『温泉むすめコンプリートアルバム』インタビュー

『温泉むすめ』プロデューサー橋本竜が語る、地方活性化プロジェクト新展開と2次元コンテンツの今

多層的な作り=コンテンツの深み

有馬楓花

ーー「温泉むすめ総選挙」の上位入賞キャラクターによるソロ曲などを収録した『温泉むすめコンプリートアルバム Vol.3 〈SOLO SIDE〉』には、先ほどお話にあった有馬楓花のソロ曲「あ・り・ま・す・か?」を収録しています。彼女の「趣味:UMAのハンティング」というプロフィールを反映した、電波ソング風味の可憐なナンバーですね。

橋本:有馬楓花は“天然”のひと言では表現できない愛されキャラクターなので、不思議系電波ソングを作ろうということで、何度でも聴きたくなるスルメ曲になりました。畑さんもすごくこだわってくださって、歌詞もとてもユニークに仕上がっています。

ーーこれは単純な疑問なのですが、なぜ有馬楓花はUMA好きなのですか? 有馬温泉にUMAにまつわるエピソードはないと思うのですが……。

橋本:それは有馬の漢字が「ゆうま」とも読めるところからきています(笑)。おそらく気づいている方はいると思いますが、公式としてはこれが初公表かもしれません。

ーーなるほど。それぞれの楽曲にキャラクターの個性や背景にあるストーリーが描かれていて、そういう意味でも今回のコンプリートアルバムは『温泉むすめ』への入門キットであるのと同時に、これをきっかけにその世界により深くハマっていける作品と言えそうです。

橋本:ちなみに今回のアルバムジャケットのイラストは全て、『温泉むすめ』の一コママンガや温泉指南マンガ「温泉に入ろう!」を担当していただいている、らぐほのえりか先生に描き下ろしていただきまして、これまで先生が描いていただいたことがすべて詰まったものになりました。それと『温泉むすめ』たちが通っている学校「温泉むすめ師範学校」はお台場にある設定なのですが、ジャケットに描かれている舞台もすべてお台場に実際にある場所なんです。「SOLO SIDE」はレインボーブリッジ、「UNIT SIDE」はお台場にある橋、「SPRiNGS SIDE」はお台場海浜公園ですね。これは『温泉むすめ』が現実にいるとしたら、こういう場所で日常を送っていることを表現したかったんです。

【試聴動画】あ・り・ま・す・か?「有馬楓花(CV:桑原由気)」【温泉むすめ】

ーー世界観をしっかりと作り込んでいるからこそ、キャラクター一人ひとりが魅力的に映るんでしょうね。

橋本:キャラクターは一人ひとりが魂を持っていないと、お客さんにはあまり伝わらないと思うんです。それとこれは自分もオタクだからわかるのですが、皆さん、考察や深読みが好きじゃないですか。そういった考察のヒントになるようなものをいろいろなところに散りばめたいんですね。それが薄くてレイヤーがあまりないと「温泉むすめってこんなものか」となってしまうので、見れば見るほど知れば知るほどいろんな解釈ができる、多層的な作りにしたいんです。それがコンテンツの深みだと自分は考えていまして。元々お客さまに笑顔と癒しを与えるプロジェクトと謳っているので、ニヤッとするような面白さにはこだわっていきたいです。

『温泉むすめ』が目指す“文化を繋ぐハブとしての存在”

ーー今後の大きな展開としては、12月22日にSPRiNGSの単独ライブ『SPRiNGS 3rd LIVE 〜湯夢色バトン〜』が東京・福生市民会館大ホールで予定されています。

橋本:今回は新衣装のお披露目や等身大フィギュアの展示も行う予定で、会場に足を運ばないと体験できない楽しみをたくさん用意しています。そして今回のライブでは実験要素として、3Dキャラクターによるハイブリッドライブも行います。例えば『あんさんぶるスターズ!』さんや初音ミクさんといったコンテンツでも3Dライブを展開されていますが、今回はキャラクターの3D映像の隣に声優を置いて二人でライブを行う、次元をミックスしたものになる予定です。コンテンツ業界では普通、2次元と3次元をしっかりと切り分けて世界観を保つことが大事と言われていますが、そんなものは壊してしまおうと思いまして(笑)。ただ、そうはいっても最低限の境目は引いています。また、今回のジャケットにも表れていることですが、我々は2次元を3次元に重ね合わせることも大事にしていて、完全なフィクションにしないようにすること、それが地域を応援するために必要なことだと思うんです。

 また、3Dのキャラクターを作る理由として、各キャラクターが地域の旅先案内人として観光案内を行うような環境を作りたいという目的もあります。もちろん声優本人が実際に現地に行くのは難しいですから、3Dのキャラクターが旅行案内をしてくれるようなデジタルサイネージや投射するためのスクリーンを用意できればと考えていまして、その実験として今回のライブで3Dにもチャレンジします。我々は演出のために3Dを投影するアクリル板から作っていますから、きっと楽しんでいただけると思います。

