黒崎真音はアニソンを“歌い継ぐ”存在に 自身の経験を集約した赤坂ACTシアター公演を観て

 アニソンシンガーとして、今や押しも押されぬ存在となった黒崎真音。現在放送中のTVアニメ『とある魔術の禁書目録III』(TOKYO MXほか)では、昨年リリースの「Gravitation」に引き続き、新曲「ROAR」でオープニングテーマを担当。2019年の活動も好調な滑り出しを見せている。

 そんな黒崎が昨年12月24日、東京・TBS赤坂ACTシアターで開催した『MAON KUROSAKI Christmas live 2018 ~The Gift~』は、彼女の音楽が多くのファンに愛される理由を改めて実感する一夜となった。本稿では、黒崎の表現者としてのスタンスや、キャリア8年目で迎えた新たな挑戦を振り返りつつ、その理由を考えてみたい。

黒崎真音

 はじめに紹介したいのは、彼女の歌声にある感情の機微。これは、アニメ/ゲーム主題歌を立て続けに披露したライブ序盤に象徴された。1曲目に選ばれた『とある魔術の禁書目録II』エンディングテーマ「メモリーズ・ラスト」は、この日の幕開けにふさわしく、会場全体を温かく迎え入れるものに。彼女の歌声も、集まったファンとのひとときに喜びを隠せずにいる“ハッピーオーラ”に満ちたものだった。

 続く『グリザイアの果実』オープニングテーマ「楽園の翼」は、鮮やかなストリングスがアニメの壮大な世界観を引き立てる楽曲。彼女の“慈愛”に満ちた歌声がとても心地よい。ここでは、前曲披露時に比べてマイクを上向けに離して構え、ロングトーンをじっくりと聴かせる姿が印象的だった。そこからのスマホゲーム『Rewrite IgnisMemoria』主題歌「Ignis Memory」は、大切な人との絆を歌った楽曲。前曲とは一変して、ここでは言葉の端々を歯切れよく発音しながらも、ワンフレーズの最終部を低いトーンに運んでいく。楽曲に感じる勇ましさや、主人公の抱く決意が並々ならぬことを表すかのようだった。

 また、同ブロックで印象的だったのが、黒崎の見せた表情の豊かさだ。これは、彼女が歌声に込めた喜怒哀楽とも繋がっていたように思われる。ここで思い返されたのが、13thシングル『Gravitation』リリース時のインタビューだ(参考:黒崎真音が『禁書目録』新OP「Gravitation」で受け取った、偉大な先達からの言葉のバトン)。彼女は以前に参加したボイストレーニングで、表情の変化が歌声の質感に大きく影響すると教授されたとのこと。もしかすると、この教えはライブでも活かされているのかもしれない。

 さらに、その面持ちは時として、各楽曲のタイアップ作品が持つイメージにも通ずるかのようだった。彼女の歌うアニメ/ゲーム主題歌は、劇中の世界観を大いに反映するものだけに、作品全体の“顔”となることが多い。オンエア終了後に、楽曲が歌い続けられるケースも珍しくはないだろう。また、彼女は作詞家としての一面も備えており、制作時には欠かさず原作を読み込んでいる。これまで携わってきたアニメ/ゲーム作品には、特に強い思い入れを寄せているに違いない。だからこそ、黒崎は1人の“役者”としてもキャラクターの心情を演じ、歌い続けられるのだろう。

 それを裏付けるのが、12thシングル『décadence -デカダンス-』リリース時のインタビューだ(参考:黒崎真音が明かす、“転機の1年”と『され竜』EDテーマで見つけた新たな表現)。ここでは「私はアニソンシンガーでありたいので。常にアニメの世界観に寄り添った楽曲を歌い続けていきたい」と語っていた。彼女のアニソンシンガーとしての確固たる姿勢は、ステージで見られる表情の機微にも大きく影響しているのかもしれない。

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