西廣智一が『新春!おもてなし会』と『ALL LIVE NIPPON VOL.4』を分析

欅坂46が見せた“個性”の片鱗 観客を前にした2つのパフォーマンスを読み解く

 『新春!おもてなし会』から約2週間後の1月30日、今度は東京・国立代々木競技場第一体育館で開催されたイベント『ニッポン放送 LIVE EXPO TOKYO 2016 ALL LIVE NIPPON VOL.4』に出演し、初めて観客を前にライブを披露した。9000人もの観客を前にトップバッターとしてステージに登場したのは、今泉佑唯と小林由依の2人。アコースティックギターを抱えてセンターステージに現れた2人は、「皆さん、初めまして。欅坂46の今泉佑唯です」「小林由依です」「2人で“ゆいちゃんず”です」と自己紹介し、「今日は欅坂46初めてのライブパフォーマンスです。本当はここでデビュー曲を披露させていただきたかったのですが、残念ながら間に合いませんでした。なので今日は大好きな大原櫻子さんの『ちっぽけな愛のうた』を披露させていただきます」と述べてから、先の『新春!おもてなし会』でも歌った「ちっぽけな愛のうた」を、弾き語りで披露した。

『LIVE EXPO TOKYO 2016 ALL LIVE NIPPON VOL.4』で「ちっぽけな愛のうた」を披露する小林由依、今泉佑唯

 当日は山下健二郎(三代目 J Soul Brothers)やT.M.Revolution、back number、KANA-BOON、高橋優といった人気アーティストが多数出演。客席には緑のサイリウムを手にした欅坂46ファンの姿も見受けられたが、全体的に見ればアウェイに近い状況だ。そんな中、今泉&小林は声をうわずらせながらも繊細な歌声とハーモニーを会場に響かせる。そして2人の好演に対して、静かに、じっくりと聴き入っていた観客の姿も印象的だった。考えてみれば2週間前の『新春!おもてなし会』は約800人程度、今回はその10数倍となる9000人と、デビュー前の新人、しかも10代半ばの女の子が踏むステージとしてはちょっと現実離れしたものだ。そんな状況を2人は(多少のミスはあったものの)見事乗り越えたのだから、素直に拍手を贈りたい。

 2人がステージを降りると、会場にはエレクトロ調のインストゥルメンタルナンバーが流れ始める。どうやらこれが欅坂46の「Overture」らしい。EDMテイストを取り入れた現代的なダンスサウンドは、初めて耳にしたファンから早くも受け入れられていたようだ。緑のサイリウムを手にした欅坂46ファンの声援が鳴り響く中、ついにメインステージにはセーラー服姿のメンバー21名が登場。いきなり平手友梨奈や鈴本美愉、石森虹花を中心にした激しいダンスパフォーマンスを披露して観客の目を奪うと、続けて乃木坂46の「制服のマネキン」を21名全員で歌い踊った。『2015 FNS歌謡祭 THE LIVE』では存在感の強い先輩たちに目を奪われてしまう結果に終わったが、この日は1人ひとりが個性をアピールするべく、激しいダンスで観客を魅了する。また曲中では一部メンバーがステージ中央から客席に延びた通路やセンターステージでパフォーマンス。本家にも引けを取らないキレのあるダンスは、デビュー前の新人とは思えないほど堂々としたものだった。そして「制服のマネキン」終了後も再び全員一丸となったダンスパフォーマンスを提示。欅坂46は知らなくても乃木坂46なら知っているという観客も巻き込み、21名が全力で挑んだ初ライブは大成功のうちに終了した。

 パフォーマンス終了後、イベントMCの山下健二郎から感想を尋ねられた平手は、「大きなステージに私たちが立たせていただくなんて、緊張と不安でいっぱいでしたが、すごく皆さんが温かかったので楽しくパフォーマンスさせていただきました」とホッとした表情でコメント。その後は「欅坂46 10秒間自己紹介リレー」と題して、メンバー1人ひとりが10秒ずつ、計210秒にわたりリレー形式で自己PRを実施。必死に喋ろうとして早口になる者、緊張で声が小さくなる者、なぜか自分が飼っている犬の名前を紹介する者などさまざまだったが、中でも平手友梨奈や原田葵といった中学生メンバーが年齢を口にすると会場がざわめく場面が印象に残った。

 持ち曲が1曲のみ、しかも自分たちのオリジナル曲ではないというハンデはありながらも、FNS歌謡祭のリベンジを存分に果たしたと言える欅坂46。現時点ではCDデビュー時期は未定だが、早くも次のステージが4月9日に国立代々木競技場第一体育館で開催される『GirlsAward 2016 SPRING/SUMMER』に決定した。この日は先輩の乃木坂46が出演することも発表されており、早くも2グループの初共演が実現することになる。まだ確固たる個性は確立できていないものの、ダンスパフォーマンス力や芸術面に長けたメンバーが多数在籍する欅坂46がこの先どう成長していくのか。もしかしたら乃木坂46と同じステージに立つ次のイベントで、そのヒントが明確になるのかもしれない。

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

■GirlsAward 2016 SPRING/SUMMER
日時:2016年4月9日(土) OPEN:13:30(予定) / 開演:15:00(予定)
会場:国立代々木競技場 第一体育館
主催:ガールズアワード実行委員会

■欅坂46 オフィシャルサイト http://www.keyakizaka46.com/
■欅坂46 オフィシャルTwitter https://twitter.com/keyakizaka46

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