井上陽水、松任谷由実……大物アーティストのサブスク解禁が音楽シーンに与えるメリットは?

 一方で、ジェイ氏は、昨今の大物アーティストの楽曲解禁の動きに対し「解禁依存」という言葉を使い、日本におけるサブスクの問題点を次のように指摘する。

「よく海外の人から日本人はジャンルで音楽を聞くよりも、アーティストにフォーカスした聞き方が多いということを言われます。そういった特性があるゆえか“解禁すること”にサービス側もレーベル側もやや依存していて、サブスク本来の持ち味を生かしきれていないような印象を受けるんです。現状のやり方では発売日にCDを目立つように並べるのとあまり変わらない。本当の意味でのアーティストやリスナーの利益を考えれば、解禁時にリーチする層を広げる複合的なプロモーション、解禁以降どう曲を届けるかなど、工夫できることはまだまだあるはず。特にキャリアが長ければ楽曲の種類も豊富なため、メッセージやテーマ、季節やイベントなど日本人によりフィットするプレイリストを作るなど、より多くのリスナーを巻き込む方法が増えることに期待したいです」

 J-POPの隆盛~全盛期に活躍したアーティストたちの楽曲の中には、今もなお多くのリスナーに愛され続ける名曲が多い。そういった楽曲に誰もが簡単にアクセスできることにより、それぞれのアーティスト・楽曲への再評価が進むなどのメリットがある一方、ユーザー特性に合ったレコメンデーションを丁寧に作り込んでいくことが、サブスク、さらには音楽シーン全体を盛り上げていくために求められる今後の課題なのかもしれない。

(文=久蔵千恵)

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