ドラマ『QUEEN』で話題のmilet、ヒットの理由は孤独を肯定する価値観とそれを届けるための歌声

 無名の新人がYouTubeに公開したMVが、短期間で400万回以上再生され話題になっている。ハスキーかつダークな歌声を武器に持つその新人の名はmilet。3月6日、『inside you EP』でデビューしたばかりのシンガーソングライターだ。

milet「inside you」MUSIC VIDEO(先行配信中!竹内結子主演・フジテレビ系ドラマ『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』OPテーマ)

 デビュー作は『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』オープニングテーマ、『JOKER×FACE』(ともにフジテレビ系)のメインテーマ及びエンディング、さらに次作でも映画『バースデー・ワンダーランド』のメインテーマ・挿入歌、イメージソングを担当することが決定。デビュー作の表題曲「inside you」はONE OK ROCKのギター・Toruがプロデュースを手掛けるなど、新人としては異例の大抜擢を成し遂げている。さらに今作は、オリコン週間デジタルアルバムランキング(3月18日付)にて初登場1位を記録し、CD売り上げ枚数とデジタル配信実績をあわせたオリコン週間合算アルバムランキング(3月18日付)では初登場8位を記録。デビュー作にしてTOP10入りを果たしている。

 一見するとタイアップが上手くいった偶然のヒットに見えるかもしれない。しかし彼女の個性を紐とくと、miletは時代に求められたアーティストの1人であり必然的なヒットだったということが見えてきた。

自分の価値観を後押しする音楽が求められる時代

 2010年代前半は、みんなで盛り上がれる音楽が主権を握った時代だった。4つ打ちのダンスビートに乗せ、至るところで発生するツーステップ。隣にいる人が知り合いかどうかなんて関係ない。その場にいる人と一体感を楽しむという動きは、フェスが増えていくのと比例するように広がっていった。

 しかし2010年代後半になると“SNS疲れ”という言葉が生まれたように、繋がることに疲れる風潮が高まっていった。また、YouTubeやInstagramなども“共有するためのもの”というよりも“お気に入りを追い続けるためのもの”に変化。世間は自然と“繋がること”よりも“自分だけのお気に入りを深める”方向へと流れていった。その波はもちろん音楽にもやってきたのだ。

 “自分の価値観を後押ししてくれる音楽”、これが昨今にヒットしている音楽の共通項であるように思う。「コンプレックスは個性」と固定概念を翻すCHAI、己の信念を貫くかっこよさを魅せるKing Gnu、普遍性のなかにドラマを見出すあいみょん。彼らはいずれもマス受けする音楽性でありながら、個人の価値観に寄り添ってくれるアーティストだ。"孤独"を帰るための安らぎの場所として考えるmiletも、そのようなアーティストのひとりと呼べるのではないだろうか。

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