ーー前回のインタビューでも「楽曲を作ること自体が毎回実験」とお話されていましたが、『温泉むすめ』はそういったトライアルを重ねることで新しい種を育てていっているように感じます。

橋本:自分は今後コンテンツが日本の産業を引っ張っていくという確信があるので、我々がそのリーディングカンパニーとなるために、いろんなものを受け入れて、製作委員会方式のような古い考え方や仕組みを時代のニーズに合わせて変化させようと思っているんです。そもそもコンテンツビジネスでフリーミアム、いわゆるロイヤリティフリーなんて通常はあり得ないですが、我々はキャラクターをフリーで使っていただいて、全国展開をしつつ、アニメやゲームに依存しすぎない方策を立てています。これは前回のインタビューでもお話しましたが、ライブでも音楽だけでなく演劇を挿んだり、影絵や日本舞踊を取り入れたりといったミックスカルチャーを進めていかないと、いずれ飽きられてしまうと思うんです。

 実のところ声優コンテンツ自体がすでに飽きられ気味だと感じています。今はこれだけたくさんのコンテンツがありますし、そのなかでフェードアウトしていくプロジェクトも多いじゃないですか。そんな状況の中、我々はコンテンツの栄枯盛衰に合わせて声優さんが使い捨てられていくような状況は避けたいですし、コンテンツを未来永劫続けていくためには、新しい技術、新しい発想をどんどん取り込んで、コンテンツ自体が多様性と多面性を持って、拡張していくことが非常に重要だと思うんです。そういった柔軟性がないとコンテンツは尻すぼみしていきますし、常に危機感を持ちながら運営しているところはあります。

ーーでは『温泉むすめ』としてはこの先、どのような展開をお考えですか。

橋本:今後もいろいろな地域や企業との展開を予定していますが、まずは伝統的工芸品とのコラボを開始します。第一弾として箱根彩耶役の長江里加さんが作成した箱根の寄木細工を限定販売しまして、その後も陶器や漆器、日本人形の企画が進行しています。日本人形は髪の色が黄色のものを企画しているんですよ。今は節句の時に雛人形を飾る人が少なくなりましたが、「温泉むすめ」の日本人形なら興味を持っていただけるかもしれない。そうやって日本の伝統工芸や伝統文化と若い人の橋渡しをしたいんです。

 他にも今度『温泉むすめ』で落語部を作って、落語家さんと一緒に寄席をできればとも考えています。そうすることで若い方が落語に興味を持って、それをきっかけに本物の寄席に足を運んでいただければいいなと考えていまして。先ほどのバトンの話ではないですけど、『温泉むすめ』が次元やコンテンツ、文化を繋ぐハブとして存在することで、今後もいろんな方を巻き込んで、若い人や海外の方が日本の文化の良さや魅力を知るきっかけになればと思うんです。そこはインバウンドも視野に入れながらやっていきたいですね。

ーー様々な人にアプローチできる企画が盛りだくさんですね。

橋本:それによってより幅広い人に知ってもらえたらうれしいですし、我々の夢は紅白出場ですからね(笑)。それと詳細はまだ言えませんが、来年にはついにあのプロジェクトが動きますので、こちらもぜひ期待していただければと思います。

(取材・文=流星さとる)

■リリース情報
『温泉むすめコンプリートアルバム』

・Vol.1〈SPRiNGS SIDE〉
価格:¥3,000+税

<収録内容>
01.未来イマジネーション!
02.70億分の9の奇跡
03.青春サイダー
04.Ambition
05.粉雪フレンズ
06.純情-SAKURA-
07.ロマンスの林檎
08.SILENT VOICES
09.おはようジャポニカ
10.さよなら花火
11.Hop Step Jump!
12.おんくり
13.湯夢色バトン

・Vol.2〈UNIT SIDE〉
価格:¥3,000+税

<収録内容>
01.Hang out!!! – AKATSUKI
02.Never ending dream – AKATSUKI
03.情熱のパラディソ – AKATSUKICD初収録
04.暁のDiva – AKATSUKI新曲
05.LUSH STAR☆ – LUSH STAR☆
06.恋と名付けたもの – LUSH STAR☆
07.イプシロン進化論 – Adhara
08.孤高のピエロ – Adhara
09.星に集いし乙女の物語-プロローグ- – Adhara新曲
10.覚醒 sinfonia – Adhara新曲
11.ハミングDays – petit corolla
12.Petit Etoile – petit corolla
13.レイニーボーイフレンド – OH YOU LADY?
14.ぽかぽか音頭 – OH YOU LADY?

