AKLO×ZORN『A to Z TOUR 2018』東京公演レポート
AKLO×ZORNのリミックスに感じたヒップホップ独自の面白さ 『A to Z TOUR 2018』東京公演
そもそもリミックスとは、ダンスミュージックなどでも用いられる制作手法のひとつ。既存曲のBPMやメロディにアレンジを加え、雰囲気の異なる楽曲に仕上げることだ。しかし、ヒップホップでは原曲のトラックをそのままに、新たなアーティストを客演に迎え、彼らが新規にリリックを書き添えるのが主流。原曲に対するアナザーストーリーの展開や、ラッパー同士の交流を目的に制作されるのは、ヒップホップならではだ。後者の一例には、ZORNの<昭和レコード>移籍時に発表され、この日も披露された「最ッ低のMC (2014 Showa Remix)」などが挙げられる。
しかし、本稿では、現行ラップシーンへのスタンスを歌う「RGTO」に注目したい。同楽曲でAKLOは〈「ドープな Beats?」I Got It / 「Hot な Verse?」Like タイカレー〉と、一問一答形式でラッパーたる自身のスキルを誇示。最後には〈何か足りない物は他にないかね?〉とそれらを強く撥ね退ける。それと一変して、客演で参加したZORNは〈HIP HOPシーンの今? / 人としのぎ合う前に鏡を見な / 自分自身とインファイト〉と、シーンに対するアンサーを提示。中盤には〈お家のローン?もちろん35年〉という、ファンならお馴染みの住宅ローンネタのパンチライン、そしてラストヴァースでは〈バイバイキン バースがアンパンチ〉と、育児に精を出す彼らしい言葉選びで楽しませる。日常生活や人生背景、そこからひらめく言葉を取捨選択する感覚と、自身の得意なフロウ。以上の要素は各ラッパーで様々だが、それらがリミックスとしてうまく調和するからこそ、「RGTO」や「Backbone」と同じく、原曲にはない高揚感を味わうことができるのだ。
楽曲ごとのテーマに対して、それぞれのラッパーが織りなす多様な世界観や、彼らのキャラクターにマッチした言葉選びを楽しめるのが、リミックスナンバーを耳にする醍醐味だ。また「Backbone (Remix)」では、原曲を歌うZORN、般若やNORIKIYOとは異なり、AKLOはリズムを崩したフロウを見せる。J-POPなどと比較して、その時々での歌い回しの流行が楽曲に強く反映されるのも、ヒップホップの魅力であり聴きどころだろう。
終盤には、こちらも今回のツアーのために共同制作された「FUEGO」と「Walk This Way」を歌唱。「FUEGO」は、BACHLOGICによる硬質なトラップビートの楽曲。一方の「Walk This Way」は、dubby bunnyのアコースティックな音色が非常に映える作品だ。普段はトラップサウンドを好むAKLOが、アコースティックなトラックに乗るのはとても珍しく、今回のツアーなくしてはこのような機会もなかったであろう。
ソロのみならず、リミックスナンバーなどをキックしたコラボアクトからも、ヒップホップの独自な面白さを感じられた『A to Z TOUR 2018』。終演前には、ツアーの追加公演も発表された。公演会場や開催時期などは未定だが、この夏を通じて全国を巻き込んだ“熱量”を、再び感じられるライブになるだろう。AKLOとZORNによる、“最初から最後まで”クライマックスなステージが、今からとても待ち遠しい。
(取材・文=青木皓太/写真=@kenji.87)
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