razoku『tsuki de aetara』インタビュー
razokuが語る、結成20年史と理想のバンド像「俺たちにとっては歌も楽器も一緒だ」
「“月”って希望の地とか理想の地みたいなイメージをインスパイアされる」(大角)
ーー『tsuki de aetara』というのは、これまでのアルバム作品と比較しても、抒情的なタイトルになってますよね。なぜこのタイトルに?
越野:そもそも俺は、音楽は現実とか現状とか辛かったことを忘れさせてくれるものだと思うから。自分はそういうところに惹かれて音楽が大好きだったから、あえてこのアルバムでは思いっきりそっちに寄りたいなと。現実なんだけど、架空のような、夢のような話にしてしまうっていう。
大角:“月”って希望の地とか理想の地みたいなイメージをインスパイアされるじゃないですか。ザ・クラッシュのジョー・ストラマーの信条にも「月に手を伸ばせ」っていうのがありますけど。「月で会えたら」っていうのは、お互いより高みの場所で会えたらいいねっていうふうに受け取れると思うし。バンドをずっと続けて、僕らなりに成長してきた過程の中で、この「ツキデアエタラ」っていう曲は現時点での自分達を表現している部分があると思うんですよね。
ーー「Looser」から始まって「ツキデアエタラ」、「安心する場所」と、全体を通してひとつの物語のように展開されていく印象がありました。
越野:そうですね。基本的になぞなぞみたいにしたくて。音楽はいろんな答えがあっていいし、いろんな景色を思い浮かべてもらっていいと思うんですよね。それを今回のアルバムはもっと極端にやりたかった。だから<鼻をコツコツたたいて ピアノ>(「ピアノ」)なんて意味わかんないじゃん(笑)。でも、まあいいなと思って。本当は言いたいことがいっぱいあるんだけど、全部隠しちゃってる。でも隠しちゃってるんだけど、本当に言いたいことは言ってる。
ーー越野さんの歌や声質が、razokuっていうバンドの色を決定付けているところもありますよね。
越野:歌って一番ダイレクトに出るんだよね。人間が生きているから発している音だから、やっぱり歌は好きだよね(笑)。でもきっと全部一緒だよね。歌だってひとつの楽器だと思ってるから。そしたらもっと楽しいじゃん。邦楽とか洋楽っていうカテゴリーもいらないしさ。俺たちは、そういう提示をしたいとは思ってるよ。音楽はジャンル云々じゃないっていう。
大角:逆に言えば、楽器に対しても、歌と同じように扱えるかどうかってことなんじゃないかと思う。
越野:いいこと言う。そうだよね。
大角:僕たちは歌ものって言われることもありますけど、そもそも歌ものとインストを分ける必要はないっていうか。歌って人間の声だから、生ものだし大事に扱わなきゃいけない。でも、その大事にする気持ちを楽器の音に対しても思えなきゃいけないんじゃないかなと思うんですよね。
越野:歌があったらバッキングって解釈の演奏が多いと思うけど、俺たちが大事にしてる音楽っていうのは、みんなが活きていて、みんなが主張してるものだから。だから、声もそうだし、ドラムもベースもギターも一斉にわーって喋ってるっていうのが理想形。お互いに喧嘩もしないし、誰も潰さない。でも、それも意識してやってることではないから、まあ、なりゆきだよね(笑)。でも、そういうふうに作ったからこそ、今回のアルバムは聴く人が自分一人の時間に聴いてもらって、好きなようにいろんなところに飛んでってほしいのね。razokuっていうバンドの音楽でたくさん遊んでほしいなって思う。
(取材・文=若田悠希)
■リリース情報
6th album『tsuki de aetara』
発売日:2016年7月20日(水)
価格:¥2,300+tax
<収録曲>
01. Looser
02. ピアノ
03. ツキデアエタラ
04. Black Hole Sun
05. Cold Rain
06. 明日
07. Jeffy
08. Funny Sun
09. Night
10. 安心する場所
■ライブ情報
2016年8月28日(日)ヴィレッジヴァンガード渋谷宇田川店 ※インストアライブ16:00開始
2016年10月2日(日)藤沢GIGS with ズボンズ