・Vol.3 〈SOLO SIDE〉
価格:¥3,000+税

<収録内容>
01.未来の彼方 – 草津結衣奈(CV:高田憂希)、コーラス:尖石内湾(CV:安齋由香里)CD初収録
02.うぇるかむ to ONSEN!! – 道後泉海(CV:篠田みなみ)CD初収録
03.常しえの標 – 山代八咫(CV:星希成奏)CD初収録
04.わたしオトナ化プラン♪ – 伊香保葉凪(CV:茜屋日海夏)CD初収録
05.祈りは風のように – 雲仙伊乃里(CV:奥野香耶)CD初収録
06.シリウスのpirouette – 黒川姫楽(CV:田中美海)CD初収録
07.トキメキアドベンチャー! – 祖谷メグリ(CV:長久友紀)CD初収録
08.Passionate Journey – 大手町梨稟(CV:楠木ともり)
09.願いキラキラきらり – 大手町梨稟(CV:楠木ともり)
10.咲かせよ 沸かせよ バンバンBURN! – 下呂美月(CV:佐伯伊織)CD初収録
11.追伸、ありがとう
– 阿蘇ほむら(CV:髙橋麻里)、飯坂真尋(CV:吉岡茉祐)、人吉青井(CV:青山吉能)CD初収録
12.あ・り・ま・す・か? – 有馬楓花(CV:桑原由気)

・温泉むすめコンプリートBOX 初回限定盤
価格:¥13,000+税
価格(50セット限定特製手ぬぐい付き):¥15,000+税

<収録内容>
温泉むすめコンプリートアルバム Vol.1〈SPRiNGS SIDE〉
温泉むすめコンプリートアルバム Vol.2〈UNIT SIDE〉
温泉むすめコンプリートアルバム Vol.3〈SOLO SIDE〉
4th LIVE Blu-ray(夜の部)
書き下ろしエピソード付きブックレット
12月22日(日)開催の「温泉むすめSPRiNGS 3rd Live 〜湯夢色バトン〜」のチケット先行申込権(抽選)
Blu-ray温泉むすめ 4th LIVE “NOW ON☆SENSATION!!”

<Blu-ray収録内容>
〜聖夜にワッチョイナ Vol.2〜(夜の部)
01.70億分の9の奇跡 – SPRiNGS
01.未来の彼方 – SPRiNGS
Passionate Journey – 大手町梨稟(CV:楠木ともり)
願いキラキラきらり – 大手町梨稟(CV:楠木ともり)
うぇるかむ to ONSEN!! – 道後泉海(CV:篠田みなみ)
未来イマジネーション! – SPRiNGS
純情-SAKURA- – SPRiNGS
レイニーボーイフレンド – OH YOU LADY?
ぽかぽか音頭 – OH YOU LADY?
Petit Etoile – ゆのはな選抜
追伸、ありがとう – ゆのはな選抜
咲かせよ 沸かせよ バンバンBURN! – ゆのはな選抜
Never ending dream – AKATSUKI
Hang out!!! – AKATSUKI
情熱のパラディソ – AKATSUKI
粉雪フレンズ – SPRiNGS
Hop Step Jump! – SPRiNGS
おんくり – SPRiNGS
青春サイダー – 全員

■ライブ情報
『温泉むすめ SPRiNGS 3rd Live ~湯夢色(ゆめいろ)バトン~』
日時:2019年 12月 22日(日)
1部 開場13:30 開演14:00
2部 開場17:00 開演17:30
※時間は予告なく変更となる可能性があります。

場所:福生市民会館大ホール(もくせいホール)
〒197-0011 東京都福生市大字福生2455

<出演>
・SPRiNGS
草津結衣奈(CV:高田憂希)
箱根彩耶(CV:長江里加)
秋保那菜子(CV:高橋花林)
有馬輪花(CV:本宮佳奈)
道後泉海(CV:篠田みなみ)
登別綾瀬(CV:日岡なつみ)
下呂美月(CV:佐伯伊織)
有馬楓花(CV:桑原由気)
奏・バーデン・由布院(CV:和多田美咲)

■チケット情報
全席指定 7,400円(税込)

BOX封入先行(抽選)
受付期間:10月16日(水)~11月5日(火)23:59
「温泉むすめコンプリートBOX(初回限定盤)」内に封入されているシリアル番号をチケット申込みページにて照合いたします。

楽天チケット1次先行(抽選)
受付期間:11月9日(土)12:00~11月17日(日)23:59
  
チケットぴあ先行(抽選)
受付期間:11月18日(月)12:00〜11月24日(日)23:59

イープラス、ローソンチケット、楽天チケット2次先行(抽選)
11月20日(水)12:00〜11月26日(火)23:59
イープラス
ローソンチケット
楽天チケット

一般発売(先着)
受付期間:12月1日(日)10:00~ 
主催:株式会社エンバウンド 共催:福生市民会館
制作:株式会社東京音協(ぴあグループ)
後援:観光庁

温泉むすめ公式サイト

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