Saucy Dog、先輩との真剣勝負で提示した“自分らしさ” SUPER BEAVERとの対バンを見て

 Saucy Dogの東名阪ツアー『Two-Man Live「One-Step Tour」』が7月25日、Zepp Diver City (TOKYO)にてファイナルを迎えた。彼らよりキャリアの長いバンドとのツーマン形式で行われたこのツアーには「前に進んでいる先輩たちに食らいついて自分たちも成長したい」という意図があったとのこと。7月12日の大阪BIGCAT公演では04 Limited Sazabysが、7月14日の名古屋ダイアモンドホール公演ではクリープハイプが、そしてこの記事でレポートするZepp Diver City (TOKYO)公演ではSUPER BEAVERがゲストとして招かれた。

 SUPER BEAVERのライブは「27」からスタート。渋谷龍太(Vo)がボーカルのメロディラインの合間に観客へ語り掛けたり、シンガロングを促すこともなく、演奏のみの直球勝負といえるアレンジだ。

 サウシーの石原慎也(Vo/Gt)、せと ゆいか(Dr/Cho)とご飯を食べに行った際、この日のライブについて石原から「俺、バチバチにやりたいんですよ!」と言われたエピソードを紹介し、ステージ上で「受けてたつ!」と宣言した渋谷。「27」の演奏からは、最初からサウシーに対して手加減などしていないこと、(年齢やキャリアに関係なく)いちバンドとしてサウシーに敬意を払っているからこそ真剣勝負に臨んでいることが読み取れた。

 「赤を塗って」という珍しい選曲のあとには、メジャー時代にリリースされた曲「シアワセ」へ。「シアワセ」はバンド史上唯一再録を行った曲で(再録版は2018年リリースのアルバム『歓声前夜』に収録)、つまりそれほど思い入れも強い。柳沢亮太(Gt)は膝から崩れ落ちるようにしてギターを鳴らし、上杉研太(Ba)のベースラインはドラマティックに唄いまくり、藤原“31才”広明(Dr)の力強い連打がバンドをさらに奮い立たせ――といったバンドの演奏には、紆余曲折を経て自分たちらしい音楽への向かい方を獲得するに至った、このバンドの在り方が表れていた。

 これがハイライトと思いきや「秘密」ではシンガロングも起こり、バンドの熱量がもう一段階上がる。サウシーのライブ中のMCでせとが「SUPER BEAVERの好きなところは(観客も含めた)全員でライブしている感じがするところ」と話していたが、観客からの歌声を受けてバンドが何度でも活気づいていく様子にはまさに“全員でライブしている感じ”が表れていた。

 そしてサウシー。メンバー登場直後、3人でドラムセットの周りに集まり拳を合わせながら「サウシードッグ!」と小さく声を出すシーンが微笑ましく、フロアの空気が一気に和らいだ。「お待たせしました、Saucy Dog始めます!」という石原の挨拶は、渋谷が去り際に言った「お待ちかね、お次はSaucy Dogです」を受けてのものか。そう切り返せるほどのゆとりもある。

 「煙」「マザーロード」「コンタクトケース」「いつか」「グッバイ」は石原のボーカル&ギターのみになる場面があり、そんなアレンジから彼らが“歌”を伝えることに重きを置いていることがうかがえた。一方、楽器隊の表現力も光っており、特に「ナイトクロージング」のBメロからは秋澤和貴(Ba)、せとの成長が見える。せとが連続してシンバルを鳴らす箇所はかなり滑らかに(「ナイトクロージング」~「ゴーストバスター」のビートで曲間を繋ぐアレンジもドラムの安定感が増したからこそ可能になったのでは)。また、ベースラインも軽快になり、全体として演奏が小気味よく進むようになった。

 音色や強弱だけでなく、テンポの緩急を効果的に用いた演奏をする彼ら。最新曲「雀ノ欠伸」は、2番に入ったタイミングで4拍子から3拍子に変化+テンポダウンするアレンジになっており、それはこれまでになかった手法だが、このバンドがこれまでライブでやっていたことの発展形ともとれる。また、このアレンジは〈周りの表情や態度なんか 一々気にせんでいいから〉という歌詞に沿ったものであり、 それは“歌を伝える”というバンドの軸がぶれていない証といえるだろう。このライブの前日に、ミニアルバム『ブルーピリオド』を10月2日にリリースすることを発表したサウシー。来たる新作も、彼らの持ち味と新たな挑戦が共存したものになるのではないだろうか。

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