太田省一『ジャニーズとテレビ史』第二十三回:ジャニーズにおける大人数グループの魅力
関ジャニ、JUMP、キスマイ、ジャニスト……ジャニーズにおける大人数グループの醍醐味
Hey! Say! JUMPは、今回取り上げる中では最も大所帯の9人組だ。現在デビューして活動するジャニーズグループ中の最大人数でもある。
彼らのソロ活動にはマイペースさが感じられる。それは『いただきハイジャンプ』(フジテレビ系)で番組MCが持ち回り制であるところからもうかがえる。グループでは誰か仕切り役が決まっているケースが多いが、そうではない。そこには各メンバーのやり方を尊重するような雰囲気がある。
そうしたなかで、ソロ活動もそれぞれのペースで進んでいる印象だ。
山田涼介は、映画『暗殺教室』や『グラスホッパー』への出演など、演技の方面での活躍がさらに増えそうな勢いだが、『スクール革命!』(日本テレビ系)でのいじられキャラ的な面白さも捨てがたい。同番組で一緒の知念侑李は、今年公開予定の『金メダル男』で監督・主演の内村光良とダブル主演を務める。同じく八乙女光は、『ヒルナンデス!』のレギュラーとして、有岡大貴とともにバラエティの世界で存在感を発揮しつつある。
また中島裕翔は、『HOPE~期待ゼロの新入社員~』(フジテレビ系)でゴールデンタイムでの連ドラ初主演を果たすなど、俳優業が順調だ。さらに薮宏太がサッカー番組に意欲を見せれば、高木雄也は今年滝沢秀明主演のドラマ『鼠、江戸を疾る2』(NHK)にゲスト出演した。岡本圭人は、『いただきハイジャンプ』でもおっとりした様子で愛されキャラなことがうかがえるが、得意の英語を生かした仕事などが今後期待できるだろう。
このようにマイペースの活動が目立つHey! Say! JUMPだが、何かのきっかけでそれが俄然注目されることがある。伊野尾慧の最近の大活躍はまさにそれだ。『めざましテレビ』(フジテレビ系)の木曜レギュラー、『メレンゲの気持ち』(日本テレビ系)のMCに抜擢と、情報番組やバラエティに進出するだけでなく、現在放送中の『そして、誰もいなくなった』(日本テレビ系)などドラマ出演も相次いでいる。
「伊野尾革命」とまで呼ばれる躍進ぶりだが、伊野尾本人はいまもいたって肩の力が抜けた様子で、力んだところは見られない。そこがまた、いかにもマイペースのHey! Say! JUMPらしい。
こうした伊野尾の例に限らず、大人数グループの魅力は、多数のメンバーがそれぞれ活動するなかで、こうした予想を超えたブレイクが起こるところだろう。そしてそれがグループとしての活動にも還元されていく。しばらく目を離すとこちらが置き去りにされてしまうような、そんな刻々と変化する「意外性」のダイナミズム。それが大人数グループを応援する醍醐味であると思う。
■太田省一
1960年生まれ。社会学者。テレビとその周辺(アイドル、お笑いなど)に関することが現在の主な執筆テーマ。著書に『中居正広という生き方』、『社会は笑う・増補版』(以上、青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』、『アイドル進化論』(以上、筑摩書房)。WEBRONZAにて「ネット動画の風景」を連載中。