マイヘア 椎木知仁、Hump Back 林 萌々子、FINLANDS 塩入冬湖…バンドとソロの相互作用

林萌々子(Hump Back)

林 萌々子 - 思春期 (Official Video)

 ものすごい数のライブをやっているバンドのボーカリストであり、弾き語りを主としたソロ活動を行っている――という2点において椎木と共通しているのが、林萌々子(Hump Back)だ。Hump Backには、メンバーの脱退に伴い、林一人で活動をしていた時期がある。そうして“バンド”を守り続けていた林の芯の強さ、何もかも上手く運ぶわけではない日常を否定することのない姿勢が、彼女の歌う歌には表れているのだ。また、それは歌詞にも反映されている。「夢」や「青春」をテーマにしつつも、一人称の「僕」の視線は常に物事の終わりの方に向いており、それはバンドの曲でも弾き語りの曲でも同様なのだ。

 そんななか、今年6月にHump Backがリリースした1stシングル『拝啓、少年よ』は伝える「相手」が明確に想定された曲が多く、これまでの作品とは異なる温度感のものだった。今後もこの路線が続くかどうかは分からないが、仮にそうなった場合、林個人による弾き語りの方はよりパーソナルな表現になっていく可能性もある。Hump Backの快進撃とともに、バンドと弾き語りのバランス感は変わっていくのだろうか、それとも変わらないままなのか。今後の動向に注目だ。

塩入冬湖(FINLANDS)

塩入冬湖「highland」Music Video

 Hump Back同様、“次世代ガールズバンド”として注目を集めているFINLANDSのボーカル・塩入冬湖もまたソロ活動を行っている。最新アルバム作『BI』も、昨年リリースのミニアルバム『LOVE』にしてもそうだが、ここ最近のFINLANDSはその作品のテーマをそのままタイトルに据えたような、コンセプチュアルな作品が多かった。一方、ソロ音源に関しては、もう少しリラックスしたテンションであるような印象。全体的にサウンドも柔らかく、それにより、塩入のボーカルを存分に堪能することできるのが嬉しいポイントだ。

 塩入の歌は、語尾の跳ね方、高音の張り上げ方に独特の癖がある。その時の声はフィンガーノイズに近い音色であり、彼女の歌声がアコースティックギターと調和して聴こえるのは、もしかしたらそのためなのかもしれない。因みにYouTubeでは、彼女らの所属レーベルが「yellowboost」(『BI』収録曲)のMV(バンド音源)をアップしているほか、TOKYO FM『FESTIVAL OUT』公式チャンネルでは、塩入が同曲を弾き語りする映像が公開されている。ぜひ両者を聴き比べて、その違いを楽しんでみてほしい。

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

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