わーすたが示した、気高く美しいアイドルの姿 “遮二無二”臨んだ初の野外フリーライブを見た

 しっとりと聴かせたセクションからの後半戦。tmsw(Ba)の粘りあるグルーヴときこり(Gt)の小気味良いカッティングに誘われる「誰も悪くない」。先ほどまでとは打って変わり、ファンタジーでユーモアな歌詞とのギャップあるクールさと艶っぽさで魅了すると、三品がギターを手にした。ロックチューン「PLATONIC GIRL」だ。四肢の長い彼女が、低めに構えた黒いサイクロンを掻きむしりながらシャウトするシルエットは、実に絵になる。

 三品がエレクトリックギターを初めてステージで弾いたのは、ちょうど1年前の昨年10月に行った『わーすたぷらねっと ~nature~』での同曲だったが、あの時より貫禄は十分だ。対して、廣川も負けじと攻めていく。本能の赴くままに感情をぶつけていく三品のスタイルに比べると、優等生に見られがちな彼女の歌に、いつにない攻撃性を感じた。言わずもがな、三品と廣川はまったくタイプの異なるボーカリストであり、己の役割を自負しながら、お互いを尊重し合ったツインボーカルという印象が強いのだが、この日は歌でバチバチにやり合うような場面が何度か見受けられた。もちろん、それは良い意味での刺激であり、信頼あってこそのライバル意識でもあるだろう。そんな同じグループ内の2人が切磋琢磨していこうとする様は、今後わーすたが飛躍する大きなポイントになるのかもしれない。

 せっかく広い会場でのフリーライブなのだから、途中で柵内の観覧スペースから出て、観ることにした。振りコピをする人、ペンライトを大きく振って身体全体で楽しんでいる人、ベンチに座ってリラックスしながら観ている人、たまたま通りがかって足を止める人……、仕切られていていないフリーのスペースでは多くの人が様々なスタイルでわーすたのライブを楽しんでいる。代々木公園のフリーライブらしい光景だ。少し離れた歩道橋にも多くの人がいたので、一番上まであがってみた。そこから見た眺めが最高だった。廣川は「2年前のZepp DiverCityで観た景色が特別で、あれに勝るライブというのがすごく難しい」と言っていた。今日この景色は、あのときに勝るものになっているはず。ステージから見たわけではないのに、そもそも本人でもないのに、勝手にそう思えるほどの絶景が広がっていた。

 それにしても、こんなに離れたところまでよく通るボーカルだと思った。PA音響のテクニカルな部分ではなく、本人が声の鳴らし方をちゃんと分かっているのだろう。とくに廣川の歌声はヴィンテージのバイオリンのような優雅な響きをしていると思うのだ。“名器”と呼ばれる古い楽器はとにかく音が遠くまで飛ぶ。マイクや音響システムがまだなかった時代は、大きな音を出すことよりも、他に埋もれることなくよく通る音、広い会場の後ろまで届かせることが重要だった。まっすぐで輪郭がはっきりしていて、それでいて優しい歌声を聴きながら、そんなことを思った。

 インパクトのある歌詞に気を取られてしまいがちだが、荘厳なメロディと壮大な楽曲構造はジャーマンメタルかメロスピか、というほどの大曲「メラにゃイザー!!!!!〜君に、あ・げ・う♪〜」、とにかく突き抜けるボーカルがひたすら気持ちいい「KIRA KIRA ホログラム」で盛り上がりは最高潮に達し、最後は右へ左へのわんにゃん振舞い「いぬねこ。青春真っ盛り」で本編は終了した。

 鳴り止まぬ“わーすた”コールに導かれて再び登場した5人は、「遮二無二 生きる!」と並ぶ両A面シングルの新曲「バスタブ・アロマティック」を初披露。フレンチエレクトロのテイストとわーすたらしいゲーム音楽っぽさを混ぜ合わせた楽曲は、これまでになかったガーリー感溢れる可愛らしいポップソングである。

「今日初めてわーすたを観た人もいると思いますけど、私たちわーすたについてきてください! よろしくお願いします!」

 廣川の言葉のあと、最後の最後は「うるとらみらくるくるふぁいなるアルティメットチョコびーむ」。ピコピコハンマーならぬ、“エクスカリにゃん”はいつもより4本増し、各メンバー1本ずつ合計5本の大サービス。それぞれが大きく弧を描くように客席に放り投げると、ステージの5人も客席のわーしっぷも、ありったけの声と力を出し切って、見事にトリケラトプスを倒した(同曲ではわーすたとトリケラトプスの戦いが描かれる)。廣川の振り絞るような「せーの!」の掛け声で会場一体となる大ジャンプで大団円。メンバーがステージから捌け、これにて、おしまい!……のはずが、「ここで、ニュースをお伝えします」と、突然流れるメンバーのナレーション。

