作詞家zopp「ヒット曲のテクニカル分析」第8回
作詞家zoppが“アイドル育成集団”をプロデュースする理由「生活に根ざしたコンセプトを」
「大きなことをやるなら、あくまで音楽という舞台の上で」
ーーここからは、先日発表したアイドル育成集団「RECOJO」について伺います。これは以前から始動している「レコーディング女子」の派生系と考えて良いのでしょうか。
zopp:ユニットというよりかは、そのユニットになりうる母体のようなものを作ろうと思っています。そこから来年にデビューするグループが出てくるようにしたいですね。今いる女性アイドルって、例えば秋元康さんやつんく♂さん、中田ヤスタカさんなど、作詞家・作曲家・アーティストの方がアイドルグループをプロデューサーすることが近年は多くなっていますし、僕自身も35歳で、もうそろそろ何かどデカいことをしなきゃダメだなと思って。ただ職人として作詞をするのではなく、アーティスト・プロデューサーとしての一面も出していきたいと考えるようになり、プロジェクトを立ち上げました。
ーー 小説を出版するなど、作詞以外のクリエイティブな一面はこれまでも発揮されてきたと思うのですが、なぜプロデューサーとしての立ち位置を選んだのでしょうか。
zopp:小説はもちろん大きなことですが、“音楽”というジャンルの中ではないんです。自分が大きなことをやるなら、あくまで音楽という舞台の上で何かをやりたかった、という気持ちが強いですね。
ーーご自身ではソロシンガーや男性ユニットにも多く歌詞を提供してきたと思うのですが、なぜ女性グループという枠組みに?
zopp:圧倒的に男性アーティストへの作詞が多かったからこそ、一番経験の少ない女性グループに書いてみたかったんです。なので、どうなるのかという様子見の意味もありつつ、「レコーディング女子」を始めました。この企画もアナウンスはしなかったんですけど、いわゆるオープンなオーディションだったといえます。
ーーいろんな人に来て歌ってもらうことのほかに、人材発掘の意味合いもあったと。
zopp:いいなと思った人がいたら、随時フックアップしていこうということですね。でも、オーディションといっちゃうと物々しい感じもしますし、素の部分が見えないと思ったので。RECOJOが立ち上がったあとは「レコーディング女子」にオーディションの意味合いありきで運営していくつもりです。
ーー現状、RECOJOの候補者は、「レコーディング女子」に参加したシンガーの方が多いのでしょうか?
zopp:そうですね。ただ、専門学校に行ってる子もいますし、カラオケで歌うことが趣味という子もいますし、様々ですね。
ーー集まったメンバーで何をするのかはまだ明かされていないですが、どんなコンセプトを掲げて活動するつもりなのでしょうか。
zopp:RECOJOから誕生するアイドルについて話すと、まずはしっかりとコンセプトを絞ったグループを作ろうと思います。CDを1人10枚も100枚も買わせるのではなく、生活に根ざしたものと近いところで活動をし、企業からスポンサードしてもらうようなものを目指したいです。
ーーでは音源のリリースはしない、ということでしょうか。
zopp:いえ、配信リリースはします。ただ、CDは出さないかもしれません。音楽をないがしろにするのではなく、音源にはしっかりと力を入れたいです。それによって赤字が出たとしても、ほかで利益を上げていこうと。
ーーちなみに手渡された資料には、この段階では言えないと思うのですが、かなりみっちりとコンセプトが書かれています。これだとzoppさんも作詞家としてかなり制約が付くと思うのですが。
zopp:そんなこともないですよ。ひとつの設定から複数の視点が生まれるので、逆に制約があったほうが生まれるものも多いといえるかもしれません。
ーー先ほどzoppさんは例としてつんく♂さんや秋元さん、中田ヤスタカさんを挙げていましたが、彼らは職業作詞家・作曲家ではなく、アーティスティックな活動をメインにやってきた方ですよね。それを踏まえて、zoppさんはこれまでの職業作詞家と違う一面として、どのような部分を出していこうと思っているのでしょうか。
zopp:一番重要なのは、作品の内容ですよね。音楽のジャンルはいろんなことをやっていこうと思うんですけど、やっぱり作詞家である自分が手がけるということで、言葉に注目が集まるでしょうし、自分でもそこは中心になってくるだろうと考えています。でも、言葉をあえてボヤかすということもやってみたくて。あえて何を言っているかまったくわからないものを作って、歌詞もどこにも載せないから正解がわからないという。今って調べればすぐでてきますし、アイドルに会いたいと思ったら会えるじゃないですか。だからこそ、それらにアンチテーゼを唱えたいんですよね(笑)。
ーー作詞家であるzoppさんがそこに挑むのはすごいですね。
zopp:でも、逆に作詞家として聴こえやすさを知っているから、聴こえづらさもよくわかっているという見方もできますよね。先ほど話したSuperflyの楽曲のように、オールイングリッシュのように聴こえさせることも可能なので。
ーーお話を聞いていて、このプロジェクトで新たにzoppというクリエイター像を一新したいという意図を強く感じました。
zopp:まさにそうですね。今の自分がひとつのブランドになっているからこそ、お仕事も頂けているとは思うのですが、じゃあそれが来年になってもそのままでいられるのかというと非常に難しいところです。ありがたいことに有名なアーティストに歌詞を書かせてもらっていますが、彼らは僕がいたから売れたというわけではないと思うんです。だからこそ、イチからプロデュースすることで「zoppが作った」という形になり、新しい評価をしてもらえれば、未来は大きく変わると考えています。
(取材・文=中村拓海)
■ライブ情報
『RECOJO 1st LIVE ~拾われたダイヤの原石たち~』
11月3日(木)
月見ル君想フ
チケット:¥2,000
PC受付
スマホ受付