欅坂46、3rdアニラなぜ“笑顔”溢れる公演に? 長濱ねるを写し出す「100年待てば」を軸に考える

 今回の3rdアニラは、その続きのようなライブである。「100年待てば」では、長濱が天使のように宙に浮かび、空から見守る中、メンバー全員が地上で楽しそうに踊るという演出だった。実にシュールな光景だったが、それもどこか長濱の人柄が出ているようで、微笑ましい。平手も素に戻ったような穏やかな表情で踊っていて、気づけば観客もみな笑顔になっていた。平手がバックダンサーを務めるというレアな光景は、欅坂のデビューカウントダウンライブでの「乗り遅れたバス」をはじめ、長濱センターの時にしかほぼ見られない。そのため、「100年待てば」のパフォーマンスを観て、3年間のいろんな感情がこみ上げてきた。

 そしてアンコールのMCで、最初はニコニコしていた長濱が、次第に涙を堪えながら、みんなに感謝の気持ちを伝える。その後の「危なっかしい計画」で、泣きながらパフォーマンスをする長濱の姿が一瞬スクリーンに映ると、観客たちも一斉に号泣していた。そして最終日だけ披露した「W-KEYAKIZAKAの詩」。ひらがなけやきが日向坂となり独立したいま歌うのは、長濱の存在が大きく影響しているように思う。

 長濱が坂道AKBの「国境のない時代」でセンターに抜擢された際、他のメンバーと比べて自分の目力が弱く、表情で上手く伝えきれないと悩んでいた。そんなときに振付師のTAKAHIROから「歌詞を読んでみて。“国境のない時代”なんだから、みんな仲良く、争わなければいいのにと思っている、それってすごく長濱にぴったりじゃないかな」「だから、みんな強い目をしている中で、お前だけ笑顔でもいいんじゃないの?」と言われ、長濱は自分なりのパフォーマンスにしたらいいと思うようになったという。その言葉こそがまさに、欅坂においての長濱の存在意義であり、欅坂のアイドルらしさを守っていたのが彼女だったのだろう。

 今回のアニラは長濱の卒業を全面に出したライブではなかったが、全体を見ると、メンバーの愛らしさを引き出しつつ、二期生を見守るスタンスに、長濱の意思をさり気なく汲み取った粋な演出なのでは? と感じた。「100年待てば」で、欅坂を空から見守り笑顔の光を与えた長濱は、日向坂同様に欅坂にとっても暖かく見守る存在として残り続けることだろう。それを思うと「シンクロニシティ」の歌詞がさらに深みを増す。

 とは言え、長濱は7月まで欅坂で活動し、3rdアニラも5月に日本武道館での東京公演を控えている。長濱が参加するかはまだ不明だが、彼女たちが紆余曲折の末やっと辿り着いた初の武道館公演では、欅坂の本来のクールな姿を押し出したライブになるのか、はたまた大阪公演のように笑顔のセットリストとなるのか、気になるところだ。

(文=本 手)

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