夜の本気ダンスが生み出した“ボーダーのない熱狂” 岡崎体育、DATSも出演した自主企画を見て
7月24日、東京キネマ倶楽部にて、夜の本気ダンスの自主企画『O-BAN-DOSS』が開催された。この『O-BAN-DOSS』は、彼らが2014年より開催してきた対バンイベントで、今回出演したのはDATS、岡崎体育、そして夜の本気ダンスの3組。現行する海外のメインストリームポップのエッセンスも昇華した、洗練されたサウンドをエモーショナルにバンドで鳴らすDATS。MacBookを傍らに、たったひとりでステージに立ち、踊らせたり、笑わせたり、とにかく“アゲる”ことに一心不乱に突っ込んでいくエンターテインメント性溢れるステージを展開する岡崎体育。そして、純然たるガレージロックバンド然とした佇まいで、「ギターロック×ダンス=?」という問いの答えを独自に拡張させ続けている夜の本気ダンス。この日揃った3組の独自性を考えてみれば、まさに異種格闘技戦とでもいうべきメンツである。
しかし結果として、この夜は、異種格闘技戦といえどもピリピリしたムードはなく、とても幸福度の高い約3時間のライブだった。岡崎体育だけは若干、バンドマンに対する怨念をまき散らしていたが……まぁ、そこはご愛嬌。DATSも、岡崎体育も、夜の本気ダンスも、すべてのアーティストがオーディエンスを自分たちの世界に巻き込むことのできるパフォーマンス力を持っていたし、なにより、キネマ倶楽部に集まった誰もが一切排他的ではなく、会場全体に「とにかく踊ろうぜ!」というムードが充満していたところがよかった。ボーダーはなく、ひとえに熱狂がある……そんな空間だった。
トップバッターを飾ったDATSは、リリカルかつダンサブルなサウンドに乗せて、ハンドクラップやコール&レスポンスを先導するなど、アップリフティングなパフォーマンスを披露。「DATSはお洒落な音楽をやっているいけ好かないヤツらだと思われがちだけど、そうじゃないって、この汗を見たらわかってもらえると思います!」とMONJOE(Vo/Syn)はMCで言っていたが、まさに彼らのバンドとしての豊かな人間味、生々しさが伝わってくる演奏だった。続く、夜の本気ダンスと出身が一緒(京都府)の岡崎体育は、自身のパーソナリティをダンス、歌、ラップ……と、様々な方法論に接続しながら、エキセントリックなパフォーマンスでオーディエンスを圧倒。私は2階から観ていのだが、オーディエンスがジャンプするたびに足場が揺れまくって、ちょっと怖いくらいだった。
そんな2組に続き登場したこの日のトリ、夜の本気ダンス。ライブは去年発表された2ndアルバム『INTELLIGENCE』と同じく、彼らの真骨頂というべき獰猛なダンスチューン「Call out」からスタートした。2曲目の「Without You」では、鋭利な導入部から切なさの宿るサビへと展開させていき、ただ“踊らせる”だけではない、体だけでなく心も突き動かしてみせるバンドの表現力の豊かさを見せつける。続く「Can‘t You See!!!」では、躍動するトライバルビートと鋭利なギターカッティング、そしてハンドマイクで歌う米田貴紀(Vo/Gt)の姿が、バンドの獣のような野性味を、これでもか! と言うぐらいに引き立たせてみせる。さらに、続いて演奏された新曲「Magical Feelin’」は、かつてないほどにバンドのポップセンスが際立った1曲。その清涼感&覚醒感の宿ったメロディで、バンドが新たなフェーズに入ったことを証明して見せる。冒頭の4曲で、夜の本気ダンスというバンドの現在地、そしてその“うま味”を濃縮して提示してくるような、見事にデザインされたセットリストだ。
それ以降も、「Japanese Style」の後半部分では、歌なしのドープなファンクを長尺で展開したり、彼らの重要なルーツのひとつ、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのカバー「N.G.S」では、原曲よりテンポを落とし、どっしりとした空間的なアンサンブルで聴かせるなど、豊かな音楽素養が反映された演奏を披露していく。