BRIAN SHINSEKAI「三角形のミュージック」で迎えた“大胆な変化” 初披露のステージを見て
自身が作詞作曲&ボーカル、録音、ミックスまでを手掛けるマルチな才能の持ち主であり、今年1月にはリリース日までに収録曲を1曲ずつ公開する手法も話題を呼んだメジャーデビューアルバム『Entrée』を発表したBRIAN SHINSEKAI。彼がアルバム発表以降配信リリースしている楽曲が、新たなモードを感じさせるものになっているのをご存知だろうか。その最新曲「三角形のミュージック」が、10月24日に配信限定でリリースされる。
アルバム『Entrée』にも顕著だったように、BRIAN SHINSEKAIの楽曲の特徴はニューウェイブ、ファンク、ロック、EDM以降のクラブミュージックなどを縦横無尽に横断する影響源の幅広さ。自らが手掛けるトラックや曲ごと/パートごとにプリンスやデヴィッド・ボウイなどの影響を感じさせる引き出しの多いボーカルはひとつのジャンルを挙げて説明することは不可能なほど横断的で、サウンドから歌詞に至るまで、作品を通して古今東西の音楽へのオマージュが次々に花開いていくような雰囲気を持っている。中でも『Entrée』の核になっていたのは、80年代のニューウェイブへの憧れと、EDM以降のクラブミュージックからの影響。そうした時代も音も異なる新旧2つの要素が融合したサウンド面の個性に加えて、歌詞では時代や国を越えて紡がれるような男女の物語が描かれ、様々な音楽要素を手に意識の流れを追っていく独特の構成は、まるでマルセル・プルースト『失われた時を求めて』やジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』といった文学作品を連想させるようだった。
そうした活動を経て、2018年6月にはアルバム以降の第一弾シングル「Solace」を配信リリース。この楽曲はベルリン/アムステルダムを拠点に活動するLeo Melcherts Jrとの共同アレンジで、これまでも見せていた独特の余韻をさらにディープに追求。トラップ由来の細かいハイハットを生かしたビート、楽曲の根幹をなすベース、そしてチルアウト的な要素が一体となったチルトラップ系のサウンドにアプローチしていた。『Entrée』の収録曲とは大幅に異なる、大胆にベースミュージックへと接近したプロダクションと、懐かしさや切なさなどが混然一体となったファルセットには、初期のジェイムス・ブレイクやトロイ・シヴァンらに通じる雰囲気もあり、続いて7月にはLeo Melcherts Jrによる「Solace(Leoji Remix)」も公開。BRIAN SHINSEKAIの新たな興味を感じさせる展開が続いていた。そして、「Solace」に続く「三角形のミュージック」で、彼はまたもや大胆な変化を迎えているようだ。
今回の「三角形のミュージック」は、一言でたとえるならマイケル・ジャクソンやブルーノ・マーズらを連想させるパーティー感全開の80’s風ディスコ/ファンク。同時に筒美京平作品などにも通じる日本特有のディスコ歌謡的な要素も感じられ、これまでの耽美な音楽性とは大きく異なる、華やかで突き抜けたサウンドになっている。そのうえで、プロダクション自体は昨今のモダンなクラブミュージックの延長線上にあり、過去の音楽要素を最新のプロダクションを通してポップミュージックへと変換する彼らしさは健在だ。また、MVでは80年代の洋画を思わせるオマージュ満載の映像の中で、現実と妄想の境目がつかなくなった男を自身で熱演し、楽曲に彼らしい物語性や余韻を追加。「Solace」に続いて、彼の音楽が様々な要素を取り入れてアップデートされていることが伝わる楽曲になっている。
また、『Entrée』ではリリースまでに1曲ずつ段階的に収録曲を発表してアルバムの全貌を徐々に明らかにするというユニークな方式を取っていたが、今回の「三角形のミュージック」では、ライブで楽曲を初解禁するという試みが行なわれている。この曲は、彼がオープニングアクトとして出演した、愛知県蒲郡市のラグーナビーチでの『AirAsia presents メ~テレ MUSIC WAVE「SUNNY TRAIN REVUE ~テレビがフェス作っちゃいました~」』にて初披露。BOYS AND MEN、GRANRODEO、ゴールデンボンバー、私立恵比寿中学、気志團、超特急、BiSHなどが出演したこのフェスは、台風の影響で当日の天気が荒れ、観客もステージ上のミュージシャンも、激しい雨に打たれる中でのライブとなった。しかし、だからこそ「三角形のミュージック」の魅力がより伝わるようなライブにもなっていた。
この日、DJをバックに据えてステージに現われたBRIAN SHINSEKAIは、後に公開された「三角形のミュージック」のMVでも身に着けているハットをかぶったスタイリッシュな出で立ち。早速初披露となる「三角形のミュージック」のイントロが鳴りはじめると、ミラーボール輝くディスコサウンドにフレンチハウスなどを髣髴とさせるビートを加えた華やかなグルーブが広がっていく。そんな音につられてか、彼自身のパフォーマンスもポップスター然とした雰囲気で、途中MCでは「伝説的なフェスってだいたい雨なんですよね」「晴れの日に負けないぐらい、最高の一日にしましょう!!」と語りかけるなど、目の前の観客と正面切って向き合うような姿も印象的だった。2曲目「東京ラビリンス ft. フルカワユタカ」では冒頭にDJのスクラッチを挟んで、ファンキーなギターの音色を合図にイントロのブラスパートがスタートし、間奏では観客にクラップを促すなどライブならではのやり取りも加えてさらに盛り上げていく。そして最後に披露した「ルーシー・キャント・ダンス」では観客とコール&レスポンスしながらクライマックスへ。全3曲ながら、最初から最後まですべてのエネルギーを出しきるような、悪天候をモノともしない熱演を繰り広げた。