連載「Signal to Real Noise」第一回:Attractions
福岡から世界へ、Attractionsが考える“アジアで通用するということ”
Spotifyが注目する、ニューカマー発掘プレイリスト『Early Noise Japan 2018』と、リアルサウンドのコラボ企画「Signal to Real Noise」が、連載企画としてスタートする。同連載では、プレイリストでピックアップされた“才能の原石”たちへ、手練の音楽評論家がその音楽遍歴や制作手法などについて取材するというものだ。記念すべき第一回は、小野島大氏による、福岡から世界を目指すバンド・Attractionsへのインタビューをお届けする。(編集部)
(※インタビューはMassiveeffectの脱退前に行われたもの)
「ただのロックバンドでは終わりたくない」
Attractions(アトラクションズ)は、福岡出身の5人組。メンバーはTARO(Vo)、TAKE(Gt)、JUN(Ba)、AKIRA(Dr)、Massiveefect(Syn・取材時)だ。同じバンドをやっていたTARO、TAKE、JUNの3人が、AKIRAとMassiveefectを誘い、2016年にAttractionsを結成した。
2017年に福岡のアパレルショップBINGOBONGOが設立した新レーベル<GIMMICK-MAGIC>からEP『Attractions』でデビュー。今年になって新曲「Leilah」をリリースした。皆川壮一郎による「Knock Away」のMVは再生回数5万回を超えるヒットとなって、耳の早いリスナーの間では大きな話題になっている。去る6月に行われた3回目の東京公演では、早くも熱心なファンがついているようだった。UKロックやシティポップスやR&Bやファンクなど多彩な音楽的背景をうかがわせる楽曲も演奏も歌もセンスがあり、豊かな将来を感じさせるし、アジアのバンドとしての自覚を感じさせる発言も頼もしい。バンドは現在1stアルバムの制作準備中だ。(小野島大)
ーー昨日(6月22日)のライブを拝見させていただいたんですが、いい意味で音源とはちょっと違う印象でした。音源はすごく洗練されていて完成度が高いと思ったんですが、ライブはもっと熱っぽい感じで。
TARO:そうですね。かなり緊張してました。みんな気合いも入ってたので。
ーー東京のライブは3回目ということですが、お客さんの反応とか自分たちの演奏は変わってきました?
TAKE:前回の東京は3カ月ぐらい前だったんですけど、その間に新曲も配信でリリースして。曲を事前に認知してきてくれるお客さんが増えてきたと思います。
JUN:Spotifyで曲を聴いて来てくれる方もいらっしゃるみたいで。何も知らない人ばかりという状態よりはやりやすい感じでした。回を重ねていくごとにだんだん受け入れてもらえてるのかなと。
AKIRA:福岡在住でやってますけど、東京にもフットワーク軽くどんどん発信していきたいと思ってるんで。東京だけじゃなく地方のお客さんも増やしていきたいですね。
Massiveefect:口ずさんでくれてるお客さんも結構いて。東京でのライブは3回目なんですけど、ストリーミングのおかげでそれくらい楽しんでくれるようになってるんだなって感じました。
ーー今回配信で新曲「Leilah」を出されたばかりですが、まずはバンドの成り立ちから教えてください。
TARO:もともとJUN、TAKEと自分がJENNIFER ISOLATIONというバンドをやってて。そのバンドは結構ハード(なサウンド)だったんです。自分もそうですけど、メンバーがUKロックだったりブラックミュージックだったりが好きだったんですけど、前のバンドではそういう音楽を表現できないと思ったんです。それでAKIRAとmassiveを誘ってAttractionsを作りました。ちゃんとした歌を歌いたいし。今のバンドになって、メロウな歌も歌いつつ、でも精神的にはパンクでやってます。
ーーメンバー3人がいるなら、そのまま前のバンドを引き継いでやっても良かった気もしますが、そうはしなかった。
TAKE:最初は続けようって意識だったんですけど、そうやって現状維持するよりも、この際だから気分一新したい、前のバンドは解散して、それまでとは違う、自分たちのやりたい音楽をやってみようかと思ったんです。
ーーこの5人になって、バンドの音が固まって自分たちの個性が出てきた時期はいつごろですか。
TAKE:どうですかね……今も手探りなところは正直あって。その場その場でみんなが聞いてる音楽をリアルタイムでどんどん出していきたいと考えてるところはありますね。
ーーまだ変化・成長の過程であると。バンド結成時のコンセプト、こういうバンドにしようとか、具体的な目標とか計画とか、そういうのはあったんですか。
TARO:さっきも言った通り、歌ものってことですかね。前はRage Against the Machineみたいなハードなラップばかりしてたんですけど、歌が歌いたくなったんです。あとはビートが効いた音楽を作ろうということをある程度コンセプトに入れて始めました。
ーー今はブラックミュージックのノリも含めつつ、かなり幅広い音楽性になってますね。
TARO:そうですね。前のバンドだと狭かったよね。動きづらかったし。今だったらなんでもイケる気がしてて。今は自由に、実験的にできる気がします。今まで自分ができなかったようなこと。ライブでディレイでボーカルを飛ばしたりとか、シンセでいろんな音を試したり、ギターもエフェクターも新しくして、いろんな実験がしやすい態勢になってる。
ーー昨日のライブでもちょっとサイケっぽい、ダブっぽいことをやってましたね。
TARO:そうですそうです。ただのロックじゃなくてエレクトロニックミュージックの要素も入れて、踊れるような音楽を目指していて。ただのロックバンドでは終わりたくないという気持ちはあります。音源に近づけるというよりは、あくまでもライブが最高だと思わせたいので。そこはかなり意識してます。