森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.57
スピッツ、ドリカム、原田知世……ヒット曲・人気曲の“新たな魅力”をどう伝えていく?
歌番組で「いい日旅立ち」「秋桜」を歌唱。視聴者から音源化を望む声が数多く寄せられたことをきっかけに実現した三浦祐太朗のカバーアルバム『I'm HOME』。“三浦祐太朗が母・山口百恵の名曲を歌う”という企画は相当な覚悟が必要だったと思うが(“それやっちゃダメだろう”という声も当然予想できる)、結果から言えば、大正解だったと思う。原曲の良さと新しい解釈をバランスよく共存させたアレンジもいいがThe La‘sの名曲「There She Goes」のオマージュとしか思えない「夢先案内人」のイントロが最高、本作の魅力の中心はもちろん三浦のボーカル。歌い出しのタイミング、ブレスの位置、節回しを含めて、山口百恵の歌い方を良い意味で踏襲することで、原曲の豊かさを今のリスナーに伝えることに成功しているのだ。この作品をきっかけにシンガーとしての彼の資質が開花することを願う。
でんぱ組.incのメンバーのなかでも特に音楽に対する造詣が深く、現代的なポップ感覚を備えている夢眠ねむの声をサンプリングしたボーカロイド「VOCALOID4 Library 夢眠ネム」が2017年2月に製品化。『VOCALOID 夢眠ネム』は“夢眠ネム”を使用して制作された楽曲を集めたコンピレーションアルバム。本作はすべてオリジナル曲ではあるが、“夢眠ねむの声”をリユースした作品だ。参加アーティストはTom-H@ck、kzlivetune、八王子P、ゆよゆっぺ、PandaBoYなど、アニソン、アイドル、ボカロ、ロックバンドなどの幅広いシーンで活躍する才人ばかり。当然、楽曲のクオリティは折り紙付きで、彼女のフェミニンキュートなボイスの魅力を上手く再利用している。本作に収録された楽曲を生の“夢眠ねむ”が歌うシーンもぜひ見てみたい。
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。