「私たちわーすたが、さらにゆうめいににゃることを決め、2020年3月28日土曜日、渋谷公会堂にて、ワンマンライブを開催することを、ここに発表するのであった」

 意表を突いた発表に、どよめきと喜びが入り混じった歓声が上がった。そう、廣川がアンコール時に言っていた「5周年を迎えるときにはもっと大きな景色を」と言っていたのは、渋谷公会堂(LINE CUBE SHIBUYA)でのワンマンライブのことだったのだ。再び巻き起こる、歓喜と祝福が込められた大きな“わーすた”コールにメンバーが影アナで精一杯応えた。

「みなさん、本当にたくさんの愛をありがとうございました! 以上、私たち、The World Standard、わーすたでした!!」

 後日談ではあるが、このフリーライブの集客動員数によっては、渋谷公会堂でのワンマンライブは開催しないとのことだったという。結果的には目標を大きく上回る人数が会場に集まったわけだが、この日得たものはそうした“数”でないことは言うまでもないだろう。

 

 10月30日には、この日、楽曲の持つ意味がさらに深まった『遮二無二 生きる! / バスタブ・アロマティック』のリリース。11月からは全国4箇所を巡るツアー、『わーすたライブツアー2019〜遮二無二×××!〜』がはじまる。このフリーライブでさらにパワーアップしたわーすたは来年3月、5人で迎える結成5周年に向かって止まることなく走り続ける。この先、どんな景色が待っているのだろうか、楽しみで仕方ない。

■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログTwitter

「遮二無二 生きる!」MV

■ライブ情報
『わーすた ライブツアー2019 ~遮二無二 xxx!』
11月4日(月・祝)東京・山野ホール
11月10日(日)福岡・Drum Be-1【SOLD OUT!】
12月1日(日)愛知・ボトムライン
12月8日(日)大阪・amHALL

『わーすた 5th Anniversary Live』
2020年3月28日(土)
LINE CUBE SHIBUYA(旧 渋谷公会堂)

■リリース情報
『遮二無二 生きる! / バスタブ・アロマティック』
10月30日(水)リリース

CD+Blu-ray:¥1,818(+税)
<CD>
01.遮二無二 生きる!
02.バスタブ・アロマティック
03.Do on Do 〜坊っちゃんいっしょに踊りゃんせ〜
04.SHINING FLOWER
05.遮二無二 生きる!(Instrumental)
06.バスタブ・アロマティック(Instrumental)
07.Do on Do 〜坊っちゃんいっしょに踊りゃんせ〜(Instrumental)
08.SHINING FLOWER(Instrumental)
<Blu-ray>
遮二無二 生きる! MUSIC VIDEO
わーすた STUDIO LIVE "ゆうめいに、にゃる!!!!!" LIVE MOVIE

CD+Blu-ray:¥1,818(税抜き)
<CD>
01.バスタブ・アロマティック
02.遮二無二 生きる!
03.Do on Do 〜坊っちゃんいっしょに踊りゃんせ〜
04.SHINING FLOWER
05.バスタブ・アロマティック(Instrumental)
06.遮二無二 生きる!(Instrumental)
07.Do on Do 〜坊っちゃんいっしょに踊りゃんせ〜(Instrumental)
08.SHINING FLOWER(Instrumental)
<Blu-ray>
遮二無二 生きる! MUSIC VIDEO
わーすた STUDIO LIVE "ゆうめいに、にゃる!!!!!" MAKING MOVIE

CD Only:¥1,091(+税)
<CD>
01.遮二無二 生きる!
02.バスタブ・アロマティック
03.Do on Do 〜坊っちゃんいっしょに踊りゃんせ〜
04.SHINING FLOWER
05.遮二無二 生きる!(Instrumental)
06.バスタブ・アロマティック(Instrumental)
07.Do on Do 〜坊っちゃんいっしょに踊りゃんせ〜(Instrumental)
08.SHINING FLOWER(Instrumental)

わーすた オフィシャルホームページ
わーすた オフィシャルファンクラブページ

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