『綺麗な三角、朝日にんげん』インタビュー
JYOCHOが語る、“未知の音楽”を追求するクリエイティブの根幹「曲を書く上でアイデアは尽きない」
ポップと未知の二面性
一一みなさん、だいじろーさんをミュージシャンとしてどう見ていますか。
sindee:稀ですよね(笑)。でも絶対、この音に人間性もちゃんと曲に出てるんで、そこが魅力的やなと思いますね。連動してない人もいますよね。作ってる音楽と個人は別だっていう。でもだいじろーはすごくハッピーな人間で、作ってる音楽も情緒があってハッピーで。説得力があるなって思いますね。
hatch:僕もそう思ってる。一言で言ったら、天才なんです。
だいじろー:……この時間、いいっすねぇ(笑)。
hatch:ほんと、自分の周りにいる天才って言ったら真っ先に浮かぶし。プレイヤーとしても、音としてアウトプットすることにも長けているし、生み出すものの質も高い。だから、稀な存在です。
はち(Fl):うん、そう思います。でも音楽以外では、普通に楽しいキャラクターの人、っていう印象が強くて。
猫田:私が勝手にそう思っているんですけど、あんまり地球人だと思えない(笑)。普段のやり取りとか会話とか、言い出すことも面白いし変わってる。曲を書くスピードもすごく早いんで。
sindee:なかなかできないと思うんですよ。「ここまでにこれを絶対作る」って約束をしても、納期が近いと達成するのが難しい。でもだいじろーは必ず上げてくるんです。そこに決して妥協もないし。その信頼感はありますね。
一一バンドのスタートから2年半でフルアルバム一枚、ミニアルバム二枚、EPが二枚と多作ですからね。
だいじろー:はい。常に、楽曲を書くうえでアイデアは尽きないので。
一一ライブが好きというのはわかるんですけど、ひとりで楽曲を生み出していく作曲者としての喜びは、また別ですよね。
だいじろー:そうですね。個人的には曲を作っている時間もすごく楽しいです。僕、その時その時にやりたいことを全部やりきるんですね。でもある程度時間が経ったらその曲の記憶とかないんですよ
一一え、曲ごとに忘れてしまうんですか?
だいじろー:1カ月かけて作るとかじゃなくて、もうほんと1日、2日で作っちゃうんで。その間は寝たくもなくて。できるまでガーッと集中して、ずっと心がワサワサしてるんです。なので、あんまり記憶がないんですよ。
一一宮崎駿さんがそうだって聞いたことがあります。集中すると3日くらいは平気で寝ない人だと。
だいじろー:あぁ、僕もそのタイプですね。気になっちゃうんですよ。集中しちゃうとあまり眠くもならなくて。僕も3日とか作り続けたことがある。
一一いるんですね、そういう人。つい「天才」って言いたくなりますけど、でもJYOCHOの音楽は気難しいものではなくて。
sindee:うん。そこは絶対にポップさがあると思いますよ。
一一だいじろーさんはポップスを作りたいんですか? それとも未知のものを作りたい?
だいじろー:その両方です。まさにポップスも好きで、未知のもの、見たことないものも大好きで。その両立は常にやりたいなと思っていますね。
一一いまや新しいコードなんかないし、未知の音楽っだてそうそうないだろう、という意見も聞きますけど。それでも未知の音は……。
だいじろー:あ、全然できると思いますよ。もちろんそれが過去にあった素晴らしい人たちのコピーの可能性はあるんだけど。でも、自分が見たことないようなものには挑戦できてると思います。
猫田:私、最初にJYOCHOの音源聴いてポップだなと思ったんですよ。で、いざ歌おうと思ったら案外難しい。入ってみたら構造の複雑さに気づく感じで。ほんとにリスナーとしてはポップ、受け入れやすい音楽っていう印象だった。
hatch:その二面性はJYOCHOのテーマのひとつかなと思ってる。騙し絵みたいな。こうとも取れる、こうとも取れるっていう、それが共存してる。
一一共存ですよね。対立はしていない。
hatch:そうです。それはJYOCHOの音楽性の特徴で。普通にJ-POPを聴く女の子がこれを好きって言ってくれたりする。
sindee:テクニカルなものをテクニカルに提示するって、案外簡単やと思うんですよ。JYOCHOはテクニカルなものをテクニカルじゃなく聴かせられてると思うんで、それは自分たちでも嬉しいです。
一一ポップさに関しては、猫田さんの声であることも重要で。音としての響きがとてもいい。これがベタベタした歌い方だと印象が違うから。
だいじろー:そうですね。基本的に僕は猫田さんの歌が好きなので。猫田さんの声質、歌ってる時の雰囲気とか。あんまりシャープだったり強い質感は求めてないかもしれない。