indigo la Endとゲスの極み乙女。の『馳せ合い』に見た、5年間の進化と次の5年に向かう明るい未来

 2014年4月2日、川谷絵音(Vo/Gt)率いるindigo la Endとゲスの極み乙女。は、同時メジャーデビューを果たした。そして今年9月15日、デビュー5周年を記念し、2マンライブ『馳せ合い』が新木場STUDIO COASTで開催された。会場には川谷絵音使用ギターの展示やファンクラブブース、フォトスポットなども設置されお祝いムードを盛り立てる。さらに、デビューアルバムであるindigo la End『あの街レコード』とゲスの極み乙女。『みんなノーマル』の曲が披露されることも予告されており、高倍率のチケットを手に入れたファンは、特別なことが起こる予感と共に開演を待っていた。

 冒頭、川谷から10分ほどのビデオメッセージが放映された。川谷は両バンドについて、ここ1年くらいは「2つあるから今がある」という考えに到ったが、ゲスの極み乙女。が急に売れ始めた頃はindigo la Endの活動に気まずさもあったという。また、両バンドのためにも、川谷の活動範囲を増やし続けることに意味があると感じていると話した。実際、ジェニーハイによって世間が川谷絵音という人間を再評価し、それが2バンドの評価にも繋がっているとした。「今日はこれからの2バンドの明るい未来を想像しながら見て欲しい」と締めくくり、公演は幕を開けた。

 最初に登場したのはindigo la End。1曲目は『あの街レコード』の1曲目でもある「夜明けの街でサヨナラを」だ。川谷と後鳥亮介(Ba)が佐藤栄太郎(Dr)のドラムに近寄って煽る場面もあり、仲の良い雰囲気が伝わる。そのままアルバムの曲順通り「名もなきハッピーエンド」へ。後鳥がお決まりの〈ハッピーエンドはあなたの終電次第さ〉で客席を指差す動作も、心なしかいつもより勢いがある。「今日結構長めにやるんで、最後まで楽しんで帰ってください」と川谷が声をかけて始まったのは「billion billion」。ここまでの3曲が収録されている『あの街レコード』のリリース当時、佐藤と後鳥はまだバンドに加入していなかった。しかし、同じ旋律でもベースは後鳥らしい滑らかな響きをもち、間奏のパワフルなドラムはまさに佐藤だから出せる音だ。川谷が「結構久しぶりの曲をやります」と言って始まったのは「染まるまで」。夕焼けのような照明の中、言葉がすっと耳に入ってくる。川谷はインタビューで「昔の曲はギターがかなりメロディアス」と語ったように、長田カーティス(Gt)が奏でるギターは、まさに歌っているかのよう。特に〈最後はこんな風にして〜〉からの堰を切ったようなリフが素晴らしかった。続く「ダビングシーン」は、デビュー当時の演奏との違いを特に感じた一曲。ドラムに合わせ、言葉が跳ねるような歌い方は現メンバー以前にはなかったように思う。新しさを感じると同時に、小規模のライブハウスに立っていた頃に戻ったような、不思議な心地がした。

 「次の曲は、突然自分の前からいなくなった人がいて、それでindigo la End が出来たような、一番ストレートに書いた大切な曲」と紹介し歌ったのは「アリスは突然に」。〈「許せる?」って 聞かれた後すぐに いなくなった〉というアリスとの物語。〈僕らはそう 私もそう アリスもそう 疑っていたんだ〉と、川谷とささみお(Cho)・えつこ(Cho/Key)が交互にコーラスする場面に、indigo la Endは昔から変わらずコーラスを大切にする曲作りをしていることを感じた。

 続くMCで川谷は、2バンドは最近それぞれの世界観ができてきたところであり、「昔の曲をやると違う感じに聞こえる」と話した。その後初披露したのは新曲「小粋なバイバイ」。イントロからシティポップの雰囲気が漂い、デビューアルバムからの流れで聞くと、メロディ、曲展開、演奏全てが進化していることを目の当たりにする。新しさを取り入れながら、indigo la Endらしいバンドサウンドやコーラスとうまくミックスさせている。続けて、青の照明に丸の形のライトが回る中、新曲「結び様」へ。やわらかいベース、包み込むようなコーラスで〈好きにならなきゃよかった〉と歌われ、聴くたびに深みのある一曲だ。新曲二曲共に、自分たちが出している音に「確信」のようなものを感じ、次回作『濡れゆく私小説』がさらに楽しみになった。残り2曲というところで、カラフルなライトの中「夏夜のマジック」へ。今夏のフェスでも多く披露され、TikTokでも話題になるなど、名実共に代表曲となったことを象徴するような、堂々たるステージングだった。

 最後の曲はワンマンなら絶対やらないが「このメンバーでやったらどうなるんだろう」という想いで選んだというインディーズ時代の楽曲、「渚にて幻」。彼らは2016年に同じくSTUDIO COASTで、「渚にて幻 (long ver.)」を披露したのだが、その時の演奏は約9分にわたり髪を振り乱しながらパワフルにプレイする、エモーショナルなものだった。しかし今回は、CD音源に近く、落ち着いて奏でている印象だった。まさにこの落ち着きや、バンドへの自信のようなものが、「『藍色ミュージック』からしてきた新しい方向への挑戦が実を結んだ」と語る『濡れゆく私小説』の制作を終えた、今の彼らの等身大の心境そのもののように感じた。

 続いてゲスの極み乙女。の登場、かと思いきや、上手の二階席から「ハンバーグだよ!」の声が。見ると、赤いハットをかぶった「ハンバーグ師匠(スピードワゴン・井戸田潤)」が登場。年始の『ダウンタウンDX』で、2人とも今年の運勢が48位中1位ということで意気投合し生まれたというハンバーグ師匠のテーマソングを突如初披露した。イントロのジューという音は、川谷が自宅でハンバーグを実際に焼いた音だという。ギターは川谷、ドラムは佐藤、ベースは休日課長という「肉厚」の布陣と聞き、客席からは悲鳴も上がった。

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