乃木坂46、個人PV復活の意義とは? グループの躍進支える企画の重要性
乃木坂46が、3月22日にリリースした17thシングル『インフルエンサー』の特典映像として、14thシングル『ハルジオンが咲く頃』以来約1年振りとなる“個人PV”を収録している。
今回は初参加となる3期生を含めた、45名分の個人PVを収録。今回も錚々たる監督陣が各自の個人PVを手がけたほか、期間限定で西野七瀬・伊藤万理華・齋藤飛鳥の映像がフルサイズで公開されたことや、伊藤万理華の個人PVが5thシングル『君の名は希望』の特典映像で話題沸騰した「まりっか’17」以来、約4年振りに福島真希氏が担当し、「まりっか’17」の続編となる「伊藤まりかっと。」が制作されたことで話題を呼んだ。
メンバーの新たな魅力を引き出すとともに、新進気鋭の作家を発掘する機能も果たしている乃木坂46の個人PV。リアルサウンドで乃木坂46系の記事を多数執筆し、『MdN EXTRA Vol.3 乃木坂46 映像の世界』では個人PVの分析を担当、『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う(青弓社ライブラリー)』の著者でもある香月孝史氏は、同プロジェクトの特徴についてこう語る。
「アイドルのCDに特典DVDがつくのはスタンダードですが、その内容はMVやライブ映像、ドキュメンタリーなどであることが一般的です。ただ、乃木坂46はシングルCDの特典映像に、そのシングルに参加しているメンバー全員分のオリジナルPVを制作し収録しています。毎回30本以上にもなるそれらの作品群は、原則としてすべて別々のクリエイターが監督を務めていますが、作品のスタイルや方向性は各監督にゆだねられているため、担当するメンバーへのアプローチも作品ごとに大きく異なります。アイドルとしてのパーソナリティを前提にして撮影するものもあれば、フィクションとして1人の少女のドラマを撮る作品もあったりと各クリエイターの世界観が投影され、アイドルのプロモーション映像というだけでない、幅広い作風のショートフィルムの見本市のようになっているのが特徴ですね」
また、個人PVを収録し続ける意義についてはこう続ける。
「個人PVは、初期から演技にこだわってきた乃木坂46の活動の一貫として、さまざまなスタイルの演技を行なう場としても機能しました。初期には堤幸彦氏や三木聡氏、関和亮氏など著名なクリエイターも名を連ねていましたが、年月が重なるにつれて特に目を引くのは、柳沢翔氏や湯浅弘章氏、山岸聖太氏、中村太洸氏、伊藤衆人氏など、若いクリエイターが才能を発揮する場として個人PVが機能していることです。そうして力を蓄えた監督たちは、その後乃木坂46のMVの監督として起用され、グループのビジュアルイメージを補強することにも成功しています。乃木坂46が映像面で高いクリエイティビティを発揮するグループとしての認知を広げた理由として、この個人PVはなくてはならない存在でしたし、その制作のスタンスが後発グループ・欅坂46にも活きているのは間違いないでしょう」
さらに、個人PVをきっかけにメンバーの意外な一面や、新たな才能を発見することもあるという。
「個人PVで頭角を現したメンバーの筆頭は伊藤万理華さん。柳沢翔氏の監督作『ナイフ』では演者としての才能を開花させ、選抜やフロントのメンバーではない段階にもかかわらず、ファンからも一目置かれる存在になりました。また、福島真希氏が手がけた『まりっか’17』は、乃木坂46ファン以外にも広く波及しました。ほかにも、2期生の堀未央奈さんは、センターに抜擢された7thシングルに収録された柳沢氏の『milk』で存在感を発揮し、山岸聖太氏が監督した『ゆるす!』(10thシングル収録)では、シュールな作風に堀さんのキャラクターがマッチして、彼女の適性が引き出されています」