兵庫慎司の「ロックの余談Z」 第24回

マキシマム ザ ホルモン、なぜ2号店を開店? デビューライブを観て感じたこと

1 ぶっ生き返す
2 包丁・ハサミ・カッター・ナイフ・ドス・キリ
(※「包丁・ハサミ・カッター・ナイフ・ドス・キリ」の正式名称は各単語に×表記)
3 シミ
4 「F」
5 恋のメガラバ

 という5曲の間に私の目と耳に止まったポイント、以下、箇条書きにします。

・合宿のマナー講座でしごかれたため、セキはんによる最初のMC、異常に丁寧な言葉遣い。で、途中で「マナー講座で怒られた」ロックバンドらしいMCに変わる。

・本店ライブでは恒例「恋のおまじない」を「2号店の一味違ったおまじない」にアレンジして決行、腹ペコたちもご唱和。最後の「やったー!」のところをエドはるみで言うところの「グー!」の形にし、協賛企業の日清カップヌードルコッテリ―ナイスをモチーフに、「ナイス!」と叫び会場中が一つになる、というもの。

・このライブを観て「やっぱりホルモンの演奏と比べるとな……」と思った人、いると思う。僕もそう感じたが、「あたりまえじゃん」と、すぐ思い直した。個々のメンバーの演奏スキルの確かさはオーディション時であきらかだし、そもそもセキはん=赤飯とDJ DANGER×DEER=DJ KSUKEというプロの人も入っているわけだが、だからといって組んですぐにいい音が出せるわけじゃない、バンドというものは。しかも比較対象がホルモンって。組んでいきなりそれにひけをとらない音を出せる人なんていない。むしろプロでもコピーするのが難しいあの演奏をよく再現していた、と言っていい。

・DJ DANGER×DEERの音が一番フィーチャーされていたのは「恋のメガラバ」。5曲の中で、もっとも新しい解釈のあるバージョンになっていた。

・セキはんは、ダイスケはんのスクリームとナヲちゃんの女声の両方を担っているし、そもそも自分のキャラを確立しているボーカリストなので、ホルモンをそのままコピーしただけ感はあまりない。だが、最後のMCの長くて熱くてちょっと校長先生入った感じは、見事にダイスケはん節だった。

・途中まで審査に残ったが惜しくもメンバーに選ばれなかった候補者が数名、ライブを盛り上げるべく客席でヒートしまくっていたのが印象的。特に、ホルモンへの思いを泣きながら語って亮君をもらい泣きさせた男・マキシマムザ竜君の姿が目を引きました。

・最後にメンバーが本家ホルモンの4人を呼び込む。そこで本家のみなさんが、お客さんやこのフェスにお礼を言ったり、メンバーをねぎらったりした末に、ライブ活動を再開すること、6月からツアーを行うことを発表する。

 こんなところでしょうか。こんなところでしょうね。で。総じて、これがどんな時間だったのかは、最後に出て来たナヲちゃんのこの言葉が、端的に表していると思う。

「いや、ダメ! (2号店の)顔見たら泣いちゃうわ!」

 そう、めちゃめちゃ感動的なライブだったのだ。『ガチンコ ザ ホルモン』を観て、彼ら彼女らのストーリーを追って来た身にとって、そういうものだった。ここまで辿り着いた彼ら彼女らと完全に気持ちが同化してしまっていて、「よかったねえ!」という祝福の気持ちと、「やったあ!」という達成感が同時に襲ってくるような。特に後者。俺ただYouTube観てただけなのに達成感? と、自分でも不思議になるような。

 逆に言うと、『ガチンコ ザ ホルモン』を観てなくて事情を知らない人にとっては、「やたら盛り上がってたホルモンのコピーバンドのライブ」にしか見えなかったかもしれない。ただ、そんなような「外の人にとってはどうでもいいけど中の人にとっては大事、その落差がものすごくでかい」というマインドは、そもそも、ホルモンにおける重要なポイントのひとつであるように思う。

 亮君パートにヨシムラタクマが選ばれた理由が、このライブを観てよくわかった。彼に決まった時は、正直、ちょっと心配になった。他のメンバーと違ってライブ経験もバンド経験もなさそうだし。歌えるしギター弾けるけど、技術面だけで見るともっとうまい人もいたし。あと何より、メンタルに大きな負担がかかりそうだし。いきなりフェス出るとか大丈夫? 赤の他人と一緒にバンドやるのとか大丈夫? 倒れたり、ステージに立てなくなっちゃったりしない? という。

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