SEKAI NO OWARI、なぜ米倉涼子主演ドラマ『リーガルV』主題歌に? 世代超えたバンドへの進化

 SEKAI NO OWARIは2011年にメジャーデビューした際、名前をローマ字表記に改めたが、この年は東日本大震災のあった年だ。思春期に誰もが考える甘美な破滅願望の依代(よりしろ)だったはずの「世界の終わり」は、大地震や原発事故が実際に起きたことで、生々しい現実の問題として、私達の前に姿を現れた。そういう現実と直面した時、より普遍的で万人が共有できる前向きで優しい価値観を提示する方向に、SEKAI NO OWARIは舵を切ったのだろう。

 その中核となっているのが、彼らの曲の根底にあったファンタジーというモチーフである。しかしその描かれ方は、少年の鬱屈した心象風景的なものから、もっと開かれたものへと変化していく。それはもっと万人が楽しむことができるアミューズメントパーク的なものだ。

 SEKAI NO OWARIはもともと、中高生に人気の高かったバンドであったが、その反面、当初は大人世代からの支持を得がたく、メジャーデビュー以降は中二病的なバンドと見られる向きもあった。しかし、そこで表現されていたのは、セカイ系的な思春期の鬱屈ではなく、異世界ファンタジーの世界を仲間たちと冒険したいというRPG(ロールプレイングゲーム)的なものである。それは「Dragon Night」などのMVに強く現れており、音楽性もバンドサウンドから大きく脱却した豪華絢爛なものへと変わっていった。

 だからこそ、彼らの表現は、世代を超えた普遍的なものとなったのだろう。それを踏まえれば、映画やドラマのタイアップが増えていったのは必然であり、『リーガルV』に起用されたことも、彼らの実績に対する当然の評価だと言えよう。

 最後に、「イルミネーション」が興味深いのは、配信によるリリースだということだ。星野源が連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK総合)の主題歌「アイデア」を配信限定でリリースしたことが記憶に新しいが、こうしてテレビドラマとのタイアップ曲の配信リリースが続いているのを見ると、いよいよ日本も、CDの時代が終わり、配信メインの時代に変わりつつあるのだと実感する。そんな新しい時代の変わり目と、SEKAI NO OWARIがどう向き合うのかにも、注目している。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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