DA PUMP、「桜」は「U.S.A.」のイメージを覆す楽曲に? グループの魅力を改めて解説
〈C‘mon, baby アメリカ ドリームの見方をInspired〉。このフレーズを読んで、メロディが頭に流れなかった人はいないだろう。2018年を代表するヒットソングのひとつ、DA PUMPの「U.S.A.」だ。親指を立てた“いいねダンス”に、考えれば考えるほど意味のわからないリリック、そしてノリノリなユーロビート。キャッチー要素満載の楽曲と共に登場したDA PUMPに、ある者は懐かしさを、ある者は真新しさを覚えた。
そんな彼らは3月6日にニューシングル『桜』をリリース。表題曲の日本語歌詞を特徴としたリリックにしっとりとしたミディアムテンポは、キラーチューンと化した「U.S.A」とは真逆のイメージをいく楽曲だ。「踊れるおじさんじゃなかったんだ」なんて声も聞こえてきそうだが、この「桜」が発売されたからこそDA PUMPの魅力を再確認できるのだと強く断言したい。
ISSAの歌唱力を活かすミディアムテンポ
「U.S.A」でDA PUMPを知った人には、「桜」のミディアムテンポに違和感を覚えるかもしれない。しかし彼らは本来よりこうしたテンポの曲もレパートリーに持つダンス&ボーカルグループなのだ。
2000年にリリースした「if…」は、DA PUMPにとって紛れもよらぬ名曲のひとつだろう。事実この曲で2000年の日本有線大賞では「優先音楽優秀賞」を、日本レコード大賞では「優秀作品賞」を受賞している。
楽曲のポテンシャルが高いことはもちろんだが、特筆すべきは高い歌唱力を持つISSAの存在だ。動画を見ている限りでは難なく歌っているように見えるが、実際にカラオケで歌おうとすると驚くほど難しい。淡々とたたみかけるように歌うメロディ、音を確実に狙い美声を響かせるサビなど、確固たる歌唱力がないと表現しきれないのだ。
これは、新曲の「桜」にも言えることだろう。歌詞を丁寧に刻むメロディに、壮大にのびのびと聴かせるサビ。「if…」の発売から約20年が経とうとしているが、ISSAの歌唱力は劣るどころか進化しているような気すらする。スポットライトの中心にいない時代でも、努力を積み重ねてきた彼だからこそ歌える1曲と言える。
イメージを覆すための桜ソング
また、このタイミングで「桜」をタイトルとした楽曲をリリースした点にも注目したい。
日本を代表する花でありながら春の訪れを知らせる桜は、根強いコンセプトを持つ固有名詞のひとつだ。古くは『万葉集』や『古今和歌集』から桜をフィーチャーした歌は数多く存在し、それはJ-POPにおいても変わらない。そして、他の花に比べて「桜」をタイトルに持つ曲は名曲が多い。
コブクロの「桜」や森山直太朗の「さくら(独唱)」などは、その筆頭と呼ぶことができるだろう。
「桜」をモチーフにした楽曲は、日本人なら誰でも情景を想像することができ、別れや出会いを彷彿させるセンシティブなワードであるからこそ、人々の心に訴える力を持っている。それはDA PUMPがリリースした「桜」も、またしかりだ。「U.S.A」で楽しい曲を届けるグループというイメージがついたからこそ、新曲には多くの人の心に響く1曲が選ばれたのかもしれない。
〈繚乱桜 咲き誇って 宙舞って 散る一切〉
また、この1フレーズには、「U.S.A」のブームを一過性にせず、咲き誇ってやるという彼らの決意が表れているようにも感じる。