矢野利裕の『ジャニーズ批評』

SMAP解散発表に寄せてーー矢野利裕が緊急寄稿「すぐれてSMAP的なものであることを願う」

 しかし、気になることもある。ジャニーズ事務所からは解放されていない、ということだ。解散はしたが、独立は果たされなかった。このあたりの業界の力学もまったくわからない。ただ、ひとつだけ思うのは、僕らはもう、アイドルを自分たちの都合で所有している気になるべきではない、ということだ。タレントは事務所の所有物ではない。アイドルはファンの所有物ではない。人格をもったひとりの人間だ。ジャニーズ事務所の歴史は、すでに50年以上経っている。戦後は70年以経っている。SMAPは平成の時代とともに誕生した。時代は変わりつつある。わたしたちは、ともすれば差別と結びつきがちな、前近代的な〈芸能〉のありかたから脱却すべきである。アイドルに人格を認めないようなありかたは、もうやめよう。自由と解放の気分を体現していたSMAPは、まぎれもなく新しいかたちの、等身大のアイドルだった。あとから振り返ったとき、この解散が、自由と解放の気分に満ちたものであることを――すなわち、すぐれてSMAP的であることを願う。それは、日本・戦後・芸能のターニングポイントになりうる。

■矢野利裕(やの・としひろ)
1983年、東京都生まれ。批評家、ライター、DJ、イラスト。東京学芸大学大学院修士課程修了。2014年「自分ならざる者を精一杯に生きる――町田康論」で第57回群像新人文学賞評論部門優秀作受賞。共著に、大谷能生・速水健朗・矢野利裕『ジャニ研!』(原書房)、宇佐美毅・千田洋幸編『村上春樹と一九九〇年代』(おうふう)などがある。

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