SuchmosやSIRUPらに続く? 関西新鋭バンド magenta blue、ネクストブレイクの予感
Suchmosが2016年に発表した「STAY TUNE」以降、ブラックミュージックをベースにしたアーバンなサウンドを愛好する音楽リスナーが増加したように感じる。もちろん、ジャンルとしてのR&Bは日本のヒットソングにもたくさんあるし、昔からブラックミュージックを愛好していた人が多数いたことも間違いない。ただ、今まではそういうジャンルを避けていたとか聴いてこなかった人でも、オシャレなテイストの横揺れサウンドに親しみを持って接するようになった。
冒頭に述べたSuchmosは、最新アルバム『THE ANYMAL』でサウンドの変化を見せたが、横揺れ系のサウンドで魅了するアーティストの活躍はより顕著になってきている。Suchmosのブレイクとリンクする2016年頃から活躍しているNulbarichや雨のパレードはもちろんのこと、最近だと SIRUPや向井太一などもシーンで存在感を示すようになってきている。『SUMMER SONIC』や『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』のような数万人単位の集客を誇る音楽フェスでも、上記のアーティストは多数の観客を動員している。
もちろん、上記で紹介したアーティストを“オシャレ系”や“アーバンミュージック”という言葉でひと括りするのは乱暴な話だし、各アーティストの作品の特徴やライブパフォーマンスを細かく見ていけば、それぞれ違う魅力を持っている。ただ、ここで指摘しておきたいのは、リスナー側の音楽の楽しみ方が変化してきたということである。
少なくとも、音楽フェスにおいては縦にジャンプして盛り上がったり、みんなで一緒に動くことを強いる音楽だったり、サビで感情を爆発させてエモーショナルに盛り上がる音楽が多かったなかで、それとは違う形で魅了させるタイプのアーティストが広く受け入れられ、そういうタイプのアーティストがライブでも集客できるようになった。音楽が生み出すグルーヴに身を任せて、揺れるようにサウンドに陶酔していくような楽しみ方がマイノリティーではなくなったということだ。そういう土壌が肥えたからこそ、King Gnuは大ブレイクを果たすきっかけを掴んだのだろうし、SIRUPや向井太一などが躍進しているのだろう。
だからこそ、考えることがある。では、次にそういったシーンの土壌で頭角を現し、日本の音楽シーンに新たな風を吹かせるのだろうか。その疑問に対するひとつの回答として、この記事では、magenta blue(マジェンタ・ブルー)というバンドの名前を挙げてみたい。
というのも、先日、大阪のなんばHatchで開催された「音都 ON TO vol.5」というイベントに足を運んだとき、magenta blueのライブを観ていると「おっ!」と感じたのだ。オシャレなギターサウンドと、揺れを誘発させるリズムの打ち方。80年代〜90年代のR&Bをベースにしたうえで、ロックやファンク、ブルースを匠みに取り込んだサウンド。ボーカルの声はそんなサウンドと見事に調和していて、色気がありビジュアルや佇まいも独特の雰囲気を醸し出している。ブルーの照明で彩られたステージで、クールにパフォーマンスをする様子は、冒頭で述べたアーバンな世界観と通底するものを感じた。