姫乃たま『音楽のプロフェッショナルに聞く』004 ロベルト吉野(サイプレス上野とロベルト吉野)

姫乃たまがロベルト吉野に聞く、DJの面白さ「見ている人を楽しませて、何を考えさせるかが大事」

【転】ターンテーブリズムの育て方ーー「コンパスで溝を広げて、レコードの周りを削って改造したりとか」

 

姫乃:さきほど、音楽じゃなくてDJバトルだけが好きな人もいるっていう話がありましたけど、スクラッチしやすい曲のジャンルがあるってことですか?

ロ吉:そうですね、バトルブレイクスっていうスクラッチ専用のレコードがあります。レコード屋に行くと、ヒップホップコーナーの隅の方とかにあるんですよ。その並びにバトルDJが出したブートのアルバムとかもあって、僕はDJ Qbertが参加してる音源を買って、それに参加してるラッパーの関連音源を掘っていったりしてました。

姫乃:楽しい!

ロ吉:そう、楽しいんです。さっきのROC RAIDAとかもそうなんですけど、当時はVHSもいっぱい売ってたので、それを見てひたすら同じレコードを買って上手い人のコピーしてました。それからだんだん自分流にしていくと、ほかのものが出来上がってきて、それが僕の場合はメタルとかハードコアとの融合になりました。まあ音源に関しては、いまはネットにもいろいろありますからね。

姫乃:レコードを使わないDJの方も増えてきていますか?

ロ吉:PCDJが主流ですね。SCRATCH LIVEっていう専用のソフトがあって、パソコンと繋いで、iTunesの曲を使ってDJするんです。

姫乃:なんとなくバトルはレコードが主流のイメージがありました。

ロ吉:半々くらいじゃないですかね。派閥じゃないですけど(笑)。

姫乃:それぞれの良さってなんですか?

ロ吉:パソコンだったらチョップなりエディットなりして、自分で曲を作って流せるっていうのがあるんですけど、レコードだったらもっとアナログな感じというか、音がどんどん擦れてくじゃないですか。あれも楽しみのひとつなので。擦れれば擦れるほど、音が汚くなって気持ちよくなっていくんですよね。あとはそうですね、コンパスで溝を広げて、レコードの周りを削って改造したりとか、いろいろあるんですけど。

姫乃:コンパスで削って、改造。

ロ吉:そうです。レコードをぶった切って、他のレコードとくっつけたり。DJもいろいろなので、入り口は広いですよ!

姫乃:本当に図工なんですね!

ロ吉:とは言え、僕はかなり自由なんで! バトルDJの中でもかなり自由なほうなので(笑)。でもターンテーブリストには、こういうDIYの精神を持ってる方が多い気がします。音楽へのこだわりだけじゃなくて、気持ちがあれば。ギタリストで言ったら、顔でばーって弾けばロッカーだ! みたいな。アイデアは幅広く使っていったほうがいいと思います。

【結】これからDJを目指す人へ

姫乃:いまからDJを始める人は、お手本も情報もたくさんあって迷っちゃいそうですね。

ロ吉:DJは2000年代から楽譜もできて、最近では教室も増えてますね。教室ではまず自由に触らせて、それこそ子供をしつけるように、一斉にベイビースクラッチからやるらしい(笑)。あの、普通にズクズクやるやつ。赤ちゃんでもできるって意味の名前なんですけど、そうやって実際に触りながら、こうしたら針がずれちゃうんだとか、やったらいけないことを教えていって。

姫乃:できることより、できないことを知るのは大事そうですね。

ロ吉:最初に失敗を学ぶのは大事ですよね。

姫乃:吉野さんでも昔はDJで失敗することってありましたか?

ロ吉:ありまくりですね。初めて大会に出た時は大失敗して。単純に緊張して、忘れたり、針が飛んだりとか。1回飛んだらもうダメになるやつもあるんで。2009年に初めて決勝に出たんですけど、数年間かけて作り上げてきたものが、6分間でおじゃんになっちゃって、ちょっとヤバかったですね。

姫乃:気持ちが。

ロ吉:ヤバかったですね……。そうっすね……うん……。だいぶ考えも変わって、はい。

姫乃:針は……飛びますよね……。考えが変わったというのは?

ロ吉:これだけやってたら長生きできねえなあと思ったんで。もうちょっと、音楽ってそんなことじゃないだろって。

姫乃:辛いけど楽しいから集中し過ぎちゃいますしね。どうやってバランスを取っていますか?

ロ吉:なんだろうなあ。やりたくない時はやらないことかな。練習しない。そういう時にやっても不安要素しかでてこないから、変な癖がついちゃう。ほかのことを頑張ってると、アイデアがぽんと出てくる。いかに見ている人を楽しませて、何を考えさせるかが大事だから、アイデア勝負なので。

姫乃:これからDJをやってみたいな、と思っている人にメッセージをお願いします。

ロ吉:まずは自分の持ってるCD、iTunesから、かけたい曲をいっぱいまとめていって。いまはターンテーブル買わなくても、一体型のミキサーがあるんで、2万円くらいかな。それで簡単にDJできるので。あとは、レコードがすごく買いたくなる時とか、何も聴きたくない時とか、いろいろあると思うんで、聴きたくない時はアーティストを探求したり、楽にやってもらえればと思います。DJは曲に没頭し過ぎるとダメになっちゃうので。メタルは特にそれが多くて、3日後くらいに、「あの時なんであれかけたんだろう……」って落ち込む時もあるんですよね……(笑)。音楽は分け隔てなく聴く方が健康だと思います。好きな曲を組み合わせて、良い感じの流れがつくれたらいいんじゃないでしょうか。

姫乃:やっぱりDJ、面白いですか?

ロ吉:面白いですよ!

■姫乃たま(ひめの たま)地下アイドル/ライター

1993年2月12日、下北沢生まれ、エロ本育ち。アイドルファンよりも、生きるのが苦手な人へ向けて活動している、地下アイドル界の隙間産業。16才よりフリーランスで地下アイドル活動を始め、ライブイベントへの出演を軸足に置きながら、文筆業も営む。そのほか司会、DJとしても活動。フルアルバムに『僕とジョルジュ』があり、著書に『潜行~地下アイドルの人に言えない生活』がある。

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サイプレス上野とロベルト吉野 公式サイト

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