金子厚武の「アーティストの可能性を広げるサポートミュージシャン」

TENDREの存在感とフィッシュマンズの遺伝子ーー都市型フェスでのサポートミュージシャンの活躍

 『CROSSING CARNIVAL』での「フィッシュマンズトリビュート企画」も非常に印象深い。佐藤伸治の没後20年にあたって行われたこの企画の目玉として、コーラスとホーンセクションを含んだ編成のEmeraldに、フィッシュマンズの元メンバーであるHAKASE-SUN、サポートメンバーの木暮晋也を交え、「フィッシュマンズトリビュートセット」を実施。曽我部恵一や崎山蒼志をゲストボーカルとして迎えながら、「いかれたBaby」、「ゆらめきIN THE AIR」、「BABY BLUE」といった名曲たちをカバーする、スペシャルな内容だった。

 そもそもフィッシュマンズというバンドは、サポートメンバーを加えることによって音楽性を伸長させていったバンドであり、今年2月には同じくサポートメンバーが重要な役割を果たすceroをゲストに迎え、主催イベント『闘魂』を20年ぶりに開催したのも記憶に新しい。前述のTENDREはもちろん、「なんてったの」と「ナイトクルージング」をカバーし、見事『CROSSING CARNIVAL』の大トリを務め上げたYogee New Wavesにしても、近年サポートを迎えてライブの完成度を高めているだけに、この日はサポートミュージシャンの存在がいかに重要かを再確認させるような一日でもあった。

 ちなみに、5月にNHKホールで行われたceroのワンマンライブ『別天』には、小西遼がサックス/フルートで参加し、4月に渋谷WWWで行われた網守将平のワンマンライブにはceroのサポートメンバーでもある厚海義朗(Ba)、古川麦(Gt)、角銅真実(Per)が参加と、cero周辺の動向は相変わらず面白い。厚海は曽我部やbonobosらとともに、2004年に発表されたトリビュートアルバム『Sweet Dreams for Fishmans』に参加したGUIROのメンバーでもあるが、フィッシュマンズにとってひとつの節目である今年、GUIROが7月にひさびさの新作『A MEZZANINE』を発表するというのは、なんだか素敵な巡り合わせだ。

■金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『ナタリー』『Real Sound』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』『bounce』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。

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