3rdシングル『理解者』インタビュー
デジタル声優アイドル 22/7 西條和・白沢かなえ・帆風千春が語る、“キャラクターになりきる”重要性
秋元康氏がアニプレックス、ソニー・ミュージックレコーズとタッグを組み、総合プロデュースするデジタル声優アイドル・22/7が、8月22日に3rdシングル『理解者』をリリースした。同作は前回に引き続いてMVもモーションキャプチャで撮影され、渋谷を舞台に思春期の複雑な感情が描かれた楽曲となっている。
今回、リアルサウンドでは西條和、白沢かなえ、帆風千春の3人にインタビューを行い、新たにスタートした冠番組 『22/7 計算中』(TOKYO-MXほか)や、最新作、リーダーに就任した帆風の近況についてなど、話は多岐に渡った。(編集部)
「みんなを支えられるリーダーになりたい」(帆風)
ーーニューシングルのお話を聞く前に、前作の2ndシングル『シャンプーの匂いがした』リリース以降もグループとしてさまざまな動きがあったので、その中で印象深い活動や出来事を教えていただけますか?
帆風千春(以下、帆風):『シャンプーの匂いがした』以降はキャラクターとしての活動が増えた印象があります。その楽曲を初披露したディファ有明でのイベント(2018年2月のワンマンライブ『22/7 割り切れないライブ〜シャンプーの匂いがした〜』)でキャラクターとしてMCを行ったり、7月から始まったTVレギュラー番組(『22/7 計算中』(TOKYO MXほか)もキャラクターとして出演させていただいてるので、自分が演じてるキャラクターのことを考えて過ごす時間がすごく増えたんです。TV番組はモーションキャプチャを使って収録してるので、私たちの立ち振る舞いから言動まですべてキャラクターとしてのものになってしまうんですよ。だから“演じる”というよりも“自分がキャラクターになりきる”ところまできてしまった感じはあります(笑)。
西條和(以下、西條):それに『シャンプーの匂いがした』をリリースしてからは、外部のイベントに出演させていただく機会が増えたんです。私たちは“声優アイドル”として活動してるので、アイドルさんが集まるイベントと、声優さんが出演するイベントのどちらにも出させていただくんですけど、それぞれでお客さんの層とかノリ方が違うんですよ。個人的には、声優さんが多いイベントのほうが、私たちと一緒に声を出して盛り上がってくださる方が多い印象でした。
白沢かなえ(以下、白沢):私がいちばん印象に残ってるのは、YouTubeにアップされているキャラクターPV(「あの日の彼女たち」)のアフレコなんです。活動を始めた頃はMVぐらいしか自分のキャラクターを演じる機会がなかったんですけど、キャラクターPVでは私たちが初めてアニメに声をあてることになったので、自分たちの声でキャラクターの魅力を表現できるし、私たちがキャラを演じて伝えなくてはいけない責任感をより強く感じた瞬間になりました。
ーー声優としての自覚がさらに深まったわけですね。そんななか、帆風さんは先日にグループのリーダーに就任されて。
帆風:はい、取材でそのお話になったときぐらいしか実感が沸かないんですけど(笑)。意気込みとしては、22/7にはいろんな得意ジャンルを持ったメンバーがいて、例えばダンスのときはなごみん(西條)や(天城)サリーちゃん、パフォーマンス全体のことではかなえる(白沢)みたいに、みんなが場面場面で引っ張っていってくれてるので、私はみんなを支えられるリーダーになりたいんです。私もいつかは何か得意なことでみんなを引っ張っていきたいんですけどね。
白沢:私から見ると、ちはるん(帆風)は全部を引っ張ってくれてるので、いま話を聞きながら自分自身と周りからの認識は全然違うんだなって思いました(笑)。私たちのメンバーには自由な子が多くて、それぞれで動いてることがあるんですけど、そういうときに「集まって話し合おうよ」と率先して意見をまとめてくれるのは、いつもちはるんなんです。
西條:話し合いのときに、みんなそれぞれの意見を出し合うんですけど、自分と反対の意見が出たときにどうしていいのかわからないときがあるんです。そんなときにちはるんは、両方の意見を汲み取って「じゃあこういうのはどう?」って新しい提案をしてくれるので、本当にありがたいなと思ってて。
ーー二人とも帆風さんのリーダーぶりを大絶賛ですよ。
帆風:そんなそんな! なんか照れてしまって、二人の目を見れないです(笑)。でも、もっと精進しようと思います。
ーーそれと先ほど話題にも上がった初のTVレギュラー番組『22/7 計算中』ですが、みなさんキャラクターとして出演されていることもあって、いつもとは違う苦労や発見もあるのでは?
