・キホーテで流れている〈ドンドンドン～ドン～キ～〉でおなじみの楽曲を、彼らは公式カバーしているのだ。いつも何気なく聴いていた楽曲が、キャッチーさを際立たせたスタイリッシュなアレンジに変身。「だから、ついつい口ずさんでしまっていたのね！」という答え合わせができると同時に、「どんな楽曲でもスタイリッシュにできる、エドガー・サリヴァンってすごい！」という感動が生まれてくる。ふたりのルックスも相まって、ポップアイコンとしての魅力も感じるユニットだが、それと合わせて職人肌な実力派であることが、これらの活躍を見ているとよくわかる。

エドガー・サリヴァン -WONDERFUL WONDER(Music Video)

　「Beginnin’」は、そんなエドガー・サリヴァンの躍進を、さらに決定づける1曲になると思う。美しいかと思いきや生々しさもある歌詞からは、作詞者である佐々木のアイデンティティが見えて、説得力を感じることができる。そしてトラックは、歌がすっきりと聴きやすいかと思いきや、幅広いバックボーンを想像させる仕掛けもあり、いろいろな方向に進んでいける可能性を示唆している。さあ、2020年、エドガー・サリヴァンは、どんな楽曲を生み出し、どんな存在になっていくんだろう？　まだまだ解き明かせない新型ユニットの歴史は、令和とともに、まだまだはじまったばかりだ。

　1月13日には『エドガー・サリヴァン presents 新春！めんこいツーマンショー』と題して、ウソツキを招いたライブが東京・shibuya eggmanで開催される。この日のライブで、未知なるこれからのエドガー・サリヴァンを占うことができるかもしれない。目撃しない手はない。

■高橋美穂
仙台市出身のライター。㈱ロッキング・オンにて、ロッキング・オン・ジャパンやロック・イン・ジャパン・フェスティバルに携わった後、独立。音楽誌、音楽サイトを中心に、ライヴハウス育ちのアンテナを生かしてバンドを追い掛け続けている。一児の母。