平井堅、“心の暗闇”を解放する歌詞が支持される理由 Mステ披露「知らないんでしょ?」を機に考察

平井 堅 『知らないんでしょ?』MUSIC VIDEO(Short Ver.)

 人間のダークサイドを描いた平井堅の楽曲。その最新曲にして、もっとも深い闇を感じさせるのが「知らないんでしょ?」だ。曲が始まると、グラスが割れる音、ダークな響きをたたえたピアノの音色、ハイヒールで走る音が順番に聴こえてくる。歌われるのは“あの子”に対する、嫉妬、畏怖、憎悪などが混じり合った、あまりにも複雑な感情。美しい憂いを帯びたメロディとともに奏でられる<あのコを傷つけたいのに 褒めてしまう><あのコを知りたくないのに 調べてしまう>といったサビの言葉にドキッとするーー平井のコメント通り“胸に刺さる”リスナーも多いのではないだろうか。

 近しい他者に対する妬み、嘘といった感情をまったく持たない人は、おそらく存在しない。かく言う筆者も(みっともないことに)、同業者の仕事ぶりは気になるものだし、企業に勤めている人であれば、会社や同僚からの評価や印象を意識しないわけにはいかないはず。さらにSNSの普及によって同調圧力が増し、“他人、世間と照らし合わせないと自分を確認できない”ということが当たり前の状態になっている。「知らないんでしょ?」はそんな状況をしっかりと炙り出し、リスナーの目に前に晒す。そして楽曲を聴いたリスナーは、普段は注意深く隠している感情を突き付けられ、強く心を揺さぶられるのだ。

 誰もが抱えているにも関わらず、誰にも話すことができない感情をまっすぐに描き出す平井堅の楽曲。「知らないんでしょ?」もそうだが、聴き終わったときの感覚は決して暗くはなく、美しいメロディライン、言葉を伝えることに焦点を当てたボーカルを含め、むしろ自分の闇を解き放ってくれるようなカタルシスがある。そう、前向きなフレーズがないにも関わらず、人間の暗闇を照らし出し、解放してくれるーーだからこそ平井堅の心の暗部を歌った曲は、多くのリスナーの気持ちを捉え続けているのだと思う。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

■リリース情報
『知らないんでしょ?』
5月30日(水)発売
価格:926円+税(税込1000円)
先行配信中。ダウンロードはこちら。

<CD収録内容>
1.知らないんでしょ?
2.知らないんでしょ? (less vocal)
3.キミはともだち (Ken's Bar 2017 X'mas Special!!)
4.Strawberry Sex (Ken's Bar 2017 X'mas Special!!)
5.ノンフィクション (Ken's Bar 2017 X'mas Special!!)

『トドカナイカラ』
5月30日(水)発売
価格:926円+税(税込1000円)
先行配信中。ダウンロードはこちら。

<CD収録内容>
1.トドカナイカラ
2.トドカナイカラ (less vocal)
3.魔法って言っていいかな? (Ken's Bar 2017 X'mas Special!!)
4.センチメンタル (Ken's Bar 2017 X'mas Special!!)
5.哀歌(エレジー) (Ken's Bar 2017 X'mas Special!!)

平井堅オフィシャルサイト

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