『POWER』インタビュー
HER NAME IN BLOODが語る、バンドの進化と新たな挑戦「シンプルな楽曲は強い武器になる」
「MAKIは人間として一番合っていた」(TJ)
ーーMAKIさんは昨年加入したばかりですが、いつ頃HNIBのことを知りましたか?
MAKI(Dr):知ったきっかけは2014年、「HALO」のMVですね。
ーーそうだったんですね。最初に聴いたとき、どう思いましたか?
MAKI:僕がメタルにハマったのが、2008年くらいに『LOUD PARK』が盛り上がっていた時期で。本屋で雑誌『BURRN!』を立ち読みしたら、「おおっ!」って感じで夢中になったんです。それからしばらくして、たまたま話題になっていたHNIBの「HALO」のMVを観て、海外にしかこういうバンドはいないという概念しかなかったから、とにかく驚きました。
ーーそのバンドに自分が参加するとは、2014年の時点では想像もしてなかったわけですよね。
MAKI:当時はもちろん何も考えてなかったので(笑)、まさかと思いました。
ーーこれはMAKIさん以外のメンバーにお聞きしたいんですが、ドラムが変わると醸し出す曲の雰囲気やグルーヴ感、さらには生まれる新曲にも影響を与えるのかなと思うんです。例えば前作の『BAKEMONO』(2016年発売)と今回の『POWER』とでは、演奏する際の感触や生まれる新曲に違いを感じましたか?
MAKOTO:変わった部分もあるし、変わってない部分もあります。変わった部分としては、アンサンブル……これは実際にプレイしている人にしかわからないかもしれませんが、自分の感覚としてはMAKIのドラムは活きが良いというイメージなので、それをどう生かすかを考えるようになりました。それはフレージング的なところで、一緒に曲を作っていてすごく新鮮に感じられて。と同時に、自分が曲を作る上で「HNIBとしてこうしていきたい」ってところには変わってないところもあり。だから半々ですね。ただ、単にドラマーが変わっただけではなくて、バンドの体制として人が変わったということは、新しい考え方が加わるということでもあり。俺たちとMAKIは年齢差もあるので、MAKIの世代だったらどう思うとかそういうことも聞いたりしていて。だから、今はめちゃめちゃ新鮮なバンド生活ですね(笑)。
ーーなるほど。ではギタリストのおふたりから見て、どうですか?
TJ:新しいドラムが決まる前は、MAKI以外の何人かにもスタジオに入ってもらったんですけど、MAKIは人間として一番合っていたんじゃないかな。でも、実際ライブでプレイしてみると、最初は以前と違う感じを受けました。
DAIKI:彼はすごく正確なドラマーなので。これも僕らにしかわからない部分かもしれないけど、細かいコンビネーションとか最初は難しかった部分もありました。でも、そこで自分のプレイについていろいろ気づけた部分もあったので、そこは新鮮だったかな。曲作りに関しては、俺もそこまで変えていないし、変わったなとも思わなくて。実際、MAKIと一緒にライブをやったことで、彼はどういうことが得意でどういうことが不得意かだんだんわかってくるから、そこを生かしつつ「こういうことに挑戦したらどう?」みたいなアプローチとかはありました。
ーー歌う立場としてはどうですか?
IKEPY:歌いやすいですね。それはMAKIがいろんなバンドでサポートをやってきた経験も大きいと思うし、それが形になって表れているのかなと。
「ライブしているときをイメージしながら曲を作ったり」(DAIKI)
ーーそういった経験の結晶が、今回の『POWER』というアルバムに集約されているのかなと。HNIBの作品は毎回いろいろ変化を遂げていて、良い意味で同じものを作っていませんよね。例えば、以前だったら1曲3、4分の中にいろんな要素を詰め込んでいたと思うんですけど、今回はもっとスムーズでシンプルな作りだなという印象が強くて。
MAKOTO:今回の『POWER』を作るにあたって、“パワフル”のほかに“キャッチー、でもハード”みたいなイメージがあって。
DAIKI:今おっしゃったように、特に1stアルバムの頃はいろんな要素を詰め込んだ作風で、あれはあれなりの良さがあると思うんですけど、結局そこで気が済んだというか……。
他のメンバー:あははは!
DAIKI:あの頃、初見で僕らを観てくれた人には、「すげえ意味わかんねえな」と思っていた人もたくさんいたと思うんですけど、じゃあ一緒に歌ってくれるかといったら、そうじゃない。僕は初見でも曲が耳に残るようなバンドとか一緒に歌いたくなるようなバンドも好きだから、活動していくうちにシンプルな部分にもどんどん挑戦していくようになって。今回はそれが良い意味で意識しないでできた。いや、多少意識はしたけど(笑)、そこまで意識しないでできた、そういうバランスの取れたものが作れたと思ってます。
ーーこのシンプルさのせいか、アルバムを聴いていると大きなステージが思い浮かぶんですよ。
DAIKI:ああ、そこは意識してますね。
MAKOTO:嬉しいことに、去年も大きなキャパシティのステージに立たせてもらったり、一昨年も国外で大きいキャパの会場を回れたりして。特に海外だと安定した音響システムがどこにでもあるとは限らないので、シンプルな楽曲というのはそういう環境では強い武器になるなと思ったんです。だから、どんな環境でも乗せられたり覚えたりできる曲というのが、今回テーマになっていました。
DAIKI:それこそ、ライブしているときをイメージしながら曲を作ったり。例えば、ここでお客さんがサークルピットを作るとか、ここでヘドバンするとか、そういうことはイメージしていましたね。