2015.11.21 12:00

女性Vo.エモーショナル・ロックの新機軸　The Winking Owlの音楽的個性と可能性を読む

　女性エモ／ラウドロックバンド、あるいは女性ボーカルを擁するエモ／ラウドロックバンドの数が10年前と比べて増えているように感じるのは、気のせいだろうか。今年結成15周年を迎えたHEAD PHONES PRESIDENTを筆頭に、アゲ嬢風ファッションで衝撃を与えたAldious、アイドル性の高いルックスと卓越した演奏テクニックを兼ね備えたCyntiaやGacharic Spin、先ごろ1年の活動休止を経てバンド名を改名したTHE MUSMUS（元UPLIFT SPICE）……このほかにもMary's BloodやRaglaiaのようなメタル／ラウド寄りからANARCHY STONE、winnie、WHERE’S ANDY、SpecialThanksといったハードでパンキッシュ、それでいてメロディアスといった女性バンド／女性ボーカルバンドが独自の個性を確立させながら、シーンを賑わし続けている。

　そんな中、女性ボーカルを擁するバンドがまた1組、シーンを大きく賑わすことになる。これが今回紹介するThe Winking Owl（ザ・ウィンキング・オウル）だ。

　ルーマニアと日本をルーツに持つ女性ボーカリストLuiza、「Warped Tour」出演などアメリアでの音楽経験を持つギタリストYomaを中心に2010年、群馬県高崎市で結成されたThe Winking Owlは、US／UKのエモやポストハードコアを踏襲したサウンドを軸に活動開始。J-POPにも通ずる普遍性を持つメロディ、卓越した演奏とプログラミングを導入したアレンジで時に激情的、時に浮遊感を漂わせるサウンドで着実に個性を固めていく。特に2015年に入ってからは怒涛の展開が続き、ONE OK ROCKの全国ツアー「ONE OK ROCK 2015 "35xxxv" JAPAN TOUR」サポートアクトオーディションを見事勝ち抜き、大阪城ホール公演に出演。9月に新メンバーとして弱冠18歳のドラマーKenTが正式加入した彼らは、11月21日に『OZZFEST JAPAN 2015』にオープニングアクトとして出演し、同月25日にFadeのruiがプロデュースを手掛けたシングル『Open Up My Heart』でメジャーデビューを果たす。

　シングル『Open Up My Heart』で聴けるThe Winking Owlの楽曲では、先にも書いたようにJ-POP／J-ROCK的な大衆性の強いメロディを堪能することができる。そういう意味では彼らの立ち位置は現在のラウドロックシーンの中にあるというよりもーー同じ女性ボーカルバンドという点でーー例えばアメリカにおけるPARAMOREに近いものがある。もっと言えば、そのルーツにあるのはPARAMOREの所属レーベル先輩であるFALL OUT BOYや、ゼロ年代のエモ／ゴスロックにおける1つの雛形を作ったMY CHEMICAL ROMANCEとも言えるだろう。

The Winking Owl「Open Up My Heart」

　シングル表題曲「Open Up My Heart」の適度なハードさと疾走感、それでいてハードになりすぎない加減のよい熱量、スマートでバランスの取れたバンドアレンジ、思わず口ずさんでしまうメロディやフレーズの数々。「Here For You」ではダンサブルな要素と独特の浮遊感が交差し、「Fallen Angel」ではエモを通り越してハードロック的な色合いさえ感じさせる。表現の仕方や感性の違いはあるものの、The Winking Owlの取った手法というのは海外の先人たちの成功例にとても似ている気がするのだ。

　もちろん、これだけを真似すれば必ず成功できるわけではない。しかしこの完成度の高い楽曲群とLuizaの歌声とヴィジュアルを前にすると、なぜか「成功しないわけがない」と思ってしまう自分がいる。それだけの不思議な説得力を持ち備えているのも、このバンドの魅力なのかもしれない。

（文＝西廣智一）