小野島大の新譜キュレーション 第18回
Tim HeckerからDisclosureまで 小野島大が選ぶエレクトロニックな新譜の傑作/佳作
UKダンス・ミュージックの天才兄弟Disclosureが今年に入ってシングルを連発しています。
いずれもR&B/ブラック・ミュージックやディスコ〜ダンスミュージックのルーツに遡っていくようなオールドスクールな素材/手法を、彼らなりのモダンで最高度に洗練されたガラージ〜ハウスミュージックとして再定義していこうという意思が感じられます。近々登場するであろうニューアルバムがこの一連のシングルで占えるかどうかはわかりませんが、これはEDMを筆頭とする現在のダンスミュージックの潮流へのエレガントな抵抗、彼らなりの反時代宣言と受け取りました。
この連載でも何度か紹介しているLAのビートメイカー、ウィル・ウィーゼンフェルドは昨年バス(Baths)名義で素晴らしいアルバムをリリースしましたが、今度は別名義ジオティック(Geotic)で新作『Traversa』〈Ghostly International / Tugboat Records〉をリリース。「バスはアクティブなリスニングで、ジオティックはパッシブなリスニングである」と本人は説明していますが、ゆったりした四つ打ちとアンビエントでドリーミーなシンセをフィーチャーしたエレガントなミニマルハウスは素晴らしいの一言。展開。美しく漂うようなサウンドは、いつまでも聴いていたいと思わせます。22日からはバス、ジオティックでそれぞれの名義での来日ツアーがスタートする予定。そちらも楽しみです。
■小野島大
音楽評論家。 『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』『CDジャーナル』などに執筆。Real Soundにて新譜キュレーション記事を連載中。facebook/Twitter