“新しい藤原さくら”の姿に圧倒された一夜 新曲2曲も披露したライブハウスツアー初日を観て

 これまで見たことのない「新しい藤原さくら」に、ただただ圧倒される一夜だった。

 シンガーソングライター、藤原さくらにとって1年ぶりのツアーは、9月27日の東京・恵比寿LIQUIDROOMを皮切りにスタート。『Twilight Tour 2019』と銘打った初の「ライブハウスツアー」である。

 チケットが完売したすし詰めのフロアは、久しぶりのツアーということもあって開演前から熱気が漂っている。まずはミツメの須田洋次郎(Dr)、COMEBACK MY DAUGHTERSの渡辺将人(Ba)、そしてayU tokiOこと猪爪東風(Gt)がステージに現れ、おもむろにセッティング。力強い4つ打ちのキックに合わせ、渡辺がリッケンバッカー・ベースでソリッドな8ビートを刻み始めると、エレキギターを抱えた藤原が登場。大きな歓声が巻き起こる中、「I wanna go out」からライブはスタートした。

 2016年にリリースされた彼女のメジャーデビューアルバム『good morning』では、mabanua編曲によるアコースティックなアレンジが印象的だったこの曲が、それとは全く新しいアレンジに生まれ変わっている。目まぐるしく移り変わっていくコード進行はベースの単音弾きに削ぎ落とされ、そのソリッドかつミニマルなアンサンブルの上で気だるくスモーキーな藤原の歌声がたゆたう。それはまるで、The Black Keysをバックに歌うラナ・デル・レイのようでもあった。

 これまでの藤原のライブは、mabanuaやKan Sano、SPECIAL OTHERSの面々や、Curly Giraffeこと高桑圭といった熟達した演奏家たちがしっかりと脇を固め、文字通り彼女を「サポート」するようなアンサンブルを聞かせていたのだが、今回、藤原本人が須田にコンタクトを取り、彼をバンマスに新たに集められたメンバーとのパフォーマンスは、「守られている」のではなくまさにバンドメンバーの一人として「一緒に進んでいる」感が、ひしひしと伝わってくるのだった。

 その後も新旧バランスよく散りばめられた楽曲を、矢継ぎ早に繰り出していく藤原。どの曲も一からアレンジを組み直しており、イントロを聞いただけではどの曲か分からないものもいくつかあった。例えば、mabanuaが全面プロデュースを手掛けたことでも話題となった、2018年リリースのEP『green』から「Sunny Day」を披露。オリジナル音源では、軽やかな16ビートの上を転がるエレクトリックピアノが楽曲のカラーを象徴していたが、ライブでは猪爪のギターを大々的にフィーチャー。スケールアウトしたイントロのフレーズや、サビで藤原のボーカルと絡み合うカウンターメロディ、ワウやアームを駆使したギターソロなど、緊張感たっぷりのプレイでオーディエンスを魅了していた。

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