乃木坂46、“個の強さ”で体現したアンダーの歴史 岩本蓮加座長の『アンダーライブ』を振り返る

 乃木坂46の『アンダーライブ2019』が10月10・11日、千葉・幕張イベントホールで行なわれた。今回の公演では、アンコール時の「乃木坂の詩」を除けばセットリストはすべてアンダー楽曲で構成されている。それだけに、現在の彼女たちが表現できることの奥行きを、グループのデビューから今日までに蓄積されてきたアンダー作品を介して提示するようなライブになっていた。

 4段に分けられ、高さを効果的に使ったステージ上でのダンスパートに始まり、岩本蓮加センターによる「狼に口笛を」、鈴木絢音がセンターを務める「自惚れビーチ」でライブは幕を開ける。今夏の全国ツアーでは客席全体を使ってのペンライト演出が行なわれていた「滑走路」も、ここでは寺田蘭世を中心にオーソドックスに楽曲を伝えるようにパフォーマンスされる。

 乃木坂46が歩んできたキャリアのなかで生まれるアンダー楽曲の名作にも、現在のメンバーによって新たな光が当てられてゆく。次のブロックで阪口珠美がセンターを務めた「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」では、阪口特有のエモーションの伝え方によって、従来の同楽曲とはまた異なるニュアンスがもたらされた。アンダー楽曲としてのクラシックが時を経て継承されてゆくプロセスがこうした瞬間に浮かび上がる。

 アンダー楽曲のみを軸にした表現の広がりは、続く少人数ユニットによるブロックでも展開される。「自由の彼方」は、中田花奈と和田まあやの1期生ペアによるデュエットとして披露され、2人の存在感が示される。続く「My rule」ではスローなアレンジでスタートしつつ後半で通常アレンジへと移り変わり、一曲のうちに緩急を織り交ぜてみせる。同曲ではオリジナル発表時の参加メンバーは寺田のみ、他は当時アンダー楽曲に参加していなかった3期生でユニットを構成し、アレンジの妙とともに大きくメンバー編成の印象を変化させた。他方、その寺田がオリジナルでセンターを務めていた「ブランコ」は今回、同じ2期の鈴木と渡辺みり愛がユニットを組み2人の声で歌い繋いだ。グループとして楽曲を伝えるための手段を豊かに持っていることが、このブロックではいくつものかたちで見えてくる。

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