Flower、“映画のような”ライブで見せた充実の現在ーー『Flower Theater 2016』最終公演レポ
「1本の映画を見終わったような感覚で」ーーラストの挨拶でメンバーの藤井萩花が語った通り、Flowerのライブ観覧後は、まさに映画を見た後の充実感に近いものがあった。2度目となる単独ツアー『Flower Theater 2016~THIS IS Flower~』では、E-girlsのときに見せる元気でポップなパフォーマンスとはまた別の「Flowerらしさ」が花開く。前ツアーから一貫してテーマに掲げる「Flower Theater」。1月16日に東京国際フォーラム・ホールAで行なわれたファイナル公演を振り返り、改めてFlowerが放つ独自の魅力に迫る。
集大成にして、スタートラインとなる全国ツアー
Flowerは、ボーカリストの鷲尾伶菜と、パフォーマーの藤井萩花、中島美央、重留真波、佐藤晴美、坂東希からなる6人組。昨年秋にリリースした、初のベストアルバム『THIS IS Flower THIS IS BEST』を携えた今ツアーは集大成でありながら、新体制としてのスタートラインを意味していた。
5thシングル表題曲「太陽と向日葵」以降、Flowerの楽曲は小竹正人が作詞を手がけており、過去のインタビュー【Flower・鷲尾伶菜と作詞家・小竹正人が語るグループの成長「『花時計』以降、声質が変わってきた」】では、鷲尾と小竹が綿密にイメージをすり合わせて、歌という表現に落とし込んでいることを明かしている。
今公演で披露された全22曲のうち、実に20曲が小竹とのタッグで作られた楽曲。丁寧な作り込みで理解を深めた歌の世界観を、メンバーの歌とダンスというフィルターで観客に届ける。それが、Flowerが導き出した「らしさ」だった。
ダンスも歌詞に連動している振り付けが多く、まるで歌うように舞っているのが印象的。悲しいときは膝から崩れ落ち、嬉しいときには希望を見つけたように表情を輝かせる。コンテンポラリーなダンスで、観客の想像力が掻き立てられ、ステージ上の時間と空間、温度や湿度まで変わるような感覚になる。
歌のためのバックダンサーでも、ダンスのためのBGMでもない、Flowerだからこそ見せられるエンターテインメントの形。それが、前回の初単独ツアーから銘打たれた、ライブのテーマである「Flower Theater」の本質だ。
映像とライブパフォーマンスで歌の世界観を表現
前ツアーでも、歌とパフォーマンスと映像を組み合わせたドラマチックな演出が取り入れられたが、今ツアーではさらにストーリー性を強めたように思える。ステージいっぱいに額縁のような白い枠が設けられ、開演時間が近づくにつれて聞こえてくる波の音。そして枠の中に、古い映画フィルムに見られるカウントダウン映像に続いて、映し出されたのは海辺を歩く藤井の姿。
「その恋は、ふいにやってきた」というナレーションで紡がれるのは、1人の女性が恋を知り、モノクロな世界に彩りが添えられれていくラブストーリーだ。物悲しい藤井の姿は、まるで恋を失って泡となった人魚姫のよう。観客が物語に入り込むとスクリーンのカーテンが開き、メンバーが現れて「人魚姫」のパフォーマンスが始まる。
そうして1曲ずつメンバーが演じる映像と、季節の移ろいに連動したセットリストで、一つの恋が始まり、そして終わっていく様子を追っていく。衣装も、真っ白からピンク、赤、そして再びモノクロと、ひとつの恋の始まりから終わりまでの感情を表していた。