Yuji Ohno & Lupintic Six『YEAH!! YEAH!!』リリース記念対談

大野雄二×MUROが語る、ジャズからヒップホップまで“融合“の軌跡「音楽は混ざり合っていくもの」

 

「僕とMUROさんが好きな音楽は、根っこの部分では同じ」(大野)

ーー今回のアルバムはオルガンもすごく効いていますね。

大野:アメリカのブラックミュージックにおいて、オルガン文化はかなりコアな部分にあって、僕はそれが大好きなんだ。だけど、キーボードとオルガンはまた別物で、情けないことに自分では弾けないんだ。オルガンはペダルがあって、そこでアクセントを付けるわけだけど、ピアノとはまた別の訓練が必要なんだ。それで、今回宮川君にお願いしたんだ。やっぱりオルガンが入ると世界がガラリと変わったね。

MURO:オルガンの音は本当に重要ですね。レア・グルーヴの音源でもオルガンのサウンドはかなりポイントが高くて、僕自身がそういうレコードにハマったのも、やっぱりオルガンからでした。

大野:あと、シンセで作った音だけど、意表を突いてチェンバロの音も入れてるよ。昔、劇伴の世界ですごくチェンバロの音が流行った頃があったんだ。日本の作家の85%以上は、マカロニ・ウエスタンのコピー的な劇伴を書いていて、そこでチェンバロが使われていた。アメリカではもう西部劇が作られなくなってきた時代に、クリント・イーストウッドはイタリアに渡ってセルジオ・レオーネ監督と西部劇を作って、それがマカロニ・ウエスタンとして世界的にヒットするわけだけど、その音楽はエンニオ・モリコーネが作っていたんだ。彼は自分の色をすっかり消して映画に合わせた音楽が作れるひとなんだけど、イタリアではむしろ自分の色を濃厚に出すひとが多くて、画とはあまり関係なく音楽重視で作っていた。ハリウッドではシーンが変わったら絶対に音楽も変えるけど、イタリアの映画はそうじゃないものがいっぱいあって、僕はそういう感じの方が好きで影響を受けていたんだ。その時の曲の感じを、少し意識しているね。

MURO:『犬神家の一族』の音楽の使い方はすごく斬新に感じていましたけれど、そのあたりに影響があるんですね。心になにか残る怖さがあるというか、子どもながらにたまらないな、と思って聴いていました。レア・グルーヴという言葉も、サントラから来ているって聞きますし、そう考えると音楽と映画の関わりも本当に深いですよね。この間、ブラジルの方に大野さんのレコードを渡したんですけれど、世界中のいろんな文化が相互に影響しあっているのを実感して、すごいなと感じました。

ーーヒップホップの世界では、ジャズやファンクをサンプリングする文化がずっとありましたが、最近ではロバート・グラスパーなどのジャズミュージシャンが逆にヒップホップから影響を受けて、そのビート感やサウンドを生で再現したりして新しい潮流が生まれていますね。

大野:音楽は結局、そういう風に混ざり合っていくものなんだよね。新しいひとにとって当たり前になっていることが、昔からやっているひとにとっては斬新で、昔からやっているひとにとって当たり前のことが、新しいひとにとっては斬新だから、後から出てきた音楽に以前からある音楽が影響を受けることはある。たとえばアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーがライブでやっていた音源を、イギリスで聴いた人間が「こうしたら面白そうだな」ってアレンジして、それを聴いたアメリカ人がさらに影響を受けるというのはあるわけ。ただ、いまのポップな音楽のサンプルになっているものは、大体50年代の半ばぐらいから70年代の始めぐらいに集中していて、それが形を変えて次々と出てきているんだよね。いまもなお、当時の音楽のエッセンスが生きているのは、それだけその時代のプレイヤーが凄かったということの証明だと思う。たぶん、当時の社会事情とかもあるんだろうけど、ブラックミュージックのパワーが爆発している感じがある。その後にマーヴィン・ゲイやスティーヴィー・ワンダーが出てくるけど、そこにもジャズの影響が色濃くあるよね。

ーースティーヴィー・ワンダーは、スヌープ・ドッグが昨年リリースした楽曲「California Roll」でフィーチャリングに迎えられていて、いまなお現役なのがすごいです。ソウルやヒップホップも、ルーツには共通するところがあるんでしょうね。

大野:たぶんね、僕とMUROさんが好きな音楽は、根っこの部分では同じなんだと思うよ。

MURO:そうですね。いやあ、うれしい、泣きそうです(笑)。今度、機会がありましたら、ぜひリミックスをさせてください。

大野:こちらこそ、ぜひお願いします!

(取材・文=松田広宜/写真=竹内洋平)

 

■リリース情報
Yuji Ohno & Lupintic Six『YEAH!! YEAH!!』
発売:6月8日(水)
定価:¥3,000+税
Blu-spec CD2

<収録曲>
1.LUPIN AU GO GO 2016
2.LOVE SQUALL 2016
3.YEAH!! YEAH!!
4.CHASING THE HUSTLER 2016
5.あこがれ feat. 佐々木詩織
6.ZENIGATA MARCH 2016
7.TORNADO 2016
8.DEAR BELLADONNA 2016
9.SPIRAL FLIGHT 2016
10.愛のつづき feat. TIGER
11.THEME FROM LUPIN Ⅲ 2016

■ハイレゾ配信
『YEAH!! YEAH!!/Yuji Ohno & Lupintic Six』ハイレゾ音源
6月8日~配信開始

『ルパン三世コンサート~LUPIN! LUPIN!! LUPIN!!! 2015~』のライブハイレゾ音源
『ルパン三世 PART Ⅳ オリジナル・サウンドトラック~MORE ITALIANO』
配信中

ハイレゾ配信サイト
mora
e-onkyo music
OTOTOY
VICTOR STUDIO HD-Music.
music.jp

■ライブ情報
Yuji Ohno & Lupintic Six
2016年7月9日(土)福岡 黒崎ひびしんホール
2016年8月2日(火)大阪 Billboard Live OSAKA(NEW)
2016年8月3日(水)東京 Billboard Live TOKYO(NEW)
2016年8月21日(日)京都・舞鶴市総合文化会館
2016年8月24日(水)北海道 帯広市民文化ホール
2016年8月25日(木)北海道 札幌市民ホール
2016年8月27日(土)北海道 函館市民会館
2016年9月19日(月祝)滋賀 栗東芸術文化会館さきら
2016年10月2日(日)兵庫 伊丹アイフォニックホール
2016年10月7日(金)山口 宇部市渡辺翁記念会館
2016年10月8日(土)広島 はつかいち文化ホール
2016年10月23日(日)兵庫 やしろ国際学習塾
2016年12月26日(月)大阪 新歌舞伎座(with Fujikochan’s)

大野雄二 オフィシャルWEBサイト

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