乃木坂46、結成7年で育んだグループの基調 アート展からクリエイティブの重要性を紐解く

 1月11日に開館した『ソニーミュージック六本木ミュージアム』で、オープニング企画第1弾として、『乃木坂46 Artworks だいたいぜんぶ展』が開催されている。乃木坂46のビジュアルデザインに特化し、グループの作品制作過程で蓄積された膨大な資料の中からセレクトされたアートワークを多数公開する展覧会である。

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 乃木坂46は結成当初から今日まで、CDジャケットや映像作品、衣装など視覚的な表現を高水準で追求してきた。アイドルというジャンルはいくつものベクトルを含んだ総合的な表現スタイルとしてある。乃木坂46はビジュアルデザインにおいてその総合的な特性を十二分に活用することで、今日あるようなグループの基調を育てながら現在に至っている。

 今回の展覧会では、グラフィックデザイン専門誌『MdN』編集長、本信光理氏が全体のディレクションを担当しているが、『MdN』はとりわけ乃木坂46の視覚表現に注目してきたメディアだった。2015年3月号で乃木坂46の1stアルバム『透明な色』のジャケットデザインを取り上げ、続く4月号で68ページにわたって乃木坂46のビジュアルデザインを特集、以後もCDジャケットや映像作品など乃木坂46の視覚表現を継続的に取り上げている。

 その『MdN』誌上においてはしばしば、乃木坂46運営委員会委員長・今野義雄氏の口からグループの表現の鍵となる言葉が語られてきた。

「アイドルの場合、一枚絵にするのが難しい。各メンバーは自分の最高の可愛い顔でとってほしいわけで、スタジオで一人ずつ撮って、ベストテイクを並べてコラージュするのが一番楽なんですよね、本人たちを満足させるためには。でも、乃木坂は一枚絵にこだわってやってきた」(『MdN』2015年4月号)

 引用したコメントは、乃木坂46のCDジャケット制作に関して語られたものだ。さらに、「MdN」2016年12月号では「作品全体の世界観を守るよりも、このメンバーを立てればこっちのメンバーが立たない、という試行錯誤に追われてしまって、ものづくりに多少の成約が生まれてきたりはします」とメンバーの成長に伴う制作の難しさを語りながらも、続けて「そういう時に、何の気兼ねもなくクリエイティブを優先できるかどうか。つまり、作品トータルの世界観を完成させるために、「このカットではあなたは後ろ姿しか映らないけれども、この場面の絵作りとしてそれでいいんだ」とメンバーに対して時には遠慮なく言えるかどうかですよね」と、メンバー単体の写りを整えること以上に、総体として表現する世界観や物語性を重んじる姿勢を説明している。それは乃木坂46そして後続グループの欅坂46のジャケットデザインまで貫かれた、この組織の基本線になっている。

 たとえば乃木坂46の10thシングル『何度目の青空か?』のCDジャケットであれば、初回仕様限定A~C盤および通常盤の4タイプのジャケットを通して、ある同一の瞬間を4つの別々の場所からそれぞれ一枚絵として切り取ってみせるコンセプトをもっている。そこでは、ある刹那の情感を表現することが追求され、個別のメンバーのレベルでは顔さえ確認できないカットが採用されている。このグループがトータルとして何を表現しようとしているのか、基本姿勢がうかがえる例である。

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