AKB48は“グループ永続”をどう成し遂げるか? 向井地センター起用などから運営の動きを読む

 続けて、宮崎と大家の抜擢について、香月氏は「10年続いたグループならではの試み」だと分析した。

「宮崎も大家も、挫折を味わいながら、それぞれに生きる道を見つけ、グループの一員として歴史を築いてきたメンバーでした。大所帯のアイドルグループというのは、常に次世代へバトンを渡すことが大テーマになりがちですが、二人のようにグループに長年所属しながら紆余曲折を経験し、センターやフロントになるベテランメンバーとは違うキャリアを模索することができるのはAKBという組織が持つ余裕でもありますし、そんな苦労人たちを再びシングル選抜に押し出すことができるのも、巨大化しながら10年継続したこのグループが持つ懐の深さといえるでしょう」

 また、すでに総選挙への不出馬を表明している渡辺美優紀については、2015年に松井玲奈(現在は卒業)と小嶋陽菜がフロントメンバーであるにもかかわらず参加しなかったことを踏まえ、このように読み解いた。

「2015年の総選挙は、松井と小嶋の不出馬や、メンバーが『総選挙』のシステム自体に躊躇いを示す言動を見せるなど、このイベントに対する考え方の多様さがうかがえた、ひとつの転機といえる回でした。前者は『AKB48グループにとって、総選挙が絶対唯一の価値観でない』ということを証明し、後者はメンバー自身が『投票=ファンの購買行動』であることに気を配り、開票イベントのスピーチで『素敵な順位』という言葉を口々に発していたことがそれぞれ印象に残っています。そんな前回の総選挙を経ての今回、渡辺の早々の不出馬宣言はごく自然な選択のひとつであるように映ります。それはたとえば、必ずしもグループからの卒業如何という話ではなく、メンバーそれぞれがその時点での自身の活動スタンスを選びとるということだと思います。総選挙が唯一の価値観でないことが当たり前になった以上、それに乗るか乗らないか、利用するかどうかの距離感はまちまちですし、昨年の松村香織(SKE48)のようにアウトサイダー的な立ち回りから上位にランクインするという新たな可能性も示されました。総選挙という巨大イベントに対する考え方を、自身の主体的な振る舞いで示すことが標準になってきたため、今年は例年以上に動きの読みづらい回になりそうです」

 AKB48は世代交代を上手く成功させ、グループ永続に向けて新たなペースを獲得できるのだろうか。ひとまずは総選挙の速報結果を待ちたい。

(文=中村拓海)

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