ツアー『Dance Floor Massive V』特別インタビュー

RIP SLYMEが“史上最長最多ツアー”に挑んだ理由 「基本はライブで生きていくっていう感じ」

RIP SLYME-Check This Out

「ユルみを加えることによって、ほほえましさが出てくる」(ILMARI)

ーー「Check This Out」は、ミュージックビデオにもちょっとした90sエッセンスが盛り込まれてますよね。たとえば、メンバーを下から煽るアングルで撮るとか。

ILMARI:あと、画像をちょっと粗くしたりとか。ソウルズ・オブ・ミスチーフの「93 'Til Infinity」とか、当時のビデオをいろいろ見直して参考にしたりして。

RYO-Z:でも、そこまで寄せてないから、パッと見は90s感がわからないと思う。ただ、よーく見ると画角がそうだとか、ティンバを履いてるとか、そういうところが90sっていう。あと、ビデオの中で手を叩いてやってるのは「斎藤さんゲーム」なんだけど、あれは現場でPESがやり始めたんですよ。なんのことがわからずやってたんだけど、あとでPESに「なんでやり始めたの?」って聞いたら、「監督が斎藤さんだったから」って(笑)。それだけの理由(笑)。だから、全部なんとなーく、なんですよ。

ーーその辺の脱力感がリップっぽいけど(笑)。

ILMARI:そう。ちょっとユルみをつけたかったんですよ。何でもやり過ぎは良くないじゃないですか。

RYO-Z:ツアーの衣装も全体的に90sなんだけど、直前にできあがって着てみたら、すげえコスプレみたいで。俺、笑っちゃったもん。90sのコスプレしてるオジサンみたいな感じなんですよ(笑)。

ILMARI:でも、そうやってユルみを加えることによって何か笑える、ほほえましさが出てくるっていう。

RYO-Z:笑えるといえば、Polo Sportsの香水ね。

ILMARI:そう。今回のツアーは香水も90sでいってみようって言い出して。Obsession(for men/Calvin Klein)とか、ああいう甘い感じの香水でいこうよって。

RYO-Z:そしたらすげえクサイの、楽屋が(笑)。

ILMARI:そう。「クセぇな」とか「懐かしー」って言いながら盛り上がってて。今回のツアーはそういう楽しみ方もしてたりします(笑)。

ーー2曲目の「The Man (feat. CHOZEN LEE from FIRE BALL)」は、どんな経緯でできあがっていったんですか?

RYO-Z:これは冒頭の合宿のときにトラックがあって、「これはやろう」と話してたんです。そしたら自分たちでやってるラジオ番組の『SHOCK THE RADIO powered by G-SHOCK』(TOKYO FMほか)のテーマソングっていうタイアップの話が出てきて、「だったら、あのトラックが合いそうだ」と。で、番組のテーマでもある「かっこいい大人とは?」っていうのをテーマにして1曲書いてみようかっていうのが始まり。

ーーCHOZEN LEEの起用はどんな発想から?

RYO-Z:最初からFUMIYAが、トラック的にラガマフィンな感じが入ったらいいと言ってて。俺が「じゃあ、LEEくんとかどう?」って話をしてたら、あれよあれよという間にLEEくんも話に乗ってくれて。で、LEEくんに「かっこいい大人」がテーマで、特にフックをラガマフィンっぽくしたいんだって伝えたら、結果、フックをLEEくんが書く流れになっていったんですよ。で、レコーディング現場でも、イントロとかブレイク明けのところもLEEくんにやってもらいたいなぁなんて言ってたら、ササッとやってくれちゃうもんだから。まるでLEEくんの曲みたいになっちゃったっていう(笑)。

ーーリリックは具体的にどんなイメージで書いていったんですか?

ILMARI:俺はたまたまそのとき岡本太郎さんの『自分の中に毒を持て』っていう本を読んでて。PESに「これ、知ってる?」って聞いたら「そんなの基本だよ」って言われたんですよ。で、「あぁ、そうなんだ」と。じゃあ、岡本さんもかっこいい男だし、The Manだなと思って、そこからヒントをもらって書いたんです。

RYO-Z:俺は自分の生活圏内にあることを書こうと。バーとか行くし、そこでシガーをくゆらすとか、スコッチみたいな酒を飲んでる人とかは大人なイメージがあるなと。あと、とにかくスマートに帰る人。そんなダラダラしない。飲んでてもサッときれいに帰る人は、かっこいい大人だなと思って、連想したものを挙げていったんです。

ーーそういう男性には憧れる?

RYO-Z:憧れというか、もはや俺がそれって感じですけどね。シガーもたまにやるし、ハードリカーも飲むし、サッと2杯くらいで帰る、みたいな。

ILMARI:俺は別に岡本太郎さんみたいになりたいかって言ったら、そんなこと考えたことないですけどね(笑)。

ーー「In The House」は、自己紹介ソングですね。

RYO-Z:今回はツアーで初めてのところにいっぱい行くから、そういった意味でも「In The House」と言って自己紹介するのがいいなと思って。これもデモは早かったんです。去年アルバム『10』を作ってるときに「こういうのもあるよ」ってFUMIYAから提案されて、「いいね、これ。やりたいねー」って言ってた。

ーーヒップホップ × ガレージロックのようなサウンドで、イントロには60年代ビーチボーイズ的なハーモニーが入っているから、決してトラックは90s趣味じゃないですよね。というか、今回の3曲は全部そう。トラックに90sテイストはない。

ILMARI:そうなんです。でも、テーマとかタイトルが90sっていう。

ーーにしても、イマドキ、「In The House」なんて言わないよね(笑)。

RYO-Z:言わない、言わない(笑)。けど、だから、そこがいいんですよ。

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