BTSの3部門受賞だけではない 『Korean Music Awards』を通じて見える韓国大衆音楽の独自性
近年の韓国のR＆Bはヒップホップとゆるやかにリンクしながら独自の発展を遂げてきた。「Your Home feat.Xin Seha」で「最優秀アールアンドビー＆ソウル曲」に選ばれたSUMINは、王道のR＆Bを押さえつつも、1980年代のシンセポップやシティポップ、EDMなども貪欲に取り入れる新進気鋭の女性アーティスト。少しでも気になった方は、この曲を収めたアルバム『Your Home』を入手してほしい。音の向こうに無限の宇宙を感じさせるサウンドメイクを存分に楽しめるはずだ。彼女と似た志向のJclefが発表した『flaw, flaw』（「最優秀アールアンドビー＆ソウル音盤」受賞）もあわせて聴けば、韓国産R&Bの虜になること間違いなしである。
『KMA』はジャズにもスポットライトを当てる。イ・ソンジは10年以上のキャリアを持つ女性ピアニストで、アルバムをリリースするたびに新しいスタイルに挑戦する韓国ジャズ界のリーダー的存在だ。「最優秀ジャズ＆クロスオーバージャズ音盤」となった『SONG OF APRIL』は、ピアノトリオに弦楽器を加えたリリカルな楽曲が並ぶ意欲作。以前、彼女にインタビューしたときに「私にしかできない音楽をジャズという枠組みを利用して表現したい」と語っていたが、本作でようやくその思いが形になったと言えよう。
以上、注目株をいくつかピックアップしたが、数曲を聴いただけでも韓国の大衆音楽の奥深さを感じられたはずだ。『KMA』の公式サイトでは、歴代の受賞者や楽曲も紹介されている。K-POPのディープな世界への扉を開きたいリスナーは、今すぐにチェックすることをお薦めしたい。
■まつもとたくお
音楽ライター。ニックネームはK-POP番長。『ミュージック・マガジン』や『ジャズ批評』など専門誌を中心に寄稿。ムック『GIRLS K-POP』（シンコー・ミュージック）を監修。K-POP関連の著書・共著もいくつか。LOVE FM『Kore“an”Night』にレギュラーで出演中。
