SKY-HI×SALU、日本語ラップ・シーンに何を問いかける? 過激に攻めたコラボ作を読み解く

 ただ、この二人が本当に意図する目的は、刺激的なディスをカマしてシーンを引っ掻き回すことではないだろう。SKY-HIもSALUも、メジャーのフィールドに立って創作活動を続けるMCだ、互いの肩にのしかかる責任感やリスクは覚悟の上だと思う。そして、この『SHTMM』から感じるのは殺気立つほどの“ヒップホップ的なスピリット”だ。そう言った意味でも、彼らがクソ真面目にヒップホップのことを考えて、周りに警鐘を鳴らすべく作り上げたのが本作なのではないだろうか。タダの遊びの延長で作ったにしては手が込み過ぎているし、とにかく、どこを切ってもアクの強い仕上がりだ。ゆえに、嫌悪感を示す者もいるのではと考える。しかし、本作が話題になればなるほど本人たちの思うツボだろうし、本作をきっかけにこの二人に、そして流行りに乗っかったシーンに対して反旗を翻すようなラッパーも出てくるかもしれない。

 筆者としては、『SHTMM』に収録されている楽曲をどんどんビートジャックしてこの二人に挑む若いMCが増えてくれないかな、なんて期待も抱いてしまう。加えて、歌詞内にも登場する<エセ評論家>らによる批評も、どんどん活発になればなと思う。そして、SKY-HI自身も「ライトセイバー」内で<振り上げた刀は 簡単にしまうなよ坊や>と言っているくらいだから、本作をリリースした後の両者の未来にも期待したい。彼ら自身、今後この作品とどう向き合っていくのだろうか? 是非、その熱気を冷ますことなく驀進して欲しいところだ。

■渡辺 志保
1984年広島市生まれ。おもにヒップホップやR&Bなどにまつわる文筆のほか、歌詞対訳、ラジオMCや司会業も行う。
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