帆風:声だけではなく、実際に動いてキャラクターを演じることになるので、普段の自分の動きにも注意しなくてはいけないんです。例えば、私は普段猫背になりがちなんですけど、私の演じる佐藤麗華ちゃんはマジメな優等生なので、「普段から人に見られることを意識してるだろうから姿勢はいいだろうな」と思うと、番組の収録中はずっと姿勢を意識するようになりまして。普段の自分とのギャップを埋めていく作業が大変ですね。
西條:ロケの場合は、画面に自分自身は映らなくて、目線のカメラだけで実況しなくてはならないんです。このあいだは絶叫アトラクションに乗ったんですけど、私は「怖いな」と感じても自分の中で完結して言葉を発しないことが多いので、目線カメラの映像だけだと「怖い」と感じてる反応をわかってもらえなくて。自分的には、いま自分が何を感じてるかをちゃんと言葉にしないといけないことが大変でした……というか、まだ出来てないです(笑)。
ーーたしかに絶叫アトラクションのロケのときは沈黙が多かったので、画面的には何も変化がないシュールな映像になってました(笑)。
西條:ただ淡々としてる人みたいになってましたけど、私はすごく怖かったんです(笑)。ただ、私の演じる滝川みうちゃんはあまり怖がらない設定だったので、あのときは言葉を発しないことで上手くいきました(笑)。
白沢:それと私たち自身の存在がキャラクターとして認識されるので、スタッフさんからもキャラクターの名前で呼ばれるんですよ。その非日常感は楽しいです。でも、私の演じる丸山あかねちゃんはすごく頭が良い設定なので、しゃべるときは頭をフル回転させて、自分が知ってる難しい言い回しに変換して言葉を発さなくてはいけないんです。それが出来なくてどもってしまうこともあって、そこは課題ですね。
帆風:私も会話の中で何か思いついたとしても、そこで「佐藤麗華ちゃんならどうしゃべるだろう?」と一回考えなくちゃいけないから、テンポが遅れたり、しゃべるのを止めてしまうこともあるんです。キャラクターによっても間合いが変わってきますし、難しい点は多いですね。
西條:私はみうちゃんと似てるところが多いので、わりと近い感じでやらせていただいてますけど、本当のメンバー同士であったエピソードとか自分が経験したことを安易に話せないんですよ。キャラクターを演じながらそれを話すと、みうちゃんの経験したことになってしまうので。だから過去の話はタブーかもしれないです(笑)。
ーーそのように“デジタル声優アイドルグループ”としての新しい挑戦を行うなか、3rdシングル「理解者」の表題曲は力強い曲調で、グループとしての新たな一面を感じさせる楽曲になりました。楽曲をいただいたときの印象、歌ってみた感想はいかがでしたか?
帆風:これまで表題曲として歌ってきた曲の中では、いちばん迫力があってカッコいい曲だと思います。歌詞も人それぞれでイメージしやすかったり、共感できるフレーズがあると思うので、具体的に誰かに語りかけるようなイメージで歌うことができました。これはダンスの振りがついてから感じたことなんですけど、間奏明けの最後のサビに入るところで、なごみんがグルグルと回って、私がそれをパッと引き止めるところがあるんですよ。その部分の歌詞が〈扉を閉めないでバタンと閉めないで〉で、なごみんは本当にどこかに行ってしまいそうな雰囲気があるので(笑)、なごみんに語りかけるように気持ちを込めて歌えるんです。
西條:私はこの曲を駅で初めて聴いたんですけど、歌詞が最初から最後まで共感できるところばかりで、本当に息ができなくなるぐらい苦しくなったんです。人間なら誰もが持ってるワガママなところが細かく書かれてて、特に〈一人きりでは生きられないって わかっているのに憂鬱なんだ〉とかは、私自身にもそういう部分があるので苦しく感じて。でも、その分だけパワーを込めて歌える曲です。
ーー西條さんは曲中に挿入されるセリフのパートも担当されてますしね。
西條:あの部分はレコーディングでも何回も録り直したんです。1番のセリフは滝川みうちゃん、2番は(花川芽衣が演じる)斎藤ニコルちゃんが担当してて、私が言った言葉に対して応答してる感じになってるんですけど、私自身がみうちゃんの〈理解者〉になりたいという気持ちもひっくるめて、かなり自分の気持ちも入れて演じました。
白沢:私はこの曲を初めて聴いたとき、メッセージ性が強すぎて、一度聴いただけでは理解することができなかったんですよ。これまでの楽曲も聴く人によって解釈が違うことが多かったんですけど、今回の楽曲もそういう部分が強いので、複雑さが私たちの曲の魅力なんだなと思いました。歌詞も〈自分のこと殺してまで〉と強い言葉で書かれているのに、〈孤独は嫌だ〉という弱い気持ちも見せているギャップがあって、その複雑さと曲自体のカッコよさをパフォーマンスでも表現できたらと思っています。
ーー先ほど「歌詞に共感できるところが多い」というお話も出ましたけど、みなさんがそれぞれ自分の心情とマッチする歌詞のフレーズはありますか?
帆風:私はいちばん最後の〈いつの日にか気付くだろう 背中向けたのが 唯一の理解者〉という歌詞ですね。自分にとっての本当の理解者はいつもそばにいて声をかけてくれる人だと思ってたんですけど、この歌詞を見て、本当の理解者はいなくなったときに気づけるんだろうなと思って。私も物事が終わってから気づくということがあって、後悔するときは大体「あのときああしておけばよかった……」と思うので。
西條:私は〈自分のこと殺してまで 他人(ひと)を求めてない〉というところです。私は昔から他人にどう思われたいかを考えて行動することが苦手で、自分を偽って誰かに好かれるぐらいなら、いまの自分のままで嫌われたほうがいいと思うぐらいなんです(笑)。
白沢:私もなごみんと似てて、〈心のカーテン開いて(開いて) 目を細め生きるより 暗闇で息を潜める 僕は孤独が好きだ〉のところがすごく共感できます。私はインドア派なので、無理をして周りに合わせて生きるよりも、家の中とか自分の安心できるところでひとりで生きる感じが似てるなと思うんです。
ーーインドア派とのことですが、普段は家で何をされてるのですか?
白沢:何もしてないです(笑)。ボーッとしてることが多くて、普通にベッドでゴロンとしてるのが好きなんです。あとは料理を作ることも多くて、それこそ“食べるために料理する”というよりも“料理するために食べる”ぐらい、私にとっては料理が第一目的としてあるんです(笑)。料理をしてるときは自分にも集中できますし、周りに流されず自分の感性でいろいろできるんですよね。