razoku『tsuki de aetara』インタビュー

razokuが語る、結成20年史と理想のバンド像「俺たちにとっては歌も楽器も一緒だ」

 

「もっと広がった視野を自分たちも感じたいし、人と共有したい」(越野)

ーー2010年には一度活動を休止しているんですよね。

大角:その時こそ、まさに音楽だけでコミュニケーションをとってきたことに限界がきたっていうのもあったりして。

越野:音楽だけじゃ15年が限界だったね。

大角:でも、そこから再開するに至った時に、メンバーそれぞれの思いを知るためにも話し合いが必要だってことをお互いに意識し始めたんじゃないかなって僕は思っているんですけど。

ーー2012年に活動を復活した時は、何かきっかけがあったんですか?

越野:地元の震災復興イベントをしようというのがあって。ずっと一緒のクルーでイベントをやっていたんだけど、何かできないかっていうことで、今まで一緒にやっていたオーガナイザー達からも声をかけられ、「やりますよ!もちろんですよ!」って言って集まったんだよね。もう情でしか動かないからね(笑)。でも、復活っていうより、一回ライブをやったって感じで、その後はあまりスタジオも入らなかったし。あの頃バンドの中でメールリハっていうのが流行ったんだよ。メールで「イントロは何回か前の感じでいこう」とか(笑)。

ーー(笑)。では、その復興イベントのあとすぐに活動再開したわけではなかったんですね。

大角:そうですね。その1年後、2012年に活動を再開してからも、急にグッとバンドとして動き始めたっていうよりは、徐々にって感じですね。

越野:だいたい誰かのセレモニーとか、「それ断るのは野暮でしょ」みたいな頼み以外はやってなかったですね。こっちから動くっていうよりは、誘ってもらった時にありがたいなと思いながらやってた感じで。2010年まではrazokuしかやってなかったから、すごいシンプルだったのよ。週に4日間ライブして、3日間スタジオ入って。1日に2本ライブやる日もあったからね。でも、活動を休止していた時期にやっと社会に出たっていうか、周りのことも見えるようになって。その時に感じたことが今回のアルバムにはエッセンスとして入っていると思うんだよね。歌詞の部分も自分なりにみんなのこと思いながら書いたから。

 

ーー今回の『tsuki de aetara』が活動を再開してから最初のアルバムになります。

越野:2010年に『WONDERLAND』をリリースして、ちょっと冷静になった時に、あそこでもう少し踏ん張っておけば良かったのかなとか。あの時は無理だったけど、今だったら乗り越えられるよねみたいなことも6年経って感じることができて。ディレクターや仲間たちがずっと俺たちとコンタクト取り続けてくれたし、灯火を守ってくれてる人がいたっていうのがすごくデカくて。絶対切れないものがあるって実感したからこそ、なくなっちゃうのが嫌で。震災の時に、いつどこで何があるかわからないって強く思ったから、今生きているうちにやりたいなって思うことは形にして残しておきたいなって思って、そういうのが全部リンクしてアルバムを出そうとしてこの『tsuki de aetara』を作ったんだよね。

ーー自分たち以外にもバンドのことを見守ってくれてる人がいるって気付けたことは大きかったんじゃないですか?

越野:そうだね。今までは全部自分たちでなんとかしようみたいな感じだったから。誰にも操られたくないし、助けは必要なんだけど、それを拒むみたいな状態になってたから。でも一緒にやろうっていうことで、今回は絶大な信頼を持って、曲順とかも一緒に考えたりして。やっぱり自分たちだと作為的になっちゃったりするから、もっと広がった視野を自分たちも感じたいし、人と共有したい。それはこのアルバム作ったことで叶ったんじゃないかって思っていて。ドア閉まってるかもしれないけど、一応鍵は開いてますよっていうね(笑)。

ーーアルバムが完成して、ご自身ではどう感じてますか?

大角:毎回思うんですけど“今”が出ているとは思いますね。等身大だなっていう。前作の『WONDERLAND』に比べて、制作時間が限られていたっていうのもあるんですが、素の部分が自然に出てる感じがするんですよね。録り方も、前は何回も何回も録って構築していったんですけど、今回は曲によっては一発録りで、ライブと変わらないのもあるんですよ。「Night」がそうなんですけど。

越野:20年やってきて、10年目からは休止したりもしたけど辞めずにバンドやり続けてきて。20年やってきたバンドだから、「クリック聞いて作ってます」っていうよりも、ひとつのバンドとして100パーセントの純度で「これが俺らの音楽だよ」っていう部分を記録しておきたかったんだよね。ベーシックもほとんど1発録りだしね。だから、スタッフとか周りの心優しい人たちがたまに俺らに水をくれたりとか、枯葉があったらもいでくれたりしてくれて。野生なんだけど、わりかし可愛がられてる綺麗な野良猫みたいな感じになってると思うよ(笑)。

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