Official髭男dism、[ALEXANDROS]、BBHF……新たな音楽体験とポピュラリティを両立する3バンドの独自性

 この2バンドがJ-POP楽曲の幅に対してカウンターを打ち続けてきたことに比べると、冒頭でも書いた通り、Official髭男dismはJ-POPにも明らかにルーツがあり、その幅を広げたい、いい曲を書けば必ず多くのリスナーに届くはずだというスタンスで活動してきたバンドだ。だからこそ、そのアレンジやサウンドプロダクションの細部にわたるこだわりは強く、そのことが明確になったのが2nd EP楽曲「Stand By You」だろう。打ち込みと生ドラム双方で生音ヒップホップ的な少しつんのめるようなビートを刻み、サビでバックトラックがブレイクしクラップが入り、さらに裏表にクラップが入る展開、そして2018年当時、まだヒップホップシーンでしかほぼ耳にしなかったクワイア的なコーラス。洋楽のトレンドを満載したこの曲が2018年10月のタイミングで世に出ていなければ、彼らのプロデュース能力や楽曲のパワーはまた違う切り口で語られていたのではないだろうか。もちろん、最新のアレンジが悪目立ちするわけでなく、あくまでも藤原聡の書く跳躍力のあるメロディが楽曲の軸を構成しているからに他ならないのだが。ヒゲダンが言うグッドミュージックが時代を表現する鮮烈なサウンドメイクを包摂していることは間違いない。今年を代表する1枚となったアルバム『Traveler』も細部を聴き込むほどに周到な仕掛けが満載されている。

Official髭男dism『Traveler』

 どの時代のどんなジャンルの音楽からもリファレンスを得られる時代だからこそ、バンドがバンドである必然性は何を取捨選択するかに左右される。今回例に挙げた3組のように新たな音楽体験とポピュラリティを両立する日本発バンドの動向を今後も見続けていきたい。

■石角友香
フリーの音楽ライター、編集者。ぴあ関西版・音楽担当を経てフリーに。現在は「Qetic」「SPiCE」「Skream!」「PMC」などで執筆。音楽以外にカルチャー系やライフスタイル系の取材・執筆も行う。

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