『ぺっとぼとリテラシー』インタビュー

ましのみが語る、音楽で生きていくことへの決意 「私にしかできないことをやらないと意味がない」

私なりの言葉遣いを意識して書いている

ーーそれにしても、経験がなかった作詞作曲をどうやってものにしていったんですか?

ましのみ:学ぶよりも先に行動に移すのが好きなので、まずやってみようと思って適当にピアノを弾きながら歌って。だから、今考えるとすごくめちゃくちゃな曲もたくさん書きました。それを続けていくうちに、曲を書くことが楽しくなってきて、そこからどんどん歌詞にもこだわるようになって、環境のせいなのか年齢なのかわからないけど価値観も変わっていって今みたいな曲を書くようになったんです。

ーー自分の価値観の変化は、歌詞を書きながら気づいた?

ましのみ:そうですね。明らかに書いている歌詞の中での、自分の考え方が以前とは違っていたので。さっき話したように、中高はフワーッと生きていたんですけど、大学に入って音楽に時間やエネルギーを割きたかったので、大学ではあんまり交友関係もない、行って帰ってみたいな生活をしていて(笑)、それ以前の学校生活とは全然違うわけですよ。しかも18、19、20歳って年齢的に気持ちが揺れる時期だとも思うし、それが原因かよくわからないけど、変わっていきましたね。それこそ音楽を始めたことで、早い段階で就活みたいな苦しさを味わったからかも。夢を叶えたいから頑張る、でもなかなか報われない、残り時間が少ない……そういう焦りとともに生きていたところもあるので、考え方がどんどんシリアスになっていったところもあるのかなと思います。

ーーあと、ましのみさんは歌詞の言語感覚も独特で。僕は普段この仕事以外で20歳前後の人たちと接する機会が少ないから、これがリアルな20歳前後の感覚なのかわからないですけど、非常に興味深かったです。

ましのみ:これが同世代の感覚なのかと言われたら、私もよくわからないですね(笑)。いろんな女性シンガーソングライターさんがすでに活躍されている中で「私にしかできないことをやらないと意味がない」と気づいて、私なりの言葉遣いというのは意識して書いているつもりです。

ーーすごくアバンギャルドな印象も受けるんだけど、でも実はめちゃめちゃポップという。この感覚が個人的にはすごくツボで、聴いていて気持ちいいんですよ。

ましのみ:ふえ~、ありがとうございます。相当な褒め言葉ですよ! 私自身、いろんな聴き方をしてもらいたいと思っているので、それこそ私と同世代の人だったら歌詞に共感して楽になってもらうとかそういう聴き方でもいいし、リズムや言葉でテンションが上がる軽い聴き方でもいいと思っていて。好きに聴いてもらう中で、なんとなく楽しいという感覚を味わってもらえたら嬉しいです。

いろんな要素を取り入れたライブでも、一番聴いてほしいのは歌

ーーあと、これがイマドキの感覚なのかわからないけど、確実にヒップホップが根付いて以降の言葉遣いだなと思って。

ましのみ:それはヒップホップの方々に申し訳ないです(笑)。全然わからないから。

ーーでも、「ましラップ」とかやられてるじゃないですか。

ましのみ:違う違う!(笑)。あれはラップじゃないですよ! 「ましラップ」という独自の遊びみたいな感じに捉えてほしいです。

ーーライブでもいろいろ寸劇めいたことをやっていますが、アイデアはどこから生まれるものなんですか?

ましのみ:根底にあるのは、いかに楽しんでもらうかということであって。普通に「うわーっ、楽しい」というよりは、私は「えっ、次はこういうものがくるの? ワクワクする!」みたいに刺激的なエンタテインメントが好きなので、悲しい歌であったとしても最終的には皆さんを楽しませたいという気持ちが強いんです。ライブにはいろんな要素を取り入れるけど、もちろん一番聴いてほしいのは歌。歌を聴いてもらうために、いかにして飽きさせない展開にするかってことなんです。私自身ずっとMCと歌だけだと飽きちゃうタイプなので、楽しいと思ってもらえる展開をするために寸劇とかラップをしていて。別にそこにこだわりがあるわけではなくて、MCの代わりにひとつのアイテムとして使っているわけです。あとは、まだ私のことを知らない人が多い段階だし、いろんなところに刺激を用意して、引っかかってもらいやすいようにしておかなくちゃいけないなとも思っているので。

ーーすべては歌を聴いてもらうためだと。

ましのみ:はい。今は私のことを知らない人のほうが多いし、いくら「歌詞にこだわってます」と言っても歌詞までたどり着かないと思うんですよ。だったら歌詞にたどり着くように、まずメロディやサウンドやライブの構成に興味を持ってもらう、そのためにも全部にこだわっておかないといけないと思っているんです。

ーーそうですよね。もう一回観たい聴きたいと思わせたら勝ちですものね。にしても、作曲経験ゼロからよくここまでたどり着きましたね。メロディは鼻歌から作っていくんですか? それとも楽器を使って?

ましのみ:両方ですね。歌詞にメロディを当てはめていくこともあるし。とはいえ、まだコードがよくわからなくて、今も勉強している最中です。

ーーむしろ知らないからこその突然変異じゃないけど、そういう印象も受けました。

ましのみ:突然変異(笑)。そうなっていてくれたら嬉しいですね。

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